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記者懇談会・議事録(2004年12月)

平成16年度第5回記者懇談会

日 時:2004年12月1日(金)午後2時から3時
場 所:日本弁理士会3階 第1会議室
テーマ:知的財産の信託について

出席者:記者19名
日本弁理士会
知的財産支援センター
  副会長 吉田芳春 丸島儀一
  知財流通・流動化検討委員会 委員 鈴木健治
  広報センター執行補佐役 矢野裕也
  広報センター 副センター長 大石治仁
  広報センター 委員 福田伸一  市東篤

内容

(1)懇談会の開催および進行(大石副広報センター長)

(2)挨拶(吉田芳春弁理士会副会長)

(3) 信託業法改正および知的財産信託の説明(丸島儀一弁理士会副会長) 信託業法改正の概要が紹介され、受託可能財産の範囲が知的財産権に拡大されたこと、信託業の担い手が金融機関以外(例えばグループ企業内での知的財産権の一元管理部門など)に拡大されたことが説明された。
とくにグループ企業内での知的財産権の管理に信託業法が拡大されたことは、従来のようにグループ企業内の知的財産権の移転(譲渡)が課税対象となるという制約をなくし、企業の知的財産の管理上有用であるとの説明があった。
ただし、信託業法の運用の細則については更に議論が必要であり、その際には以下のような点が論点になろうとの説明があった。
(1) 知的財産権には特許権、商標権、著作権などから営業秘密・ノウハウまで含まれるが、たとえばノウハウ等は情報そのものであり実体は不明確である。知的財産権のうち、受託可能財産とそれ以外のものとの区別が必要ではないか。
(2) 知的財産権のうち特許は、(1)排他権であるが実施可能であるか否かは不明であり、(2)一旦登録された後に無効となる可能性がある。
このような従来の受託可能財産と異なる性質の知的財産を受託対象とするには、いかなる運用が必要であるか整理する必要がある。
また知的財産権のうち著作権は、特許権に比べて上記(1)および(2)の問題が小さい。知的財産権ごとに異なる運用が必要ではないか。
(3) 現在、企業間では多数の知的財産権をパッケージとしてライセンスしているが、パッケージ全体としてのライセンス料を決めるのみであり、個々の知的財産権のライセンス料を決めることができない場合が多い。
今後は信託業者が様々な企業から知的財産権を受託してパッケージ・ライセンスなどを進めることになるが、その場合に個々の企業のライセンス料をいかに算出するか問題となるのではないか。
(4) 受託可能な知的財産権には、登録前の発明なども当然含まれると考えられるが、登録前の発明は明細書の記載により価値が変動しうる。信託者の利益を守るためには、受託者の知的財産権の管理に弁理士などの知的財産権の専門家の関与が必要ではないか。
(5) 信託業者は、受託した知的財産権に基づく差し止め請求が可能であるが、自ら知的財産権を実施していないので、損害賠償請求が難しい。信託業者にいかなる損害賠償請求を認めるか、議論が必要ではないか。
(6) 知的財産権の信託には対抗要件のため登録が必要となるが、例えばグループ企業内の知的財産権の一元管理に信託を利用する場合は登録費用が膨大となる。登録費用の見直しの検討も必要ではないか。

(4)質疑応答

  (1) 今回の信託業法改正と著作権等管理事業法との関係
  (2) 今回の信託業法改正とTLOとの関係
  (3) 今回の信託業法改正による金融機関以外の担い手の拡大予想
  (4) 外国における知的財産の信託について
  (5) グループ企業内の知的財産権の信託は知的財産部門の独立化に繋がるか否か

などの質疑応答があった。

以 上
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