日本弁理士会の活動

ACTIVITY

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先生のための(知財の)保健体育編

大人でも思わず引き込まれるおもしろ知財エピソード集です。 小学生から高校生までを対象に幅広くご利用ください。

テーマ:スポーツのルール

Keywords スポーツ、ルール、ルールブック
法域 著作権法
教科 保健体育

 陸上、水泳、卓球、アイススケート、スキー、…。一度は観たり、プレーしたことのあるスポーツに共通していることは、得点やタイムによって勝ち負けが決まる「ルール」があることです。新しいスポーツは、誰もが理解できるようにルールを定めた「ルールブック」などで広められます。

 ルールブックには、創った人の個性が現れ、創作性が認められることから言語の「著作物」として著作権によって保護されます(著作権法第2条第1項第1号、第6条第1号)。このため、ルールブックを創った人は著作権者になり(同法第17条)、ルールブックをコピーして勝手に使う行為を止めさせる権利を持ちます(同法第21条)。

 では、このようにルールブックに著作権があると、せっかく考えられたスポーツをプレーするために、ルールブックの著作権者から許可をもらう必要があるでしょうか?皆さんが観戦するスポーツの選手達は、著作権者からプレーの許可をもらっているのでしょうか?

【答えは「ノー」です。】

 それでは、ルールブックの著作権はどうなるでしょうか?
 「著作権」は、文芸、学術、美術、音楽のいずれかに当たる著作物が権利の対象ですが、スポーツのルールそのものには権利が認められず、ルールを文字や絵で解説した「ルールブック」になって初めて権利が認められるのです。ルールブックの著作権者は、誰かがルールブックをコピーして勝手に販売することを止められますが、誰かがそのスポーツをプレーすることを止めさせることはできないのです。

 皆さんも子どもの頃に自分達だけのマイルールを作ってスポーツを楽しんだことと思いますが、このマイルールを考えたお転婆のあの子やガキ大将から、遊ぶ時に許可をもらったりはしなかったですよね。
 スポーツは、誰もが自由に楽しめるからいいのですね。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:魔球は特許になるの?

Keywords 球技、魔球、コツ、技能、技術、発明
法域 特許法
教科 保健体育

 球技の部活動をしている人の中には、練習を積み重ねて、自分が投げたり、蹴ったり、打ったりしたボールが思わぬ軌道を描く、「魔球」を習得したという人が居るかもしれません。

 では、そのような「魔球」は、特許権を取得することができるものなのでしょうか?

 【答えは「ノー」です。】

 特許法上の保護対象である発明は、「技術的思想」と定義されています。世の中で「技術」といわれるものには、知識として伝達することのできる客観的なものと、「魔球」のように個人の熟練によって到達できる「コツ(技能)」とがあります。しかし、特許法上の「技術」とは、「コツ(技能)」ではなく、知識として他人に伝達できる客観性のあるものでなければならないとされています。
 一方で、「魔球」を習得するための練習器具などであれば、知識として他人に伝達できる客観性のある「技術」と言えますので、特許法上の保護対象である発明に該当し、特許権を取得できる可能性があります。

 これは想像に過ぎませんが、もしも「魔球」の特許権を取得することができるのであれば、その「魔球」は自分しか使うことができなくなるわけですから、一流の運動選手になるのも夢ではなくなります。
 でも「魔球」が自由に使えない球技は、観戦する側にしてみればつまらないかもしれません。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:万国旗を売ったら罰せられる!?

Keywords 万国旗、外国の国旗、商業上の使用禁止   
法域 不正競争防止法、商標法
教科 芸術、保健体育

 万国旗とは、多数の国の国旗をロープで繋いだもので、華やかな雰囲気を演出します。運動会等様々なイベントを盛り上げるアイテムとして、万国旗を目にする機会は多いと思います。

 ところで、「国旗の使用」には、国の尊厳を守る等の理由により制限があることを知っていますか。
 例えば、商標法では、(第4条第1項第1号、2号、3号および5号に基づき、)外国国旗などを商標として登録できないこととしています。
 また、不正競争防止法(第16条第1項)では、外国国旗などをその国等の許可なく、商標として使用することを禁止しています。

 では、商品として万国旗を製作し、それを売った人たちはどうなるのでしょう。罪に問われて、罰せられてしまうのでしょうか。

【答えは「ノー」です。】

 万国旗を見て、それが商品等の商標を表していると感じる人はおそらくいないと思います。
 ですからこのような場合には、「国旗」の商標的使用ではないものと認められて、不正競争防止法によって、使用が制限される場合はありません。 安心して、万国旗を売ることができますし、また、万国旗を買って、飾ることもできます。

但し、国旗を損壊等すると罰せられる場合(刑法第92条)があります。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:人を治療する方法は特許にならない!?

