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記者懇談会・議事録(2011年8月)

平成23年度 第4回記者会見報告書

日 時: 平成23年8月31日(水) 10:30〜11:30
場 所: 弁理士会館2階 2−AB会議室
テーマ: 平成23年度特許法等改正について
出席者: 日本弁理士会(7名)
副  会  長       井澤  幹
執 行 理 事       長濱 範明
特許第2委員会 委員長   石橋 良規(スピーカー)
特許第1委員会 委員長   吉田 正義
広報センター  センター長 福田 伸一
広報センター 第2事業部長 茅野 直勝(司会)
広報センター 第2事業部  田村 拓也(議事録)

議事

1.開会の挨拶(茅野直勝 広報センター第2事業部長)
2.平成23年度特許法改正について(石橋良規 特許第2委員会委員長)
(1)説明
・平成23年度特許法改正における改正事項は、「権利者等の保護」、「紛争解決制度等」、「利便性向上」の3つに大まかに分けることができる。
・まず「権利者等の保護」について説明する。
・「通常実施権等の当然対抗」では従来、特許庁の原簿に登録されていなければ、特許権が移転されたときに、その転得者に対して通常実施権を主張できなかった。今改正で、これが主張できるようになり、通常実施権の登録行為が法律から削除された。通常実施権者にとって大きな保護となり得る。一方、特許権者(転得者)にとって転得する際のデューデリジェンスの精度を高める必要がある。ただし、文言上「対抗できる」とされているだけで、ライセンスの中身まで、そのまま承継されるのかどうかついて未だ決定していない。
・「冒認出願等に係る特許権の移転請求」では従来、冒認出願、共同出願違反に係る特許権に対し、無効審判により無効にすることが可能であったが、自身の権利にすることができなかった。最判平成13年6月12日「生ゴミ処理装置事件」において移転請求が認められたことを背景に、今改正によって真の権利者への移転が一般化される。これにより真の権利者は、無効にするか移転請求するか選択できる。ただし、移転の具体的な手続は未決定である。真の権利者である旨の判決を経て、名義変更を行うものと考えられる。
・次に、「紛争解決制度等」について説明する。
・「審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止」では従来、裁判所と特許庁との間で特許等の無効事件の所謂キャッチボール現象が生じていたので、これが改められた。今改正により、特許庁で審決予告、訂正請求、弁駁といった手続がすべて行われるようになり、キャッチボール現象がなくなることが期待される。
・「再審の訴えにおける主張の制限」では従来、判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更された場合、民事訴訟法に基づいて再審の訴えが可能であった。その一方で、特許権侵害訴訟等において互いに攻撃防御を尽くす十分な機会と権能があり、再審の訴えを認めることは紛争の単なる蒸し返しである、という指摘もあった。今改正により、紛争の蒸し返しが禁止されるため、特許権侵害訴訟等において互いに攻撃防御を十分に尽くす必要がさらに求められる。
・「無効審判の確定審決の第三者効の廃止」では今改正により、一事不再理の効力が及ぶ範囲を「何人も」から「当事者及び参加人」に限定される。従来、無効審判請求人の巧拙が成立、不成立に影響する場合があり、「何人も」に効力を及ぼすことは不合理だ、という問題があった。なれあい審決が一部にあった、といったことも指摘されている。
・「審決の確定の範囲等に係る規定の整備」では、今改正により訂正審判等について原則、請求項単位で請求でき、請求項単位で確定することになる。実務的なテクニックの話題が多いため、会見の場での詳細説明を省略する。
・3つめの「利便性向上」について説明する。
・「新規性喪失の例外」では従来、この規定の対象となる公開態様が非常に限定されていたので、今改正により大幅に緩和される。これにより、特許庁に指定されていない学会での発表や製品等の販売・配布、記者会見・テレビやラジオへの出演、非公開で説明等した内容が他の媒体を通じて公開等にも適用される。ただし、例外規定であることに変わりがなく、出願してから発表することに留意して頂きたく思う。また、平成24年4月1日施行と考えると、平成23年10月1日からの行為が対象になることにも留意すべきである。
・「その他」、今改正では減免制度の拡充が図られている。資力に乏しい者の要件を緩和し、また、減免期間を1〜10年にする等である。意匠登録料は4年目以降が毎年16900円に引き下げている。すでに施行されているが、審査請求手数料は約25%値下げになる。
・「商標」に関しては、商標権消滅後一年間の商標登録排除規定が廃止される。政府等の博覧会の商標について、特許庁長官による博覧会指定制度も廃止される。商標登録しようとする者の利便性が図られている。



               (石橋良規特許第2委員長による説明)


(2)質疑応答
@今回の改正全般で大企業と中小企業それぞれのインパクトと知財戦略について
(回答)共同出願違反や冒認出願に関する改正がなされており、基本的に中小企業や個人(大学の研究者等)が保護される改正になっている思料する。

A国際調和について
(回答)外国の企業など、世界中でライセンスをという話になると、そもそも欧米等は登録という概念がない。そもそも、日本だけが登録に関してうんぬんとなっているのは、国際的にはおかしいという話になっている。

BM&A戦略上どのような影響がでるのか
(回答)企業を買収する側からすると、(通常実施権の当然対応が認められることから)不透明な要素が出てくることになる。なお、情報の開示等については、そもそも当事者同士できちんと開示を行うものである。

C新規性喪失の例外拡大について、国際出願に関してはあまり意味がないのか。
(回答)国際出願では対抗できない。
3.配布資料の説明(福田伸一 広報センター長)
4.閉会の挨拶(茅野直勝 広報センター第2事業部長)
■配付資料
・平成23年度特許法等改正について
・知的財産支援活動〜弁理士をご活用ください〜
・デザインパテントコンテスト パンフレット
・支援活動だより2011年8月号
 
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