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記者懇談会・議事録(2010年12月)

平成22年度 第6回記者会見報告書

日 時: 平成22年12月20日(月) 10:00〜11:00
場 所: 弁理士会館 2−B会議室
テーマ: 最近の商標事情(ヤクルト立体商標判決等を踏まえて)
     「意匠の底力キャンペーン」について 選考結果報告
     特許等出願件数激減に対する緊急対応策を講じることに関する総会決議について
出席者: 日本弁理士会(5名)(敬称略)
執行理事 青山 仁
商標委員会 副委員長 本多 敬子
意匠委員会 副委員長 瀧野 文雄
広報センター センター長 福田 伸一 (司会進行)  秦  正則(議事録)

議事

1.開催の挨拶(福田センター長)
2.最近の商標事情(ヤクルト立体商標判決等を踏まえて)(商標委員会 本多副委員長)
(1)喜多方ラーメン事件(地域団体商標)について(資料参照)
・地域団体商標制度が導入されて初めての判決である。
・地域団体商標制度とは、地域ブランドをより適切に保護することにより、事業者の信用の維持を図ることができるとともに、産業競争力の強化と地域経済の活性化を支援することを目的として導入された(平成18年4月1に施行)。制度導入以来約1000件出願され、400件以上が登録されている(資料に登録例を示している。)。なお、海外からの出願もあり。
・知的財産高等裁判所(知財高裁)では、「喜多方ラーメン」の商標が原告の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されているとまでいうことはできないので、地域団体商標登録を拒絶した審決の取り消しを求めた原告の請求を棄却したものである。
・「喜多方ラーメン」の名称については、確かに広く広まっている印象ではある。しかしながら、原告又はその構成員だけでなく、出願人の団体でない団体等が広めたところも多いので、「喜多方ラーメン」が原告又はその構成員の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されているわけでもないであろう。
・なお、原告は、本判決を不服として最高裁に上告している。
(2)ヤクルト容器事件(資料参照)
・文字商標から独立した容器の立体商標が登録された例としては、いわゆる「コカコーラ」瓶の立体商標に続いて2つめである。
・出願人((株)ヤクルト本社(以下単にヤクルト。)による出願は2回目である。前回(平成9年に出願)は市場での独占性がなく、アンケート結果にも客観性がないとして拒絶された。2回目の出願はコカコーラの判決(H20.5.29.)の約3月後に行った(コカコーラと同様、写真で出願。前回は図面で出願。)。
・知財高裁では、商標法3条2項の適用を否定した審決を取り消し、原告の請求を認容した。
・コカコーラ判決と違う点として、コカコーラは、類似品を徹底的に排除していたため類似品はほとんど存在しなかったが、ヤクルトは特にそういうことをしなかったところである。ヤクルト側は商品のイメージを重視し、類似品を攻撃することを好ましくないと判断し、それを自社の営業努力により克服した。ヤクルト容器は先駆的商品であり、著名なデザイナー(故剣持勇氏)のデザインである。
・ヤクルト容器については、既に42ヶ国で既に権利化を図っている。
・本判決について、特許庁は上告せず。コカコーラのケース判決は登録されるまでが長かった。本件についても審決を待っている。
(3)質疑応答 ・ヤクルト容器の判決結果について状況の変化の可能性はあるか(ヤクルト側に取材を申し込んだが、対応が慎重なので。)。
 →もはや特許庁の上告は考えられないが、特許庁は再度審理する必要がある。その結果がまだ出ていないので、慎重なのはそのためではないか。
・立体商標の登録については、訴訟にならないと難しい(登録されない)ものなのか。また、コカコーラの判決(及び登録)により、特許庁側の判断基準に変化はあったか。
 →審査基準の改正及びその予定はない。ヤクルト、コカコーラをみても、アンケートのやり方に依るところも大きいかも(ヤクルトやコカコーラもかなり神経を使っていた)。容器等の立体商標に関しては、もう少し判例を積み重ねる必要あるかもしれない。
・「ヤクルト容器」はサイズが小さいからヤクルト容器として認識されているとも考えられるが、例えばサイズが2リットルのPETボトルに適用された場合、効力等に違いはあるか。
 →地方ではヤクルト容器もサイズが大きいものも使用されており、実際の効力の違いはわからない。実際はロゴを付する可能性もあるので、権利行使の場合にはまた判断がされるかもしれない。
