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記者懇談会・議事録(2012年1月)

平成24年度 第8回記者会見報告書

日 時: 平成24年1月30日(月)10:30〜11:30
場 所: 弁理士会館2階 2−AB会議室
テーマ: 日本弁理士会会長の年頭挨拶
日本弁理士会の直近の活動報告
出席者: 日本弁理士会(4名)
会     長       奥山 尚一(スピーカー)
副  会  長       井澤  幹
広報センター センター長  福田 伸一(司会)
広報センター 第2事業部長 茅野 直勝(議事録)

議事

(1)「魅力的な知財制度を構築する」

●特許出願等援助制度とは
・ 日本弁理士会が外部での発信をするための体制作りを最も重視して行ってきた。
・ 現在特許庁では、平成25年の通常国会に意匠法の改正をするという予定である。それに向けた意見の聴衆はすでに始まっており、日本弁理士会ではそれに対応すべくWGを設置した。(なお、組織として意匠委員会があるが、委員会は単年度のものであり、過去からの流れを踏襲し、また継続性を考慮しWGを設置した。)
・ これから⇒出願支援対象は特許に加えて、実用新案権、意匠権にも拡大されることとなった。
・ 日本の特許法改正は大筋では今年の4月に施行される。
・ アメリカの特許法は昨年9月にオバマ大統領が改正法に署名されたが、1月から2月に、その規則案がアメリカの特許庁から発表されている。これは、1つの大きな改正の施行が今年の9月に予定されているもの。こちらに関しても、米国特許庁に意見を述べていく予定である。また、日本弁理士会では米国特許庁の副長官を招きセミナーを3月5日・6日に行う。その際には、米国特許庁の方に加え、昨年末まで特許庁で法改正に携わった方や弁護士も招く。



1.開会挨拶(福田伸一会員)
2.日本弁理士会会長の年頭挨拶・日本弁理士会の直近の活動報告(奥山尚一会員)
●4月からの約10ヵ月を5つの柱にそって活動をしてきた。
(2)「国民のための弁理士制度にする」
・ 平成26年の通常国会に弁理士制度の改正について上程していただく予定。弁理士制度は平成12年の改正から改正を重ね改善されている。その上で、今回の改正は全面的な見直しをしていきたいと考えており、現在その活動をしている。


(3)「委員会と附属機関は、街に出る」
・ 日本弁理士会は強制加入団体であり、全会員が平等であることが一つの建前となっている。そのような背景から、極力会員に対して公平であるべきとの雰囲気があり、これまであまりビジネスの面では触れてこなかったが、現在、弁理士を外部に派遣することに積極的に取り組んでいる。
・ 一例として、知的財産高等裁判所と東京地方裁判所への調査官派遣があり、税関などにも日本弁理士会として積極的に会員を派遣している。
・ また、他団体との協力関係も築いている。



(4)「特許事務所の基盤整備を支援する」
・ 現在、いろいろな側面において努力している。



(5)「会務運営を革新し、会員サービスの向上を図る」
・ 会務運営の革新として、日本弁理士会の会費の値下げを行った。
・ 弁理士数は現在9100人を越えている(スピーカーの合格当時は3000人程度であった)。司法試験においても人数増の問題が生じているが、弁理士数はさらに極端な短期間での人数増である。全会費収入の増大をふまえて、各会員から集める会費の値下げに踏み切った。
・ 「マッチングシステム」を導入することにより、「仕事の引きつぎ」という非常に難解な問題に対応している。具体的には、弁理士業務を引退しようと考えている人に、業務を引き継ぎたい人を紹介するシステムを立ち上げた。現在成約件数は1件のみだが、これから非常にニーズが高まってくると考えている。



●土佐市との知財協力協定締結。
・ これが全国で21番目の協定である。
・ この協定は、知的財産の枠組みのなかで協力していくためのきっかけ作りになっている。
・ また、熊本県とも本年度のはじめに締結している。
・ その他知財の支援の点では、会設事務所を設置している。3年前に青森、昨年は大分にそれぞれ会設事務所を設けた。会設事務所とは、日本弁理士会が事務所を用意し、弁理士がその場で毎日勤務をする形で運営されている。



●日米知財裁判カンファレンス
・ 昨年10月26日・27日に実施した。日本弁理士会も共催団体の1つ。
・ 具体的には、米国連邦巡回区控訴裁判所からレイダー長官をはじめとする6名の裁判官が、日本からは10数名の裁判官(知財高裁・東京地裁・大阪地裁)が集まり、意見交換や模擬裁判が行われた。
・ 裁判官の方がスピーカーということもあり、事前にあまり広報活動ができなかったが、実際にふたをあけると800人を超えるが集まり、その会場は非常に壮観であった。スピーカー個人としては歴史的なイベントであったと感じている。



●パテントコンテスト・デザインパテントコンテストについて
・ 例年開催されている、全国の高校生、高等専門学校生、大学生を対象に、知的財産に対する意識と制度に対する理解の向上を図ることを目的としたコンテスト。パテント(発明)とデザインパテント(意匠)の2部門がある。
・ 支援対象者には弁理士がつき、出願の書類作成を手伝い、マンツーマンで支援する。出願・登録になるかは約束されていないが、厳しい審査を通過した作品であり、多くが権利となることを期待している。
・ その表彰式が1月27日にあった。これから出願等を行うため、その内容を説明することができないことから、ロボットコンテスト等に比べると非常に地味な感じになってしまうことがいたしかたないが残念。
・ 昨年の入賞者である3名の学生の方にプレゼンをしていただいたが、非常に感心する内容であった。既に、地元のメーカーとデザインを採用したいという交渉の段階に入っているものもある。もし機会があれば地方版等でとりあげていただきたい。



