日本弁理士会の活動

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先生のための(知財の)ひきだし!芸術編

大人でも思わず引き込まれるおもしろ知財エピソード集です。 小学生から高校生までを対象に幅広くご利用ください。

テーマ:歌うのってお金がかかるの?

Keywords 作曲、作詞、合唱、演奏
法域 著作権法
教科 芸術(音楽)

 皆さんがカラオケ屋さんで好きな曲を歌うときには、本来は、著作権者の許可が必要です。しかし、皆さんは直接著作権者に許可を得たり使用料を支払ったりしていませんね。実は、カラオケ屋さんは、事前に著作権管理団体を通じて使用料を著作権者に支払っており、皆さんが歌う曲の演奏の許可を得ているのです。

 では、学校の音楽の授業で歌を歌った場合には、皆さんや学校の先生は、著作権者に使用料を支払い、許可を得る必要があるのでしょうか?
答えはノーです。この場合、使用料を支払う必要も著作権者から許可を得る必要もありません。著作権法では、非営利かつ無料の場合には、著作物を公に演奏できることとなっています。したがって、皆さんが何気なく好きな歌を口ずさんだとしても、問題はありません。音楽の授業などでCDなどを鑑賞することや、楽器を演奏したりすることも、同様に許容されています。

 一方、文化祭などでバンドを組んでコンサートを行う場合などには注意が必要です。営利目的であるとき、入場料を取るとき、または演奏者へ報酬を支払うときは、使用料を支払い、演奏の許可を得る必要があります。
 さらに、たとえ学校の音楽の授業での演奏であっても、アレンジしたりして演奏する場合には、著作者の編曲権に抵触するおそれがありますので注意が必要です。

(履歴情報)2015/03/11 掲載

テーマ:特許出願中って?

Keywords 特許出願中 特許権 
法域 特許法
教科 芸術

 工作では欠かせないはさみやステープラー。その中でも、刃先の形状に工夫があるはさみや芯が不要のステープラーなど、専門店へ行けばさまざまなアイデアが詰まった商品を見つけることができます。  そんな商品のパッケージをよくよく見ていて、「特許出願中」や「PAT・P」と書かれているのを見たことがありませんか?「PAT・P」は「Patent pending」の略で、やはり特許出願中という意味です。これらは、特許出願はしているけど、まだ特許権は取得できていないことを示す言葉ですが、この表示にはいったいどういう意図があるのでしょうか。

 実は特許権を取得するには、特許出願をした後に、特許権を付与する価値のある発明であるか、特許庁の審査官に審査をしてもらう必要があるのですが、審査を通過するまでに5年以上かかることも決して珍しいことではないのです。せっかく新しいアイデア製品を開発して、特許出願したとしても、特許権が取れるまでに第三者に真似をされてしまっては市場での優位性を確保することができません。

 商品のパッケージに「特許出願中」や「PAT・P」という文字を書いたからと言って法的な効果が発生するわけではありませんが、第三者に対して、この製品に使われている技術について特許出願していることを示すことで、安易に真似することをけん制する意味があるのです。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:学校公演

Keywords 脚本、著作権、適用除外、著作者人格権、同一性保持権、上演権、著作権の存続期間、著作者、著作権者
法域 著作権法
教科 芸術、国語

 文化祭や発表会で演劇を上演することがあるかと思います。その際、オリジナルの脚本を自分たちで作成するとなると負担が大きいため、市販されている既成の脚本を購入し、その脚本について上演する場合が多いのではないでしょうか。

 ここで留意したいのは、書籍代を支払って脚本を購入した場合であっても、その脚本に基づいて上演を行う場合は、著作権者※1に上演許諾を得て、別途脚本使用料を支払う必要があるということです。無断で上演した場合は、著作権侵害となります(著作権法第22条)。
 ただし、(1)営利を目的とせず、(2)観客からチケット代を徴収せず、(3)出演者等に報酬を支払っていない場合には、例外として、著作権者に許諾を得る必要も、使用料を支払う必要もありません(著作権法第38条第1項)。学校公演を行う場合は、この例外適用を受けるための(1)~(3)の要件を満たす場合が多いのではないでしょうか。

 なお、新たなキャラクターを登場させたり、ハッピーエンドのストーリーをバッドエンドに変えたり等、著作者※1の意に反して、脚本の内容を変更して上演を行う場合は、(1)~(3)の要件を満たす場合であっても、著作者人格権を侵害する可能性があるので、その点についても留意が必要です(著作権法第20条)。

 著作権の存続期間は、著作者の死後70年※2となっています(著作権法第51条第2項)。学校公演を行う場合は、シェイクスピア作品など、著作権の存続期間が既に満了している作品を上演することも検討してみてはいかがでしょうか?