・ヤクルト容器の判決には驚異的な販売実績が考慮されていたが、どの程度あればよいか(基準等あるか)。
 →具体的な数字・基準等はないであろう。シェア等も含め個別具体的に判断すると思われる。 ・アンケートについては、ヤクルトが自ら実施したアンケートか。また、自ら実施した場合には、その信憑性はどうか。
 →アンケートはヤクルトが調査会社に依頼して実施した。証拠としては、誰がやったかというよりは内容の客観性が重要視される。例えば、1回目の出願では「これはヤクルトですか?」的な質問であったため、客観性があるとは判断されなかった。
3.「意匠の底力キャンペーン」について 選考結果報告(意匠委員会 瀧野副委員長)
・キャッチフレーズ2263件、キャンペーンマーク358件が集まった。いずれも(特に前者)については予想を大きく上回る結果であった。
・11/8に一次選考、11/15に二次選考を行い、キャッチフレーズを92件、キャンペーンマークを43件まで絞り込んだ。11/19に最終選考を行い、大賞(各1件)、佳作(各5件)を選出した(特許庁、(社)日本知的財産協会、(社)日本デザイン保護協会、(社)発明協会、日本弁理士会からの7名を選考委員とした。)。
・大賞にはそれぞれ10万円の賞金、佳作にはそれぞれ5千円の図書券を進呈した。
・今後、選出したキャッチフレーズとキャンペーンマークを意匠の広報活動に利用する予定である。現在、大賞マークとフレーズを一体化し、日本弁理士会のロゴを加えた広報活動用のマークを制作し、ノベルティ商品に展開したいと考えている。
・パテント誌2月号の意匠特集に選考の模様を掲載する。
4.日本弁理士会からの連絡事項
(1)「知的財産フォーラムinたま」(H23.2.4. 立川市市民会館)及び「常設特許相談室 著作権相談室」(日本弁理士会関東支部)について説明(福田センター長)
(2)質疑応答
・著作権相談室について、弁理士法4条に係るものとあるが、入らないものを具体的に教えて欲しい。また、実施頻度はこの程度でいいのか(少なすぎないか)。
 →弁理士法4条は弁理士の専権業務を示すものであるが、確かに「弁理士法4条〜」では相談できない内容がわかりにくい(相談する側で判断できない)かもしれない(関東支部の関係委員会にその旨連絡する。)。実施頻度は、これまでの著作権法関連の相談数から決定したが、相談が多い場合には再検討する予定である。
5.特許等出願件数激減に対する緊急対応策を講じることに関する総会決議について(青山執行理事)
・本決議文は、H22.12.3.に開催された第1回臨時総会で採択された。
・「出願件数激減」については、これまでも会長が提言(HPにも掲載)し、また、TVインタビュー等で取り上げられている。
・決議・提言の理由としては、日本における出願の激減が、日本の産業力の低下、ひいては国力の低下を示しているのではないかという強い危機感を我々が抱いているからである。出願件数減少は、企業のコスト削減によるものもあるのかもしれないが、日本の商品開発力それ自体が以前より落ちてきている可能性もある。産業財産権は技術開発の成果であるという理解であり、出願件数減少は、そういう点からみると、単に不景気というだけで片付けられない問題であると考えられる。
・対外的にも、日本の市場や産業財産権制度の魅力が低下していると考えられる。3極特許庁のうち、欧州、米国特許庁はリーマンショック以降出願件数を伸ばしており、出願件数が減少しているのは日本のみである。
・アジアという意味では、中国、韓国も出願件数は増加傾向にある。日本特許庁はアジアにおけるハブ特許庁となり、日本(特許庁)がアジアの産業財産権をリードする立場になっていかなければいけない(なっていくべき)であると考えているが、そのためには出願内容の質も重要だが、ある程度の数(件数)も必要とされると考えられる。
・このようなことから、出願件数激減に対して、日本弁理士会が率先して行動を起こしていく。約5,000万円の補正予算を計上し、広報活動、出願の支援制度(費用の一部負担、手続)等を実施していく予定である。
6.閉会の挨拶(福田センター長)
(配付資料)
・「喜多方ラーメン事件」(本多敬子先生作成)
・「ヤクルト容器事件」(同)
・「特許等出願数激減に対する緊急対応策を講じることに対する総会決議(決議文)」(日本弁理士会)
・「意匠の底力キャンペーン 入賞作品の発表について」(日本弁理士会)
・「常設特許相談室 著作権相談室 開設のご案内」チラシ(日本弁理士会関東支部)
・「知的財産フォーラムinたま」(日本弁理士会)
 
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