1.開催の挨拶(福田センター長) |
開催の挨拶と併せて、日本弁理士会主催で11月25日に行われる「知的資産経営フォーラム2010」についての紹介がされた。 |
|
2.ドバイ税関長によるセミナー概要報告と税関取締における弁理士の役割(太田副委員長) |
(1)近年、海外での模倣問題が深刻化しており、そのような模倣行為には、模倣品の通過・中継貿易、フリーゾーン(外国企業に対する特別税制優遇措置等が講じられる経済特区で、ドバイには世界最大の人工港であるジェベル・アリフリーゾーンが存在する。) における積替(トランスシップメント)などの行為が存在する。 |
特にドバイは通関手続が比較的簡単といわれ、模倣品の輸出、更にドバイを中継して他の国への再輸出が行われており、「物流のハブ」として、膨大な通貨貨物が経由する世界屈指の貨物積替拠点と考えられている。世界中に出回る模倣品の20%以上がドバイを経由しているともいわれている。 |
一例としては、@「自動車用のオイル缶(色彩、形状は真正品とほぼ同じ)にフリーゾーンで商標を付して再輸出」したり、A「製品をフリーゾーンでパッケージ梱包して再輸出する」等の模倣行為が行われている。 |
このような事実を背景として、日本弁理士会は、ドバイ税関長を招き、知的財産及びその侵害取締等に関するセミナーを開催した。 |
|
(2)ドバイ税関長セミナーの概要 |
当該セミナーは、日本弁理士会主催、外務省、財団法人日本関税協会知的財産情報センター(CIPIC)後援で、2010年9月15日(水)に開催された。 |
セミナーは、全4部から構成され、@ドバイ税関長による「ドバイ税関:知的財産権に対する取組み」、Aドバイ税関法務課長による「UAE税関:法と規制−知的財産法の行使」、B同法務課長による「UAE税関:国際協力と情報技術の実務的活用」、CUAE弁護士による「知的財産権侵害取締に対するドバイ税関の試み:ブランドオーナーと知的財産アドバイザーにとっての実務的観点」について報告がされた。 |
|
(3)ドバイ税関における水際取締 |
このような状況に鑑み、ドバイ税関としては、@知的財産専門チーム(IPR Unit)の設置、A電子通関システム「Mirsal 2」の導入等により、水際での取締を図っている。その結果、2010年前半の実績として、335件を取締ることができた(内、54件が日本の商標とのことである)。これらにより、フリーゾーン経由での模倣品の輸入・再輸出の差止めも可能である。 |
しかしながら、マンパワーの不足等の理由から、外部委託を行っているという実情もあり、日本の企業等は、ドバイ税関に対し、商標権等の知的財産権を登録し、かつ税関に積極的に情報を提供・協力する必要がある。 |
|
(4)太田副委員長からの説明の後、水野委員長、及び、橋本委員から、下記補足説明があった。@模倣品対策として、司法救済を選択した場合、現地での侵害状況調査は困難であることが多く、模倣者の所在がつかめない場合も多い。よって、流通過程で模倣品の排除が可能な税関手続の方が、司法手続に比べて、費用対効果が高い場合があること、A特に我国の中小企業の場合、海外に事業拠点を持たない場合も多く、輸出入の時点で模倣品をおさえることのできる税関手続は効果が高い。 |
したがって、弁理士の主要業務の一つである、「税関での水際取締」代理業務についても今後大いに活用されるべきであること等が説明された。 |
|
(5)質疑応答 |
@模倣品の可能性があっても個人輸入は税関をパスできる場合があると聞いているが本当か?また、この方法で模倣品を大量に小口化して輸入し、ネットオークションを通じて販売されていると聞くが対応策はあるのか? |
→本当である。但し、知的財産権を所有する権利者はこのような輸入を認めるかどうかの権限を有する。通常は認めない権利者が多い。純粋な法律論としては、このような個人輸入を規制することができないため、問題である。(橋本委員) |
A水際対策として、条約上はどうなっているのか? |
→外務省では、知的財産権の執行を強化するための新しい国際的な法的枠組である「ACTA」(模倣品・海賊版拡散防止条約、Anti-Counterfeiting Trade Agreement, 仮称)について加盟国の同意がほぼなされており、最終段階にあると聞くが、現在のところ詳細は不明である。但し、ドバイはこの条約に加盟していないようである。 |
|
3.閉会の挨拶(福田センター長)
|