日本弁理士会の活動

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先生のための(知財の)ひきだし歴史編

大人でも思わず引き込まれるおもしろ知財エピソード集です。 小学生から高校生までを対象に幅広くご利用ください。

テーマ:徳川慶喜と知的財産権制度の深~い関係

Keywords 徳川慶喜、パリ万国博覧会、内国民待遇、各国特許等の独立、優先権主張
法域 特許法、商標法、意匠法、工業所有権の国際的保護に関するパリ条約
教科 地理歴史(日本史、世界史)

徳川慶喜(1837年‐1913年)は、1867年、フランスのパリで行われたパリ万国博覧会に、弟の徳川昭武を派遣しました。このパリ万国博覧会は、日本が初めて参加した国際博覧会で、江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展しました。パリ万国博覧会では、当時の先端技術による製品が出品されますので、互いに勝手に真似されることを避けるために、特許権、商標権、意匠権、といった工業所有権の保護のための国際会議が招集され、国際的な協定を締結する必要がある、という決議がされ、その後1883年3月20日に、「工業所有権の国際的保護に関するパリ条約」が生まれました。日本は1899年7月15日に、このパリ条約に加盟しています。工業所有権の保護のためのパリ条約は、その後、何度も改正されましたが、「内国民待遇」、「各国特許等の独立」、「優先権主張」、の三原則は、現在も工業所有権の国際的保護の基幹となっています。「内国民待遇」の原則は、工業所有権の保護に関し、自国民に求める要件と同じ要件を満たす限り外国の国民にも自国民と同じ法的な効果を与えることを約束するもので、この原則によって、例えば、特許権を与えるかどうかの要件について自国民と外国人を差別することはできません。

「各国特許等の独立」の原則は、特許されるかどうかは、他の国で特許されたかどうかに影響を受けない、という原則です。

「優先権主張」の原則は、いずれかの同盟国で特許等の申請をした日から1年(商標や意匠では6カ月)の間、他の国で申請する際に優先権の主張ができ、その結果、最初の申請日に特許申請等をしたのと同様の扱いを受けることを約束するもので、「申請時に公に知られていては特許されない」という要件のある特許や意匠では、現在でもほとんどがこの原則を利用しています。

(履歴情報)2015/03/11 掲載

テーマ:「鎌倉彫」も「神戸ビーフ」も®(登録商標)です

Keywords 鎌倉彫、地域団体商標、識別力、地域おこし
法域 商標法
教科 芸術、地理歴史

1.普通の商標と地域団体商標
 「鎌倉彫」は、鎌倉時代から伝わる日本の伝統的な工芸品です。木に彫刻を施し、漆を何度も塗り重ねて作られるもので、独特の風合いがあります。  さて、この「鎌倉彫」のブランド名、だれでも使うことができるでしょうか?いいえ、ダメです。「鎌倉彫」のブランド名は、「伝統鎌倉彫事業協同組合」が所有する登録商標(登録第5276777号)ですので、使うことができるのはこの組合の組合員のみです。
 「鎌倉彫」は、普通の商標としてではなく、「地域団体商標」という例外的な商標として登録されています。ここでいう「例外」の意味を知ることは、「識別力(しきべつりょく)」という商標制度の最も基本的な用語を知ることに繋がりますので、説明します。

2.「地名+商品名」
 「鎌倉」は神奈川県の有名な観光地です。「鎌倉クッキー」、「鎌倉まんじゅう」といったような、「地名(鎌倉)+商品名」のブランド名は、その地を代表する商品であるかのように思えておみやげのブランド名として優れていますので、観光地のおみやげを扱う企業は、このブランド名を商標登録して自社が独占したいと考えると思います。
 しかし、このようなブランド名は、「識別力なし」を理由に、商標登録できません(商標法第3条第1項)。
 「識別力なし」というのは、商品を買う人が、以前と同じ商品を買おうとするときに、他の商品と見分けるための目印にできない、という意味です。例えば、以前買った「鎌倉クッキー」と書いたクッキーがおいしかったので、再度買おうとおみやげ売り場に来たところ、A社のクッキーも、B社のクッキーも皆、「鎌倉クッキー」と書いてある、というのでは、この「鎌倉クッキー」の語は、A社のクッキーをみつけるために役に立ちません。
 このように、「地名+商品名」は原則として、識別力のない商標です。

3.「鎌倉彫」は、「地名+商品名」では?
 さて、話は「鎌倉彫」に戻ります。「鎌倉彫」の「鎌倉」は地名ですし、「彫」は「彫物」の省略形で商品名ですので、「鎌倉彫」というブランド名は、「地名+商品名」に該当し、識別力なし、ということで、原則として商標登録できません。
 しかし、ここで、「地域団体商標」という「例外」が登場です。「鎌倉彫」のように、一つの組合が、長い期間このブランド名を使い続けた結果、多くの人が「鎌倉彫」というのは鎌倉で作られたあの製品だ、と判る場合には、「地名+商品名」であっても、「地域団体商標」として、例外的に登録することができるのです。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:江戸時代の創作活動