※1 著作者と著作権者とは似ている言葉ですが、これらは著作権法上明確に区別されています。上の説明でいうところの著作者は劇作家であり、著作権者と同じとは限りません。

※2 2018年12月30日より、著作権の保護期間は「個人の場合は死後70年・法人の場合は公表後70年」に延長されましたが、2017年12月31日までに死後50年(または公表後50年)が経過して著作権が消滅したものについては、再び権利が復活することはなく、誰でも利用できます。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:演劇と特許

Keywords 演劇
法域 特許法 商標法
教科 芸術(美術、音楽、体育)

 演劇にまつわる知的財産権といえば、著作権などが最初に思いつきますが、世の中には、演劇に関する特許もあります。
ご紹介するのは、「舞台演出支援方法」に関する特許(特許第4773944号)です。この舞台演出支援方法は、暗闇の中で行われる演劇の舞台公演等において主に使用されるものです。
 この舞台演出支援方法では、舞台上の所定の位置に、形状、素材、原料あるいは加工処理に特有の互いに異なった触感が得られる複数の触感認識手段(例えば、スポンジ材、人工芝シート材、様々な織り方の布等)を配置します。真っ暗な舞台上における役者等は、触感認識手段に触れることによって得られる触感によって、暗闇の中でも光源を用いることなく、舞台上の自分の位置や向きを認識することができます。
 このように、演劇や美術、音楽などの芸術活動をするときに思いついたアイデアについても、特許を取ることができます。

(履歴情報)2020/09/14 掲載

テーマ:授業で作った作品は誰のもの?

Keywords 美術、作品、著作者人格権、著作権、ピカソ、キーロン・ウィリア
法域 著作権法
教科 図工・美術・技術

 皆さんは美術の授業で、絵画やオブジェなどの作品(美術作品)を製作する機会がありますね。一生懸命取り組んだ結果、自分でも誇らしくなるような素晴らしい作品が完成することもあると思います。皆さんが作品を作製した場合、その作品の出来や評価にかかわらず、その作品には著作者人格権及び著作権が自動的に発生します。
 著作者人格権には、未公表の著作物を公衆に提供又は提示する権利である公表権、著作物の公表に際し、著作者の実名もしくは変名を著作者名として表示、又は著作者名を表示しないこととする権利である氏名表示権、著作者の意に反して、著作物及びその題号の変更や切除その他の改変をすることを禁止する権利である同一性保持権などがあります。
 著作権には、著作物を複製する権利である複製権、著作物を公に上映する権利である上映権、美術の著作物などを原作品により公に展示する権利である展示権などがあります。
 したがって、皆さんが作品を製作した場合、その作品を改変したり、複製したり、公表したりするためには、著作者である皆さんの許可が必要になります。
 かの有名なパブロ・ピカソは「科学と慈愛」という作品を16歳で完成させています。クロード・モネは、「ルエルの眺め」と言いう作品を18歳で完成させています。そして近年では、2013年に当時10歳のキーロン・ウィリアムソンが描いた絵が総額約2億6千万円で売れたそうです。
 皆さんも美術の時間に真剣に取り組めば、キーロン・ウィリアムソンのように作品が高値で取引されることになるかもしれませんね。
 また、他人の作品にも同様に著作者人格権及び著作権が発生している点にも注意しましょう。他人の作品も尊重する姿勢が大切です。

(履歴情報)2020/09/14 掲載

テーマ:比較的新しい楽器サクソフォン

Keywords サックス、楽器
法域 特許法
教科 芸術(音楽)

 サクソフォン(略称サックス)は、1846 年に特許が取得された、比較的新しい楽器であることをご存知ですか?
 サクソフォンの発明者は、アドルフ・サックスという、ベルギー人の楽器製作者です。サックス氏が発明した楽器だから「サクソフォン」と名付けられたようです。
 サックス氏は、優れた楽器製作者であっただけでなく、優れた吹奏楽器の演奏者でもありました。このため、サックス氏は、技術者と、演奏者としての観点から既存の楽器を改良したり、新しい楽器を発明したりしていたので、サクソフォンを含む吹奏楽器の特許を複数取得しています。複数の特許を取得して、サックス氏の楽器製作は、順風満帆だったかと言えば、そうではありませんでした。特許を巡って、同業者との間でいくつもの訴訟が争われ、なんと、破産も経験したそうです。
 身近な楽器の成り立ちについて調べてみると、今までとは違った楽器の見方ができるかもしれません。

(履歴情報)2023/03/23 掲載