記者懇談会・議事録(2007年10月)
平成19年度 第3回記者会見議事録
日 時: | 平成19年10月2日(火) 13:00〜14:00 |
場 所: | 弁理士会館 3階 第3第4会議室 |
テーマ: | 「IT分野における最新の著作権問題(裁判例)」 「鳥取県弁理士定着促進事業について」 |
出席者: | 著作権・コンテンツ委員会委員長 中野 圭二 広報副センター長 岩田 敏、 秦 正則 同センター委員 木内 敬二 |
議事
1. | 開会の挨拶(秦副センター長) 本日のテーマの説明 ・IT分野における最新の著作権問題(裁判例) ・鳥取県弁理士定着促進事業について |
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2. | 著作権(財産権)に関する権利の説明(中野委員長) 著作権(財産権)については、支分権である上映権、上演権・演奏権、複製権、二次的著作物の利用権、翻訳権・翻案権等、貸与権、譲渡権、頒布権、展示権、口述権、公衆送信件・伝達権などの個々の権利が問題となる。 |
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3. | まねきTV事件(ソニーロケーションフリー) 著作隣接権仮処分命令申立事件 (東京地決平成18年8月4日、平成18年(ヨ)第22022号) ・事案 債務者が行う「まねきTV」のサービスが、本件放送に係る債権者の送信可能化権を侵害していると主張して、本件放送の送信可能化行為の差止めを求めた事案 ・結論 申立却下 ・本件サービスのシステム構成 複数の(ロケーションフリーテレビベースステーション)がある ユーザーが独自に購入したベースステーションを債務者が預かっている 各ユーザーが各自所有のベースステーションを使用して所望chを受信 著作権法30条の私的利用に該当するか否か(送信主体が誰か)が問題 ・主な争点(抗告審) A)ベースステーションが「自動公衆送信装置」に該当するか否か ⇒否定 B)債務者の行為が送信可能化行為の主体に該当するか否か ⇒否定 C)債務者が送信可能化行為をしているか否か ⇒否定 a)1対1の送受信が行われるのみ b)利用者の選択する放送に限定 c)サービス提供者が放送の選択に関与しない |
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4. | MYUTA事件(携帯電話向けストレージサービス) 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 (東京地判平成19年5月25日、平成18年(ワ)第10166号) ・事案 原告が被告に対し、原告の携帯電話向けストレージサービスの提供について、管理著作物の著作権に基づく差止請求権が存在しないことの確認を求めた事案 ・結論 請求棄却(侵害認定) ・本件サービスのシステム構成 1つの本件サーバがある 本件サーバで複製行為が行われる 複製された音楽データは元データ所有のユーザーのみに配信 1つの本件サーバを原告が管理している ・主な争点 A)複製権侵害の行為主体は誰か ⇒原告 @複製行為は、本件サービスにおいて極めて重要なプロセス A本件サーバは、原告が所有し、その支配下に設置して管理 B原告が提供するユーザソフトの動作に本件サーバの認証が必要 C複製行為は、原告の管理下にある本件サーバで行われる B)公衆送信権侵害の有無 ⇒肯定(複製権侵害) @音源データの送信行為が不可避的 A本件サーバは、原告が所有し、その支配下に設置して管理 B送信行為は、原告の管理下にある本件サーバで行われる ・本件サービスについての具体的な説明 ・まねきTV事件と本件との相違点 送信主体が原告(まねきTVはユーザーが送信主体) ユーザーが不特定など ・侵害の主体 行為を「管理・支配」し、「利益を受けている」者 「現実の複製、公衆送信・送信可能化行為をしない者であっても、その過程を管理・支配し、かつ、これによって利益を受けている等の場合には、その者も、複製行為、公衆送信・送信可能化行為を直接に行う者と同視することができ、その結果、複製行為、公衆送信・送信可能化行為の主体と評価し得るものと解される。」(選撮見録事件) |
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5. | IT分野のその他の判決例 ・「選撮見録事件」 (大阪地判平成17年10月24日、平成17年(ワ)第488号) (知財高判平成19年6月14日、平成18年(ネ)第3258号) ・「ロクラク事件」 (東京地決平成19年3月30日、平成18年(ヨ)第22046号) ・「録画ネット事件」 (知財高決平成17年11月15日、平成17年(ラ)第10007号) ・「ファイルローグ事件」 (知財高決平成17年3月31日、平成16年(ネ)第405号、第446号) |
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6. | 鳥取県弁理士定着促進事業について(岩田広報副センター長) (1)これまでの「弁理士定着促進事業」の概説 島根県での弁理士定着など (2)平成19年鳥取県弁理士定着促進事業 ・趣旨 島根県で事務所開設する弁理士の募集 ・対象者 @原則週1日以上弁理士本人が勤務すること Aスタッフを配置すること B3年以上開設する事務所であること ・募集事務所数は2事務所 ・現状 2名の弁理士が応募している (3)鳥取県以外の都道府県についても「弁理士定着促進事業」を実行したい |
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7. | 質疑応答 Q)今回の判決例は放送の録画代行サービスについてのものか。(読売新聞 田中氏) A)1件目(まねきTV事件)の判例は録画代行サービス(後で放送転送サービスに訂正)であるが、2件目(MYUTA事件)の判例は放送ではなく音楽CDデータを携帯電話で聞けるデータに変換するサービスである。その他の判決は、「選撮見録事件」、「ロクラク事件」および「録画ネット事件」が録画代行サービスであり、「ファイルローグ事件」はデータ交換サービスである。「ファイルローグ事件」はネットの管理責任を問われたものである。放送の録画代行サービスについては、個人に私的利用か否かが問題となる。 Q)その境界線ははっきりしているのか。(読売新聞 田中氏) A)録画サーバを誰が管理・支配しているか、誰が利益を受けているか、などで行為者を判断している。 Q)録画代行のサービスは今増加傾向にあるか(読売新聞 田中氏) A)事件はどんどんでている。 Q)ソニーロケーションフリーのベースステーションはサーバではなく、単なる転送装置ではないか(日本経済新聞) A)裁判所の認定はベースステーション(送信可能化装置)としている。裁判所はサーバか否かの判断はしていない。 Q) ジャストシステムのストレージサービスにおいてストレージをジャストシステムが管理しており複数のユーザーがそのストレージを使用する行為は著作権侵害となるか(日本経済新聞) A)個々の事案によって判断が異なる Q)上記について弁理会の見解があるか(日本経済新聞) A)弁理士会の統一見解はない。個人的には、個人のデータ管理であり、データバックアップ等も違法とする必要はないと思われる。 |
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8. | 閉会の挨拶(秦広報副センター長) |