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記者懇談会・議事録(2010年10月)

平成22年度 第4回記者会見報告書

日 時: 平成22年10月15日(金) 13:00〜14:00
場 所: 弁理士会館 2−B会議室
テーマ: 特許出願件数激減について 会長からの緊急提言
「意匠の底力キャンペーン」について
出席者: 日本弁理士会(9名)(敬称略)
会長 筒井 大和
副会長 稲岡 耕作
意匠委員会 副委員長 瀧野 文雄  林  美和
広報センター 委員 茅野 直勝(司会進行)  秦  正則(議事録)

議事

1.開催の挨拶(茅野センター委員)
2.「特許出願件数激減について 会長からの緊急提言」(筒井会長)
・日本国内は5年連続で減少(2009年は前年比11.2%減)。出願数だけで判断できるものではないが、知財のこのような出願数の減少は、日本の経済全体の低迷を考えると象徴的な現象である。
・発明公開の代償として特許権を付与するという制度目的に鑑みれば、企業における技術の成果がでていないのではないかという不安にも陥る(発明ができる場がなくなっているという不安)。もちろん、量だけでなく質も含めて考えている。
・国内の特許出願件数:基本的に右下がり(前記したように5年連続で減少)。
・日本、米国、欧州、中国、韓国(5大特許庁)で比較した場合、2009年で日本は34.9万件で2位(1位は米国)。3位の中国は31.5万件だが、実用新案が特許と同じくらいの件数あり(日本の実用新案は7千件くらい)。なお、日本はかつて世界の4割程度を占める時代もあった。
・5大特許庁間(各国間)も特許出願件数と登録件数について、中国「からの」出願が増えている。現時点ではそれほど多くないが、加速度的に増えていくと予想される(日本の立場弱くなってきている。韓国を通り越して中国が力をつけてきている。
・意匠出願件数は、中国が突出している(なお、中国は無審査制度を採用)。日米で最下位争いをしている(日本は件数も右下がり)。韓国は件数が右上がりであり、制度改正もあり今後はさらに増加が予想される。
・商標も同じような傾向で、日本国内ではここ数年減少(2009年は10万8千件くらい。なお、中国は80万件)。
・出願件数の減少についての対応等を、特許庁長官に文書で要望、口頭でも説明した。また、日本弁理士会(以下、「弁理士会」)もそれ相応の努力、予算取り(臨時総会で広報活動、地域支援、中小企業支援対応への補正予算等)を考えている。
3.「研究技術は、まず、特許出願しよう!」について(稲岡副会長)
・ノーベル化学賞を受賞した根岸先生の「特許を取らなかったのでクロスカップリング技術が世に広まり技術貢献した」という発言の報道により、世間には特許を取らない方がよいと誤解されている雰囲気がある。一方、「技術は特許出願をした方が広まり、世にも普及する」のが現実である。
・特許制度は、発明公開の代償として特許権を付与し、早く出願すれば早く公開され、他の発明者、研究者が改良、応用を図ることができる。また、このように公開されるので、学会発表と同様の効果を得ることができる。
・(株)島津製作所の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞した際、当時の特許部長(弁理士)が、対象技術が出願されていたか心配しており、結局出願されていて安心したという話もある。
・結局は、特許出願している方が技術も世に広まり、発明(技術)の保護と利用が図られ、結果として産業の発展に役立つものであり、誤解しないで欲しい。
4.意匠の底力キャンペーンについて
A.日本と中国における意匠について(意匠委員会 林副委員長、茅野センター委員(意匠委員会 副委員長兼務のため))
・意匠出願は、世界全体で見れば増えている。日本は若干減少傾向であるが、韓国や中国は年々増加している。
・法体系として、中国(中国専利法)では、意匠は無審査で登録される。また、韓国(デザイン保護法)も一部の物品は無審査であり、加えて、大手企業(サムスン)と韓国特許庁が協力し出願件数増、データベースの整備を図っている。
