日本弁理士会の活動
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令和2年度パテントコンテスト
日本弁理士会会長賞
受賞者インタビュー
上智大学
2020年度のパテントコンテスト(以下、 パテコン)の日本弁理士会会長賞は、上智大学理工学部3年(応募時)の伊藤茉優さんが「三層構造食品容器」で受賞した。
川北喜十郎弁理士が講師を務める知的財産権の授業でパテコンを知って応募を決めたそうだ。授業では創作レポートの提出があり、伊藤さんは「創造力を働かせて取り組む授業は受けたことがなく、とても新鮮に感じました。授業で得た知識をもとに自分で何かを生み出すことに興味がわきました」と振り返る。
アイデアの切り口になる課題を見つけて改善案を発明すると授業で学んだことから、身近なものの中から課題を探して、食品容器に注目した。リモート授業が続いて先生や友人との会話からヒントを得る機会がなかったので「食品容器について不便に思っていることについて家族や友人と電話などで話したり」したそうだ。伊藤さん自身もどんぶり型の容器の食品で、二つの食材を一体化する際に手を汚した経験があった。そうしたことから複数の食材を一緒に収容でき、手を汚さずに一体化できる容器として最初は二層構造のどんぶり型のものを考えたが、特許検索で先行事例があることが判明し、三層構造の容器の開発を目指した。
伊藤さんの発明は、異なる形状の複数の食材を個別に収容でき、容器に備えられたカッターを引き上げて各層を隔てる仕切りを破るワンアクションで、全部の食材を融合できるものだ。例えば果物とヨーグルト、グラノーラの場合、水分を含み重さのある果物を一番下に入れ、次にヨーグルト、一番上に軽量のグラノーラを入れる。重量のあるものを下に入れることで、容器を安定させることもできる。
指導した川北先生は「乾燥した食品とフルーツなどの水分の有る食品を予め一緒に容器に入れると、乾燥した食品は水分を吸収してしまうが、この発明容器を使えば食べる時まで乾燥食品の状態を維持することができるとともに、両食品を合体することを体験して楽しめる点で素晴らしいと思いました」と語る。
最も苦労したのは、瞬時に複数の食材を一体化させる仕組みの実現だったそうだ。そのポイントとなったのは、食べる時に容器をひっくり返すアイデアだった。上下を逆にすることで、蓋の部分が食材を落としこむ器になり、下にあった重量のある食材が上から無理なく落ちて、他の食材と一体化する。ひっくり返すというアイデアは、日清食品の創業者・安藤百福氏の著書から学んだ「逆転の発想」から生まれたという。「ひっくり返すというアイデアがなければ、この発明はできませんでした」と伊藤さんは言う。 さまざまなアイデアをシミュレーションして試行錯誤を繰り返し、試作品をつくって食材の一体化ができるかどうか確認した。完成した容器は、最大4種類の食材を個別に収納できる構造になっている。
7月末までの授業で発明を磨き、その後1カ月ほどの間は家にこもって、さらに発明と向き合いディテールを詰めていった。一人で考えていて行き詰まると、家族や友人の意見を聞くこともあったという。「応募するからには受賞したいと思っていましたが、受賞できるほどの創造力はないと感じてもいた」という伊藤さん。 弁理士会会長賞の受賞は「思ってもいなかったことで、とてもうれしかったです」と満面の笑みを浮かべ、「この発明が実用化されればうれしい」とも。機能創造理工学科で電子電気工学を学ぶ伊藤さんは、将来は電気に関わる分野で、地域発展につながる事業への参画や技術開発に携わりたいという抱負を抱いている。