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特許特別会計の維持について


平成22年10月27日
日本弁理士会

政府において、特別会計・一般会計の見直しが行われるに際し、日本弁理士会は、我が国の国際競争力強化の観点から、知的財産戦略の推進に齟齬が生じないよう、次のとおり意見を表明する。


日本弁理士会は、特許特別会計を廃止することに反対する。
特許特別会計は、我が国の知的財産立国の推進、産業の国際競争力強化を図る施策の展開を支える基盤として、維持されなければならない。


【理由】

1.我が国の知的財産制度を支える財政基盤としての妥当性

特許特別会計は、特許等の産業財産権に係る出願料など、ユーザーである出願人、権利者からの出費を唯一の財源としており、権利の設定・維持に係る事務並びにそれを支える審査官、事務官の人件費等に対して支出されており、収支相償の下で運営されている。この原則は終始一貫して堅持されており、過去に一度たりとも一般会計からの繰り入れは行われていない。
 なおかつ、特許特別会計は、知的財産立国の実現に向けた諸施策の展開に必要な活動として、ユーザーニーズに適合した迅速・的確な特許審査の実現、我が国の知的財産を脅かす模倣品への対策、地域中小企業の発明奨励等を通じた地域活性化対策の拡充等に取り組む資金としても活用されている。
 すなわち、特許特別会計は、その財源を一般会計に依拠することのない健全な特別会計であり、一般会計からの繰入金で賄われている他の特別会計と同列視することはできないのみならず、積極的な役割を担っている事実を認識すべきである。

2.知的財産戦略推進の基盤としての役割

政府の政策として去る5月21日に決定された「知的財産推進計画2010」では、「戦略3 知的財産の産業横断的な強化策」として、「新たな出願支援策の創設(短期)」、「特許関係料金減免制度の拡充(短期)」、「手続書類作成支援ツールの提供(短期)」、「外国出願支援の拡充」、「ワンストップ相談窓口の整備(短期・中期)」、「ベンチャー・中小企業支援体制の整備(中期)」、「地域中小企業のブランド構築支援(短期)」等々の様々な支援策が提言されている。
 これらの支援策の展開は、主として特許特別会計を財源として実施されるものである。仮に、一般会計支出によってこれらの施策を実施するときには、施策実施の迅速性、予算の多寡による施策の幅の自由度等に支障を来たすおそれも生じかねない。特許特別会計を財源として提言された国家政策の実現を覆すようなことがあってはならない。

3.将来の国家体制を視野に入れた基盤としての役割

知的財産の保護・活用分野においては、欧州共同体構想が一定の成果をあげている現状に鑑みると、アジア地域においても共同体的構想の構築に向けた検討がなされることは至極当然のことである。
 すなわち、知的財産分野において、欧州では、既に共同体特許や共同体商標といった制度を導入しており、域内経済における流通の促進等に資している。我が国が主導権を握るべき来るアジア経済共同体構想においても、早期かつ有効に効果を発揮しうる施策の一つとして、知的財産分野におけるアジア特許庁構想を挙げることができる。
 このアジア特許庁構想を支える財源は、近隣諸国の財源との一体化等を視野に入れると、一般会計で対応することは妥当性を欠き、現状の特別会計によって賄われることが、適切である。

以上
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