・中国の専利法は、1985年に施行され、2009年10月に第3次改正がなされた(基本的に技術的なところをカバーする法律)。
・「ホンダオートバイ事件」(北京市高級人民法2003年5月30日判決)を紹介。スクーターは基本形状が決まってしまい、全体から見れば両意匠は似ているが、部分部分(ミラー、フェンダー等)は似ていない感じである。部分意匠制度は中国にはないが、部分意匠制度があれば、物品の外観に関する権利保護をもう少しうまく図ることができると考えられる。
・高額損害賠償事件の例として、「バス事件」(北京第一中級人民法2009年1月判決)を紹介。意匠を権利化しておく価値があるよい事例である。(以下、部分意匠制度について紹介)
・日本国内では、全体の出願件数は減少しているが(30,875件/2009年)、部分意匠出願の割合は年々増えている。部分意匠制度は使い勝手のいい制度であり、効果的に意匠を保護することができると考えられる。
・なお、韓国(部分意匠制度あり)は、部分意匠の導入も含め、ドラスティックな制度改正を計画し、出願件数もますます増えていくと思われる。
部分意匠の活用例:
@回転すし用皿の搬送機械(フラットな搬送路部分を部分意匠で保護)
A携帯情報端末(情報端末等の画面部分を部分意匠で保護)
B化粧用パフ事件(ブラシの部分を部分意匠で保護)
C乗用自動車(クォーターピラーの部分を部分意匠で保護)
B.「意匠の底力キャンペーン」のPR(意匠委員会 瀧野副委員長)
・出願件数は中国の10分の1、韓国の1/2であり、特許庁も制度存続の危機という危機感がある。これは弁理士も同様である。
・意匠制度は特許制度や商標制度と比べるとマイナーな印象だが、特許や商標とも補完関係にあり(技術が陳腐化してもデザインで保護可能、内部構造を特許、外観を意匠で保護する等)、使い勝手がいい制度であり、本キャンペーンを通じて、意匠の重要性をわかって欲しい。
・本キャンペーンの広報として、ポスター100枚、チラシを3万枚作成し、関係部署等に配布した。
・公募期間は9/1〜10/31で、キャンペーンマークとキャッチフレーズを募集している。大賞(各1点)には10万円、佳作(両方で10点)には5千円の図書券を贈呈する。
・「公募ガイド」、「パテント」、「発明」の各誌にも広告を掲載した。
・今後の予定としては、公募終了後、11月中旬に選考会、11月下旬に結果を弁理士会HPに掲載予定。大賞受賞者は弁理士会に招き、会長より賞金授与の予定である。
・10/15現在の応募状況は、キャンペーンマーク50件、キャッチフレーズ500件ほどである。
・キャンペーンマーク、キャッチフレーズは、今後の弁理士会の広報活動に使用、意匠制度の周知化に役立たせる。
5.質疑応答
・特許出願件数激減について、弁理士会としての対策はあるか(日本経済新聞 安川氏)
→現在、ワーキンググループを設置して対策を検討中である。先ほどの意匠キャンペーン等のPRも活動の1つである。
→中小企業、自治体の支援制度の活用ついて広報活動を強化する予定であり、臨時総会で補正予算取りを考えている。
→支援制度(支援金)は、地方ではあまり使われていないようである。申請資料等が面倒と考えられている可能性もあり、弁理士が資料作成等の手伝いができればと考えている。
→企業の技術開発を弁理士会として手伝えないかと検討中である(必要あれば予算措置も考える)。
(以上、筒井会長、稲岡副会長が回答)
6.閉会の挨拶(茅野センター委員)
(配付資料)
・「提言:特許出願件数激減への対応策をとるべきである」(平成22年9月15日 日本弁理士会 会長 筒井 大和)
・「第1章 国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状」(特許庁資料)
・「研究技術は、まず、特許出願しよう!」
・「日本と中国における意匠について」(日本弁理士会 意匠委員会)
・「意匠の底力キャンペーン キャンペーンマーク&キャッチフレーズ募集」チラシ(日本弁理士会)
 
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