日本弁理士会の活動
ACTIVITY
- HOME >
- 日本弁理士会の活動 >
- 教員用教材/知的財産特別授業 >
- パテントコンテスト・ デザインパテントコンテストについて >
- 令和元年度デザインパテントコンテスト選考委員長特別賞の受賞者へのインタビュー
令和元年度デザインパテント
コンテスト
選考委員長特別賞の
受賞者インタビュー
女子美術大学
2019年度のデザインパテントコンテスト(以下、デザインパテコン)で選考委員長特別賞は、「Bloom bottle」で応募した、女子美術大学芸術学部デザイン工芸学科プロダクトデザイン専攻の寺岡のぞみさん(2年)が受賞した。デザインパテコンについては、同学科の田村俊明教授が4月に全学年の学生たちに紹介しているそうだ。寺岡さんは田村教授の「出願支援が得られれば、国に認められたデザイナーになること」という話を聞いて、「かっこいいなと思って」応募を決めたそうだ。これまで多くの受賞作品のある同校では、応募は学生に任せているという。寺岡さんは応募について次のように話す。
「自分のつくった作品を何らかのコンテストに出したいという思いを持っていましたが、どこに出したらいいのかわからなくて。一般的にデザインのコンテストはプレゼンテーションのパネルを用意するとか、大変そうでした。デザインパテントコンテストは試作品の写真でも応募できるので、ハードルが低いと感じました」
寺岡さんが応募した作品は、実は1年生後期に革を素材とした「プロダクトデザイン基礎講習」で制作したものだ。その年のデザインパテコンは締め切られた後で、半年温めての応募となった。それまで馴染みのなかった革に「高価で、大人っぽい感じ」があり、何をつくるのがふさわしいのか考えた。そこでヒントを探しに、同級生たちと百貨店の売り場を見て歩いたそうだ。寺岡さんの目についたのは、ワイン売り場に並んだきれいなラベルの輸入ワインだった。ただの緩衝材で包むだけの包装を見て、例えば訪問先へのプレゼントにするならば、もっと素敵な包装材があればいいのにと感じたことから、デザインに取り組んだ。「最初は円筒形でつくろうと思って、紙で数えきれないくらい試作しましたが行き詰まって。先生に相談したり、図書館でいろいろな資料を見た中で、ちょうちんとか、七夕飾りの切り紙細工からイメージが浮かびました」
紙も革も元は平面だから、革も折ったり切り込みを入れたりして立体をつくることができる。ただの包装材ではなく、折りたたんでボトルコースターとして使えるようにすることにもこだわった。そのために、ボトルを包んで立った状態で上部を底面より狭くするために、上半分と下半分の切り込む幅、本数を決めるのに試行錯誤があった。紙での試作を経て革で作品づくりに取りかかってからは、革の厚みで折り曲げづらい、あるいは薄くて強度が足りないなどの問題があり、初めて扱う素材ならではの難しさがあった。作品タイトルのBloomをイメージしていたというより、結果的にボトルコースターにしたときに花が咲いたようなデザインになったそうだ。ボトルを包んでいる状態から形状が変化する特性から「包んだ状態だけでなく、テーブルの上でボトルコースターとして美しく見えるように、機能と見た目を両立するのが大変だった」ともいう。
この作品は授業の成果評価で優秀作品(1課題で学年40人のうち上位3名を選出)に選ばれ、学内でプレゼンテーションしたそうだ。寺岡さん自身、納得のいく作品ができたと感じていたが、この評価を得たことも応募を後押ししたようだ。とはいえ大学に入ってから初めてのデザイン系コンテストへの応募だったので、受賞は「ただ、びっくり」だったという。意匠出願を経て、校内だけでなく、外の人にも作品を紹介できる実感がわいたようだ。「ボトルを包んである状態から、上部の留め金を外して縮めると花びらのような形状になるのを想像できる人は少ないと思います。そこを見ていただければうれしいです。この受賞で、デザインを勉強してきてよかったと思いました」と喜びを語る。将来について「生きていく上で絶対に必要ではないけれど、それがあると特別な時間が過ごせるような、暮らしを豊かにするものをつくりたい」と夢を話してくれた。