日本弁理士会の活動

ACTIVITY

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令和元年度デザインパテント
コンテスト
日本弁理士会会長賞の
受賞者インタビュー

京都女子大学

2019年度のデザインパテントコンテスト(以下、デザインパテコン)の日本弁理士会会長賞を受賞した、京都女子大学家政学部生活造形学科の浅野優里さん(2回生)に応募と受賞についてお話をうかがった。数年前からデザインパテコンに応募してきた同校で、浅野さんは初めての受賞者となった。受賞作品「ユニコップ」は、ユニバーサルデザインの把手付きコップである。コップを選んだのは「身近なもののほうが問題点に気付きやすいと思った」からだった。「指の力が弱くなったお年寄りや、障害のある方、誰でも使いやすいものを目指しました」というユニコップは、把手を斜めにつけて、ここに手を入れて手の平全体でコップを支えられるようになっている。

デザインパテコンは、指導教官である山岡俊樹教授の「デザイン人間工学」の授業で7月初旬に行われた、遠藤信明弁理士による意匠のレクチャーで知ったそうだ。山岡教授はこれまでも応募を学生に勧めており、関心を持った学生が応募してきた。浅野さんは、応募の動機について次のように語ってくれた。「モノをつくるのが好きで、学んできたことを集約して一つの形にしたいという思いがあったので、応募はいい機会だと思いました」

当初は同級生10人ほどが応募を目指したが、最終的に応募したのは3人だったという。9月末の締め切りまでには夏休みがあり、実家に帰った学生の中には応募準備が難しいケースもあったようだ。浅野さんも夏休み中は応募作品を作り上げるのに「かかりきりになっていました」と振り返る。8月下旬に形のアウトラインはできたが、そこからはコップの大きさ、把手の角度や手を入れるスペースの大きさなどを決めていくのに苦労したという。問題点を見つけやすいように、紙で実物大の模型をつくって、自分で試しながら調整していった。浅野さんは「動作をタスク分析して考えるという山岡先生の授業で学んだ人間工学が、コップで飲み物を飲むときにどういう問題点があるのかを分析するのに役立ちました」とも言う。

ユニコップは誰でも持ちやすいだけでなく、飲み口の反対側の縁にくぼみをつけて、コップの縁に鼻が当たらない工夫がされている。「ベッドに横になっている状態でも、飲み物が無理なく飲めるように」という配慮だ。普通のコップだと、上体を起こさないと、飲み物が飲めない。介護あるいは介助する人にとっても、横になった姿勢で飲ませてあげられると負担が少ない。「把手の角度などが決まったら、もっといいものにしたいと思った」のは、ユニバーサルデザインに高い関心を持って学んでいる浅野さんならではの視点だろう。鼻の高さとコップを傾ける角度、飲み物を入れる量などを考え、くぼませ具合を決めるのにも試行錯誤があった。

応募書類を提出する時点では、自身では納得のいく作品になっていたそうだ。しかし「山岡先生には応募者も多いし、受賞は難しいと聞いていたので、一次選考の結果をインターネットで見たときは、うわっ、入っていると思いました。受賞もインターネットで知って驚き、結果が郵送されてきたときに、またびっくりしました」と受賞の喜びを語る。目指す機能を追求したデザインが評価されたことは「とてもうれしいし、ちょっと自信にもなりました。実用化できるといいなと思っています」と浅野さん。意匠出願に際しては、要件を満たす六面図を3DCADで作成するのに手間取ったそうだが、苦になったというより、経験として今後に活かしたいという。色彩検定の2級、ユニバーサルカラー(UC)級に合格している浅野さんは「色彩やユニバーサルデザインについて学んだことを活かせる仕事につきたい」と将来に向けた抱負を語った。