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記者懇談会・議事録(2004年4月)

平成16年度第1回記者懇談会議事録

日 時:平成16年4月7日(水) 午後2時から3時まで
場 所:弁理士会館3階第4会議室
出席者:
(記者14名)
  (日本弁理士会5名)
 会長 木下實三   副会長 吉田芳春   副会長 井上 一
 広報センター センター長 矢野裕也
 委  員   記者懇談会部会 鴨田哲彰(記)

テーマ: 「平成16年度日本弁理士会の課題と基本方針」
「不正(コピー)商品に対する水際対策について」

議 事:以下の通り

(1)矢野裕也センター長より開会の挨拶

(2)「平成16年度日本弁理士会の課題と基本方針」(木下實三会長より)

  配付資料:「平成16年度事業計画」「就任のご挨拶」
  (1) 基本方針について、内部の充実と外部への機動的対応の2つの観点から、基本方針の概略が説明され、その後、それぞれのポイントについて説明された。
  (2) 内部環境の変化として、弁理士数の急増があり、一方、外部環境としては、国家戦略としての知財保護の流れがあり、司法との関係では、弁理士に知的財産への一貫的な関与が求められている。その中で、内部の充実による弁理士制度の基盤作りを進めるとともに、弁理士の外部へのプレゼンスの向上を図る。
  (3) 内部の充実
i 最高度の知財人材の育成
知的専門人材育成システムを提案するとともに、能力担保研修および一般研修の充実を図る。
ii 業務環境の充実
業務環境の充実を図るため、実態調査を行い、ユーザのニーズへの対応を検討する。
iii 会組織の充実
会員数の増大等の問題に対処するため、役員制度の見直しや、各地区部会の支部化を図り、各地域に密着した支援および情報収集を図る方向に検討する。
iv 対内コミュニケーションの充実
また、上記対応が図られるまでも、ITを使った意見徴収など、可能な範囲で対内コミュニケーションの充実を図る。
  (4) 外部へのプレゼンス
i 知財推進計画への機動的対応
知財推進計画への対応として、知財制度改革推進統括本部を設け、対応する。また、知財支援センター等の組織による地方自治体、大学その他の教育機関に対する支援事業を継続する。また、個人や中小企業に対する特許出願費用援助制度および相談会等も継続する。これらについて、現在までの取り組みとともに、どのような成果を上げているのかが説明された。
ii 新規分野へのダイナミックな対応知的創造サイクルの全体への関与が求められることにより、新たな業務が発生している。これらに対応するよう、新規業務への支援を行う。
iii 弁理士の発言力の向上・対外コミュニケーションの充実
会長、正副会長会、広報センターを通じて、外部へのプレゼンスを強化する。
iv 地域的対応
各地区部会や東京を含めて、全国の各地域に支部を設けて、知財の全国的な展開を図るとともに、現時点でも、九州部会等に発明の相談員を常駐させるなどの施策をとる。
v 国際対応
国際センターおよび産業競争力推進委員会を中心に進める。特に、産業競争力推進委員会は、水際対策に関して、重点的に検討し、模倣品対策、海賊版対策に対する対応を強化する。

(3)不正(コピー)商品に対する水際対策について(吉田芳春副会長より)

  配付資料:「不正(コピー)商品に対する水際対策について」「模倣品・海賊版対策に関する意見」
  (1) 昨年度の中国における中日弁理士の交流会への訪問にさいし、日本弁理士会事務局の要職にある人物が、「百年の孤独(焼酎)」の模倣品を知らずに購入した事例を示しながら、現在の模倣品・海賊版について中国や韓国からの輸入が問題となっている点が示された。
  (2) 現在、従来のデザインやブランドの模倣だけでなく、中国・韓国での技術レベルの向上に伴い、特許権侵害などの技術的侵害が増大している点が説明された。
  (3) 中国・上海にあるJETROでは、仕事内容の5%に過ぎなかった知財関連が、現時点では、90%となっており、上海JETROを中心に上海IPG(知財研究グループ)が結成され、102社の日系企業が参加し、知財対策の会合を持ち、日本企業の被害状況の調査などをから始めている点が説明された。
 問題点の1つに、現場サイドに知財専門家がいないことによる、本社サイドとのコミュニケーション不足の問題があり、この点は、専門担当者の常駐や頻繁な派遣で対応しつつある。日本弁理士会でも、現地特許事務所や現地日系企業などへのレクチャーを提供している。
 また、営業秘密の漏洩の問題なども生じており、現地スタッフを雇った後、元在職していた中国企業から営業秘密の漏洩で日本企業が訴えられるケースもあり、注意を要する。
 その他、日系企業の知財保護に、上海領事館が関与している点、上海JETROにおいて日系企業の権利集の編纂などが進められている点などが説明された。
  (4) 日本では、関税定率法の改正がなされ、輸入者・輸出者の情報が開示されるようになった。日本の税関における輸入差し止めという結論で、中国や韓国での輸出差し止めができる制度の構築などが期待される点が説明された。また、近年、増加している特許権侵害の模倣品対策として、日本弁理士会が積極的に支援する意思がある旨が説明された。

(4)質疑応答(吉田芳春副会長による対応)

  (1) 「模倣品対策支援センター(仮称)」が設立されたらどのような規模になるのか?
    現時点では不明である。このようなものができたらよいと言う段階である。
  (2) 特許権対策が困難な理由は?
    権利範囲の判断が難しい。裁判所でも困難な判断を税関でやることはより難しいといえる。事前情報の充実を図ることが必要であるが、特許庁の判定制度があり、請求から30日程度で権利範囲の属否の結論が出るとされるが、その準備も含めると相当準備期間が必要であり、迅速な対応ができない。日本弁理士会では技術的対応の支援をできないか検討したい。
  (3) 特許権対策が問題となっている理由は?
    中国・韓国の技術の進歩である。
  (4) 特許権侵害品の分かり易い例はあるのか?
    エンジンの特許権侵害が問題となった事例がある。
  (5) 欧米ではどのような対策がとられているのか?
    米国では、ITCで特許権侵害品の水際対策をやっており、商標権については税関で取り扱っている。すでにシステムができあがっており、日本より充実している。
  (6) 富士通がサムスンを特許権侵害で提訴したが、この事案で、日本での差し止めにより韓国からの輸出を止められないか?
    日本の税関で特許権侵害を判断するのは困難であり、かつ、差し止めという結論が出ても、韓国での権利範囲も異なるし、サムスンであれば国家政策的な判断もあるので、韓国の税関で差し止めるのは難しい。対応するシステムがあればいいとは思う。
以 上
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