●意匠法の改正について
・ 現在、特許庁に要望を提出している。ディスカッションが始まったところであり、産業構造審議会の下部委員会で話し合われている。
・ 1つは意匠のヘーグ条約加盟の議論である。マドリットプロトコル(議定書)において商標が国際登録できるようになっており、似たような制度を意匠でも採用しようとする検討が行われている。
・ 日本は意匠出願の審査をする国であるが、欧州は無審査である。ヘーグ条約は審査を行う制度との整合が良くなかったが、国際的な流れのなかで、この条約に加入していく必要性がでてきている。
・ ヘーグ条約の制度に加盟するのは日本弁理士会としては大賛成である。ただし、条約であるが故の問題が生じる可能性があるため、細かい手続きの面で特許庁等と相談している段階である。
・ 意匠出願が全体的に減る傾向にあり、制度そのものが本当に使い勝手のよいものになっているのかという疑問がある。例えば、諸外国では無審査制度の導入など、使い勝手のよいものもある。よって、その諸外国の制度に倣った制度の導入も特許庁に求めている。



3.質疑応答
●パテントコンテストについて
・ パテントコンテストの学生プレゼンの資料を見てみたいのだが?
 ⇒作成した本人(学生)の許諾を得る必要があるが、公開できるように進めていきたい。取材をしていただけると非常に魅力的な記事になる。非常にご自身の今後やりたいことを伝えられるプレゼンであった。
●意匠法改正について
・ ヘーグ条約に加盟することになり日本の意匠法のどの部分が変わるのか?
 ⇒日本の意匠法に関する影響としては、ヘーグ条約の自己指定というものがあり、基本的には国際的に登録をすると、日本でも登録したのと同じこととなる。現在自己指定を認めるか否かが論点となっている。自己指定を認めることになると、国際登録の効力が日本にも入ってくることになる。日本は審査国なのでそれも審査する予定だが、果たして何語で審査を行うのか。ヘーグ条約は基本的には英語なので、通常であれば英語で出願して、英語で登録という形になるが、日本において英語のものをそのまま英語で登録するのか、あるいは翻訳するのかという問題が生じる。

・ 自己指定とは?
 ⇒ヘーグ条約のもとでの出願をWIPOに英語で行うが、その際に指定する国(ヨーロッパや韓国など)に日本も含めることが出来る制度である。
よって、仮に自己指定を認めると、最初の出願が英語で行われることになる。効力が日本に及ぶことになると、日本国特許庁も英語で手続きを行わなければならず、日本語での国内の意匠出願との整合性などが問題となる。
特許制度にはPCT出願というものがあるが、こちらは日本語か英語か決められるが、ヘーグ条約では完全に英語になってしまう。
なお、今後どうするかは今議論が始まったところである。
・ ヨーロッパで意匠権が活用されているのは無審査だから?
 ⇒大きく3つの理由がある。1つは無審査であること。2つ目は物品をロカルノ分類に基づき日本よりも大概念的に指定できること、3つ目は1つの出願でたくさんの意匠を出願できる。よって、非常に活発に利用されている。さらに、1つの出願をして登録となれば、EU全体でその効力が生じる。総じて出願人に非常に有利なものとなっている。

●意匠関連の訴訟について
・ 無審査の状況下で訴訟がおこった場合は?
 ⇒調査をしなければ、権利の有効性はわからず、当然訴訟となれば調査が前提となる。無効審判制度等によって、第3者が有効性を争うことができる。

・ 例えば、アップルがサムスンを訴えている件は?
 ⇒制度的には有効性を担保する(日本の実用新案の調査報告書)のようなものはない。
●商標法の改正作業について
・ スケジュールはどのようになっているか?
 ⇒平成25年の通常国会に提出と聞いている。先日、産業構造審議会の商標制度小委員会が開催され検討中。今のところ新商標(色・音など)が商標登録の対象となるのではと考えている。
●特許庁のデザイン戦略について
・ デザイン戦略と意匠法改正のつながりは?
 ⇒特許出願の審査の滞荷がずっと重荷になっていたが、「FA11」の目処がたってきており、2013年には実現可能と考えられる。これにより、特許庁としても出願を増やす政策をとることが可能となる。こちらを受け、意匠制度についても同様に積極的な活用をしていかなければならない。使ってもらってこその制度であり、デザインという側面は製品そのものであり(技術は小さなものの結集であることが多いが)、より重要になっていくと考えている。
●補足(福田伸一会員)
・ 日本弁理士会ではクリアファイル等に意匠の底力ロゴを導入し、意匠の活性化を図っており、さらに「意匠活用レシピ」を作成し、意匠のさらなる活用について会員内に周知を図っている。今後記者会見でお渡しできるように調整中。
・ 意匠については、知財戦略本部の中の専門調査会でも話し合われている。


4.配布資料の説明、閉会の挨拶(福田伸一会員)

・ 知的財産フォーラムが広島・石川で、会設事務所設置1周年記念イベントが大分で開催される。
・ 特許出願等援助制度で、新たに実用新案・意匠が対象となっており、既に意匠の援助申請が届いている。アピールしていただければ幸い。
・ 知財高裁大合議について、今後会見のテーマとしていきたい。


 
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