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記者懇談会・議事録(2011年6月)

平成23年度 第2回記者会見報告書

日 時: 平成23年6月24日(木) 13:30〜14:30
場 所: 東京倶楽部ビルディング14階 14−A会議室
テーマ: 医薬品特許の存続期間延長登録出願について
弁理士の日について
出席者: 日本弁理士会(8名)
日本弁理士会 執行理事 長濱 範明
特許委員会 委員 石埜 正穂(スピーカー)
広報センター センター長 福田 伸一 (司会)
広報センター 副センター長 鈴木 一永(司会)
広報センター 第2事業部長 茅野 直勝
広報センター 第2事業部 秦  正則
広報センター 第2事業部 廣瀬なつ子
広報センター 第2事業部 田村 拓也(議事録)

議事

1.開会(鈴木一永 副センター長)
2.医薬品特許の存続期間延長登録出願について(石埜正穂 特許委員会委員)
(1) 説明
・現行制度では、薬事法等の法規制に基づく処分を受けることにより、発明の実施の禁止が解除された範囲を特許法上で規定し、当該解除された範囲と特許発明の範囲の重複している部分のみに、延長された特許権の効力の範囲が及ぶとしている。当該解除された範囲は、物(有効成分)と用途(効能・効果)の観点より規定される。したがって、先行処分と同一の「有効成分」、「効能・効果」である後行処分は、当該解除された範囲に含まれるから、特許権の延長は認められないとされていた(平成18年(行ケ)第10331号審決取消請求事件)。
・一方、ターゲッティングDDS、徐放化製剤等、所謂新剤型医薬品は薬事法上、処分を受けた医薬品と同一の「有効成分」、「効能・効果」であっても、新たな治験データに基づいた承認審査が改めて必要とされ、同処分を受けるまでに長期間を要していた。(錠剤をカプセル剤に剤型変更(追加)するとき等に必要な承認審査は、治験データを改めて用意する等が必要なく、同処分を受けるまで短期間で済んだ。)
・したがって、産構審知財政策部会特許制度小委員会の下に組織された特許権の存続期間の延長制度検討WGでは、新剤型医薬品等に係る処分に関し、特許権の延長を認めるかどうか、また、認めるとすれば、どの程度の範囲か等の検討が進められていた。
・2011年4月28日の最高裁判決平成21年(行ヒ)326号は、このような背景の下で示された判断である。
・下級審の平成20年(行ケ)第10460号審決取消請求事件では、「政令で定める処分」の対象となった「物」とは、当該承認により与えられた医薬品の「成分」、「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味するというべきであり、薬事法所定の承認が与えられた医薬品の「成分」、「分量」及び「構造」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施、及び当該医薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ、延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である、と判断された。
・最高裁判決平成21年(行ヒ)326号では、延長登録出願に係る特許発明は、「有効成分」「効能・効果」を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって、(先行医薬品が技術的範囲に属しない以上)処分を受けるまで実施することができたとはいえないし、先行処分で存続期間が延長され得た特許権の「効力の及ぶ範囲」(その有効成分がその効果で過去に存続期間延長された事実の有無)により、後行処分の「特許発明の実施の禁止が解除された範囲」が影響を受けるものでもない、と判断された。なお、「先行医薬品が延長登録出願に係る本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき」が、必要条件であるのか、十分条件であるのかについては示されていない。
・したがって、後行医薬品について、すでに延長登録を受けている先行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくすることを理由として、特許権の延長登録を認めないとした審決が否定されたことになる。また、延長登録された特許権の効力の範囲を「有効成分」よりも狭める下級審の論旨の適否は判断されず、先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲をどう解するかで後行処分時の審査の結論は左右されないとされたことから、延長登録された特許権の効力の範囲に、一定の幅が認められる余地が生じることになった。特許発明の実施の禁止が解除された範囲、および延長された特許権の効力の及ぶ範囲については今後、明確化される必要がある。
(2)質疑応答
 @今回の判決をうけて、製薬協はどのような反応をしているか。
 (回答)スピーカーの私見としては、今回の最高裁判決についてはおおむね歓迎していると思う。
 A1特許1延長となると従来型の対応ができなくなるのでは。
 (回答)1特許1延長はあくまでもスピーカーの私見。製薬協はそれがよいとは思わないだろう。
 B1特許1延長は欧米ではスタンダードとのことだが、欧米と日本で判断が違うのは問題では。
 (回答)国ごとに政策が異なるので、スピーカーの私見としてはそれほど重要なことではないと思う。  CDDSの範疇をどこまでとするか。
 (回答)DDSと一言で言っても、ターゲッティングDDS、徐放化DDSなどの目的の異なるものがあり、今後の議論の論点になるものと思われる。  DDDSで延長した場合、効能Aで延長・効能Bで延長ということなのか。
 (回答)どのような条件がつくかで変わるので、今日の時点では何とも言えない。
(3)補足、その他(長濱範明 執行理事)
 ・最高裁判決を受け、産構審知財政策部会特許制度小委員会に組織された特許権の存続期間の延長制度検討WGは8月にも再開され、特許発明の実施の禁止が解除された範囲、延長された特許権の効力範囲等について、明確化されることが期待される。少なくとも審査基準は改定される。当該WGには、日本弁理士会からも委員が加わっており、知的財産権法を扱う実務者の立場から、積極的に発言していく。
3.弁理士の日について(福田伸一 センター長)
(1)説明

・7月1日の弁理士の日を迎えるにあたり、今年は主に7月2日(土)に各地でイベントを行う予定。
・日本弁理士会の災害復興支援としては、現在復興支援PJが立ち上がっており、7つほどの項目が検討されている。支援内容を決定次第、直ちに公表する予定である。
4.閉会の挨拶(鈴木一永 副センター長)
■配付資料
・医薬品特許の存続期間延長について(石埜委員作成資料) ・全国一斉無料相談会パンフレット ・知財・企業セミナー(関東支部)パンフレット ・知財活用の最前線(近畿支部)パンフレット ・弁理士の日記念フェスタ(東海支部)パンフレット ・支援活動だより2011年5月号 ・パテント・アトーニーVol.62(夏号)
 
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