弁理士の報酬制度について(朝日新聞記事に関する所感)
日本弁理士会
副会長 八木 秀人
弁理士の業務は、知的財産の創造、保護、活用などの多岐面にわたる上、依頼内容も千差万別となるので、分かりにくい、との指摘は理解できる。また「特許をとるのに、いくらかかるか」にしても、発明の内容や事務量の多寡により弁理士の報酬額に巾があり、到底一律定料金というわけにはいかない。論者の言う、「事前の認識と理解」にもとづいて弁理士との信頼関係の下で「合意」を得る必要があることは、至極当然のことであろう。
このような観点から、日本弁理士会は、弁理士報酬(費用)の透明性について、特に以下のように努力している。
第1に、日本弁理士会のホームページでは、顧客の目安となるよう弁理士報酬に関するアンケート結果を掲載しており、また、最近これをトップページや共通メニューに入れることにより、さらに利用しやすくした。ただし、前述した事情により、公表されている弁理士報酬は、旧弁理士法でいう標準額表ではなく、弁理士の手数料の目安が容易にわかる手数料アンケート結果(弁理士を対象に行った手数料のアンケート結果)である。
第2に、「弁理士の報酬は、合理的な算定根拠に基づいて定めなければならない。弁理士の報酬等について必要な説明をしなければならない。」という会則を設けるとともに、弁理士事務所における手数料表の備え付け、見積書の作成、報酬の説明と合意などの、報酬についての具体的な説明責任規定を設けるという、弁理士報酬の透明性につながる施策を今まさに進めている。
第3に、本年度行う全国規模の知財啓発キャラバン活動の展開(中小企業キャラバン隊、商標キャラバン隊の派遣)の中で、弁理士報酬についても説明する、などを通じて、弁理士報酬の透明性をさらに高めていく。
このように、われわれ弁理士は、国民が活用しやすい弁理士制度を目指し、これを実現させる一層の努力を今後も続けるつもりである。