Keywords 医療行為、手術、治療、診断   
法域 特許法
教科 保健体育、理科

医療の技術は日々進歩しており、改良された医薬品や医療機器、治療方法等により多くの命が救われています。このような進歩の影には、そこで成された創意工夫を保護するための医療に関連する多くの特許発明があると考えられますが、実は人を治療する方法は特許になりません。なぜでしょうか?

人を手術、治療、又は診断する方法、いわゆる「医療行為」は特許の対象になりません(特許庁審査基準)。例えば、画期的ながんの治療方法を発明したとしても、その方法の特許を取ることはできないのです。このように医療行為が特許の対象にならないのは主に人道的な理由からです。例えば、緊急の治療が必要な患者が病院に運び込まれたとします。医者はその患者に効果的な治療方法があったとしても、その治療方法が特許になっている場合には特許権者にその治療方法の使用について許可を求めなければなりません。許可無くその治療方法を使用すれば、特許権の侵害になってしまうからです。しかしその特許権者から許可を得るのに時間がかかってしまうと、患者の生命や身体を危険に陥れる可能性があります。このように、医療行為では緊急の対応が求められる場合が多く、人道的な観点から特許の対象にならないのです。

なお、現在の特許法には、医療行為が特許の対象にならないことについて明確に規定されていません。そのため特許庁は、運用上、医療行為の発明が特許の要件の1つである「産業上利用することができる発明」(特許法第29条柱書)に該当しないとして、医療行為に関する特許出願を拒絶しています(特許庁審査基準)。

(履歴情報)2020/09/14 掲載

テーマ:2020東京オリンピック.パラリンピック

Keywords キャラクター
法域 意匠法、商標法
教科 体育

2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、残念ながら新型コロナウィルス感染症の蔓延のため1年間延期されてしまいましたね。 色々な競技をみるのを楽しみにしていた人も多いと思いますが、最近のオリンピック・パラリンピックで必ず登場するマスコットキャラクターの公式グッズを楽しみにしている人もいるのではないでしょうか。 藍色と白色の市松模様のかっこいいミライトワが東京オリンピックの、ピンクと白色の市松模様がかわいいソメイティが東京パラリンピックの公式マスコットキャラクターになっています。

この2人があしらわれた公式グッズには、定番のぬいぐるみ、ピンバッジ、キーホルダー等があります。なんと約150万円!の記念小判なんかもあります。 それほど公式グッズは人気があるんでしょうね。

さて、この2人のイラストは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、すべての商品やサービスを対象として商標登録しています(商標登録第6076124号、同6076125号)。
2人のイラストは商標登録だけでなく、立体化されたぬいぐるみおもちゃとして意匠登録もされているんですよ。ミライトワが意匠登録第1612594号、ソメイティが意匠登録第1612595号としてそれぞれ登録されています。この意匠登録も東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が行っています。
偽物のミライトワ、ソメイティが出回らないように気をつけているのでしょうね。

ミライトワ・ソメイティの2人以外だと、意匠登録第1629791号でオリンピックのメダルが、意匠登録第1636756号でパラリンピックのメダルがそれぞれ意匠登録されていますし、聖火のトーチが意匠登録1638429号、メダル用のケースが意匠登録第1641874号として意匠登録されています。
偽物の金銀銅メダルなんかあったら頑張った選手たちに失礼ですものね。

世界中の人たちがオリンピック・パラリンピックの競技を心から楽しむことができ、公式グッズも安心して手に入れられるように、公式マスコットキャラクターやメダルの偽物がでないようにちゃんと意匠登録や商標登録で守っているんですね。

(履歴情報)2021/02/19 掲載