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記者懇談会・議事録(2011年8月)

平成23年度 第3回記者会見報告書

日 時: 平成23年8月5日(金) 13:30〜14:30
場 所: 弁理士会館2階 2−B会議室
テーマ: 香水瓶事件に見る立体商標の判決について
パテントコンテスト・デザインパテントコンテストについて
出席者: 日本弁理士会(8名)
副  会  長       井澤  幹
執 行 理 事       石井 茂樹
商標委員会  副委員長   今井 貴子(スピーカー)
広報センター センター長  福田 伸一
広報センター 副センター長 鈴木 一永
広報センター 第2事業部長 茅野 直勝(司会)
広報センター 第2事業部  田村 拓也
広報センター 第2事業部  廣瀬なつ子(議事録)

議事



1.開会の挨拶(茅野直勝 広報センター第2事業部長)
2.香水瓶事件に見る立体商標の判決について(今井貴子 商標委員会副委員長)
(1)はじめに
商標登録の登録要件を規定している商標法3条1項3号及び3条2項は紹介する判決に深く関わる規定である。
(2)ジャンポール・ゴルチェ「クラシック」の事件について
・知財高裁は本判決において、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、商標法3条2項の適用もないとした
審決を取り消し、商標法3条2項の適用を認容した事件である。本願商標は裸の女性の体に似せたボトルであり、
指定商品は「美容製品,せっけん,香料類及び香水類,化粧品」である。
・判決では、本願商標に係る立体形状は一定の特徴を有するものであるが、女性の身体をモチーフにした
香水の容器は他にもあり、香水の容器において通常採用されている形状の範囲を大きく超えるものとまでは
認められず、香水の容器の形状として需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状として
予測し得る範囲のものであるから商標法3条1項3号に該当すると判断した。
商標法3条2項の適用はマグライト事件以降緩やかに解されてきているところ、
使用に係る商標に色彩の異なるものや衣装を思わせる装飾がされているものもあるが、
使用に係る商標と本願商標とは実質的にみてほぼ同一の形状であり、
長期にわたって販売されてきたことが認められる。また、本件でも類似した形状の商品は他になく、
使用による識別力を有すると判断された。
・被告は販売数量や宣伝広告費等が不明確である点を主張したが、香水は安価な日用品とは異なるものであり、
その特徴的な形状から原告の出所にかかる商品であることを認識し得ると判断され、認められなかった。
また、使用証拠が「香水」のみである点については、それ以外の指定商品と取引者が極めて共通するとして、
香水以外の指定商品についても識別力が認められると判断した。この点は本件で最も特徴的な部分である。
(3)ジャンポール・ゴルチェ「ル・マル」の事件について
・知財高裁は本判決において、商標法3条1項3号については、「クラシック」事件と同様の判断がなされ、
本願商標の自他商品識別力を認めなかった。
なお、商標法3条2項の適用について、原告は何ら主張していない。本願商標は男性の体に似せたボトルであり、
指定商品には「香料類及び香水の他洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤」等があり、
「クラシック」と比較すると幅広い商品が指定されている。
(4)イッセイ・ミヤケ「ロードゥイッセイ」の事件について
・知財高裁は本判決において、本願商標の自他商品識別力及び商標法3条2項の適用を認めなかった。
本願商標の指定商品には「香料類及び香水類」の他「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤」等があり、
「クラシック」と比較すると幅広い商品が指定されている。
・商標法3条2項の適用については、本願商標に係る立体的形状(上が球、下が円錐)はシンプルで、
類似する形状の香水が複数存在するばかりか酷似するものまで存在することに照らすと、
使用による識別力を獲得しているとはいえないと判断された。
また、本願指定商品には香水とは必ずしも一致するとはいえない「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤」等の商品が
含まれていることも商標法3条2項が適用されない要因となっている。
(5)今般の判決について
@従来と同じ点
・商標法3条1項3号の判断基準及び3条2項の判断において当該商品の形状及びこれに似た他の商品等の存否、
当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮する点
(コカコーラ、ミニマグライト、Yチェア事件と同様である。)
A従来と異なる点
・商標法3条1項3号の判断において、商標法4条1項18号の趣旨を勘案しない点
(コカコーラ、ミニマグライト、Yチェア事件と比較すると緩やかな判断基準である。)
・「香水」のみの使用により、これと密接な関係のある「美容製品,せっけん,化粧品」についても
商標法3条2項を適用した点
・コカコーラ事件等が判断基準として多数の証拠を提出したのと比較すると、
それほど多くの証拠を提出していなくても商標法3条2項の適用が認められた点
(6)Yチェア事件について
・商標法3条1項3号の判断において、商標法4条1項18号の趣旨を勘案することを述べている点で、
香水瓶の事件よりも厳しい判断基準といえる。
・被告は原告製品に類似した形状の椅子が存在することを主張したが、そのこと自体は本願商標が
自他商品識別機能を獲得していると認定する上で妨げにはならず、
類似品があってもオリジナル商品があることが前提となっていれば、立体商標として認められ得ると裁判所は判断した。
・Yチェア事件は香水瓶の事件とは異なり、ここ数年の判断基準に基づいて出された判決という印象を受ける。
・商標法3条2項の判断基準が緩やかになったことから、今後、立体商標の登録は増えるのではないか。
また、この商標法3条2項の判断基準は平面商標にも波及するものと思われる。
3.パテントコンテスト・デザインパテントコンテストのご案内及び配布資料に関する説明
(福田伸一 広報センター長)
・パテントコンテスト及びデザインパテントコンテストにおいて、今年は「震災復興応援賞」を設定する。
・中国の新幹線、iPhoneストア、知財高裁大合議の話など、記者の方々がご興味のあるトピックを
ぜひアンケートに書いていただきたい。
・「支援活動だより」にもあるが、日本弁理会では出願援助を行っているので、ぜひともご活用いただきたい。
前年度に比べると申請件数、援助件数ともに増える見込みであり、予算も多くとっている。
4.閉会の挨拶(茅野直勝 広報センター第2事業部長)
■配付資料
・香水瓶事件に見る立体商標の判決について(今井副委員長 作成資料)
・パテントコンテスト パンフレット
・デザインパテントコンテスト パンフレット
・支援活動だより2011年7月号
・記者会見アンケート
 
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