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記者懇談会・議事録(2004年7月)

平成16年度 第3回 記者懇談会

日 時:平成16年7月16日(金)午後1時〜3時まで
場 所:日本弁理士会3階 第4会議室
テーマ:知的財産関連改正法の説明会
出席者:記者13名

内 容:

(1)開会の開催及び懇談会の進行説明(大石治仁副センター長)

(2)挨拶(矢野裕也広報センター執行補佐役)

  日本弁理士会のよる活動の一端として「知的財産戦略セミナー2004」「よろず相談会」「はっぴょん通信」「第159回国会に提出された知的財産関係法律案」の紹介をした。

(3)テーマの説明(神原貞昭知的財産制度改革推進統括本部副委員長)

  配布資料:「第159回国会に提出された知的財産関係法律案」
  (1) 200余ある法律案において、大きな流れとしては、「司法四法制度改革関連」「知的財産戦略関連」の2つがある。国会審議の結果としては、10件のうち8件が成立した。
  (2) 関税定率法等の一部改正について、税関長は、特許権等の知的財産権を侵害するおそれのある認定手続を執るとき、認定手続を執る旨の通知と併せて、輸入者の氏名及び住所等を権利者に、また、権利者の氏名及び住所等を輸入者に通知する。

これらの通知を受けたものは、当該通知を受けた事項を、みだりに他人に知らせ、または不当な目的に使用してはならない(悪用防止)
  (3) 知的財産に関する訴訟に時間がかかりすぎるので、東京高裁が控訴事件を一手に取り扱うことにする。すなわち「知財高裁」の創設であり、全国8ヶ所ある高裁のうち、東京高裁の支部として発足する。これは裁判所法によらない特別な支部である。
  (4) 裁判所法の一部改正に関連して、民事訴訟法の一部改正のポイントとして、「知的財産に関する事件に関して調査を行う裁判所調査官に事務に関する権限の拡大を図った。
  (5) 特許法の一部改正のポイントとして、特許権者等の権利行使の制限の明文化が図れ、例えば侵害訴訟において、特許無効審判により向こうにされるべき特許については、相手方に対し権利を行使することができない。
  (6) 民事訴訟費用に関する法律の一部を改正する法律案において、訴訟代理人の報酬について敗訴者負担制度を導入する。負担する額は訴訟の目的の価格に応じて算出する(代理人の数によらない)。
  (7) 信託業法案の概要について、知的財産権の信託に関し、受託可能財産の範囲の拡大により、信託会社による知的財産権の信託の引き受けが可能とされる。「弁理士法」と「信託業法」との関連について問題になると思われる(金融庁の関係)。
  (8) 破産法案については、破産契約における破産者の債務履行に関する規定(53条1項、2項)及び賃貸借契約等に関する規定(56条1項、2項)が改正点である。なお、通常実施権者が存在する状況で権利者が破産した場合、通常実施権が登録されていないと、当該通常実施権者が保護されないという問題があり、この点に関しては検討の余地が残されている。
  (9) 著作権法については、国外で著作権者の許諾に基づいて製造販売されたレコード、CD等についても、国内で販売する行為は侵害とする点(商業用レコードの環流防止)、書籍や雑誌等を無断で貸与することができないものとする点(書籍、雑誌の貸与権付与)、著作権侵害について懲役刑及び罰金刑を引き上げた点(罰則の強化)が改正点である。

(4)質疑応答

主な質疑応答の内容は以下の通りである。

  (Q1) 知財高裁が創設されることで、どのようなメリットがあるのか?
    (A1) 大きく分けて二つあると考えられる。第一に、判例や、法の解釈・適用について画一的なものが得られるという点が挙げられる。判例等が画一的なものとなると、判決をもらう当事者としては、その内容をある程度予見できる事となり、その上での行動が可能となる。

第二に、我国が知的財産政策に注力している旨を対外的にアピールできるという点が挙げられる。知財高裁の創設により、当該効果は大きくなると考えられる。
  (Q2) 知的財産権が信託の引き受けの対象となることにより懸念される事項としては、どのようなものが考えられるのか?
    (A2) 特許権のように登録された権利については、大きな問題が生じる怖れは無いと考えられるが、特許を受ける権利のような登録されていない権利については問題が生じる怖れがある。すなわち、特許を受ける権利を信託会社に預けた後、信託会社が当該特許を受ける権利に基づき特許出願をする場合が考えられる。

この場合、弁理士以外の者により出願が代理される怖れがあり、本状況下では、このようなケースが増大する可能性が高い。したがって、登録された権利のみを信託の対象とするのが理想的であり、今後対策が検討されると考えられる。
  (Q3) 秘密保持命令制度等の導入により、今後の訴訟では営業秘密が証拠として提出される可能性は高くなるのか?
    (A3) 営業秘密を審理する過程での不透明感を払拭するのが、今回の改正のポイントであり、営業秘密が提出されるようになるか否かについては別の問題といえる。したがって、この点についての見通しはつかない。
以 上
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