Keywords 江戸時代、新規法度
法域 特許法、意匠法、著作権法
教科 地理歴史(日本史)

 江戸時代には、新しい事物の出現を避ける傾向があったといわれており、実際に新規の発明・工夫を禁止していた時期がありました。

 享保6年(1721年)に公布された「新規法度」のお触れは、「新製品を作ることは一切まかりならぬ」というものであり、その後も同様の趣旨の法度を度々発しています。これは物資の安定供給や物価抑制を目的に新規の仕出しなどを禁止したものです。
 鎖国に代表される閉鎖的な政策の一環なのかもしれませんが、そのおかげで江戸時代は長く安定した時代となったのかもしれません。

 一方、江戸時代にも一部の人々の間では創作活動は盛んに行われていたと考えられています。例えば、庶民の祭礼や見世物はこのお触れの対象外とされていましたので、このような分野では大いに創作活動が行われていたものと考えられます。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:信長の発明

Keywords 織田信長、弁当、発明
法域 特許法、商標法
教科 地理歴史(日本史)

 戦国武将の織田信長は、天下統一を前に本能寺にて夢を絶たれましたが、生涯、その独創性で様々な改革を成し遂げてきました。

 良く知られているものとしては、長篠の合戦で1000~3000丁と言われる火縄銃を3段構えにして撃ち続けた戦法や、第二次木津川の戦いで用いた鉄甲船があります。これらの戦法やモノは、当時もし特許制度があれば発明として特許になっていたかもしれませんね。

 また、弁当も発明したかもしれないのです。
 戦国時代末期から江戸時代初期を生きた江村専斎による「老人雑話」の一節に、一つの容器にご飯とおかずを詰める今のような弁当のスタイルを発明したのは信長であると書かれているそうです。これも特許権になったかもしれませんね。
 さらに、「弁当」という名称が当時一般的ではなかったとしたら、商標権を取得できたかもしれません。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:国王の特許

Keywords 特許状、タイ国王
法域 特許法
教科 地理歴史

 特許は、発明に対して与えられますが、昔は違いました。

 国王が、国民に対し、特別な任務や権限あるいは地位を下賜するために証書の形で発行する法的手段の一つでした。
 つまり、国王は特許を与える側の人だったのです。

 しかし、特許が発明をした人に与えられるようになると、国王が特許を取得することも起きます。

 タイのプミポン・アドゥンヤデート国王は、人工降雨技術を開発したことで、フランスなど欧州10カ国で特許を取得し、2009年8月にタイ研究評議会の代表から特許証書を進呈されました。
 国王は代表らに対し、「国は今、どこへ、どうやって向かうかわからない状況だ」、「国民1人1人が知識を持ち、やる気を持てば、国家を発展させることができる」などと言葉をかけました。

 ちなみに、国王の発明した人工降雨技術は、
・塩化ナトリウムの粉末を上空に散布して、水蒸気を吸収させて、雲をつくる。 (必要条件は湿度=水蒸気があること)
・ 塩化カリウムを散布して、発達させた水蒸気を吸収する。そのとき発生した熱エネルギー が上昇気流をつくり、雲を発達させる。
・ヨウ化銀を散布して、雨の素となる氷の結晶をつくる。これで、雨雲ができる。
・ ドライアイスを、できた雲の雲底に散布して、地表と雲の間の気温を下げて雨を促す。
というものです。
 タイは、人工降雨の先進国なのかもしれません。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:温泉で有名な県といえば?

Keywords 温泉
法域 商標法
教科 地理

日本は、世界有数の火山国であり、世界の活火山の7%を占めています。活火山とは、過去1万年以内に噴火した火山や、現在も活発な活動のある火山のことをいいます。この活火山は、日本国内に108もあります。有名な活火山としては、群馬・長野県境にある浅間山や、鹿児島県にある桜島が挙げられます。火山の噴火は、ときに甚大な被害をもたらします。

 しかし、このように、たくさんの火山を抱えるがゆえの楽しみもあります。日本には、地下のマグマを熱源とする火山性温泉がたくさんあり、国内の温泉地の数は、約3000ヶ所もあります。
 ちなみに、47都道府県のなかで、温泉地の数が一番多いのは「北海道」、泉源の数が一番多いのは「大分県」となっています。

 この大分県は、2013年に、「おんせん県おおいた」なる商標登録(第5628132号)まで取得しています。

 なお、上記登録商標は、大分県商工観光労働部観光局観光誘致促進室に使用届出書を提出することで、無償で名刺や商品のパッケージ等に使用することができるように開放されています。

 特許庁に登録されている商標を調べてみることで、今まで知らなかった、地域の特色を色濃く反映した、非常に特徴的な意外な発見があるかもしれませんね。

(履歴情報)2021/02/19 掲載