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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.11
「ペコちゃん」

商標登録第4157614号、同第4157615号

 不二家の洋菓子店やレストランの入り口に立つと、ちょっと舌を出したユーモラスな表情の女の子が出迎えてくれる。ご存知!キャラクター人形の「ペコちゃん」である。

 「ポコちゃん」人形と一緒に、今年6月に立体商標登録となり(商標登録第4157614号、同第4157615号)、特許の世界でも話題を呼んだ。

 開発に着手したのは1987年初頭。事前の周到な市場調査結果をもとに使いやすさを第一に考えて開発が進められ、糸の強度と、ようじ部分の曲り具合をポイントに改良が重ねられた。

 「ペコちゃん」が誕生したのは、今からほぼ半世紀前の昭和25(1950)年のことで、生みの親は二代目社長の故藤井誠司さん。当時の日本人のアメリカに対する強い憧れを背景に、活発なアメリカ人少女をイメージして創作した。その愛らしい姿は、お客の評判を呼び、翌26年には水飴・練乳のソフトキャンデー「ミルキー」の商標にも採用され、大成功を収めた。

 「ペコ」のネーミングはウシを表す東北地方の方言「べこ」にちなんだもので、「ミルキー」の発売を機会に商標登録された。

 さらに、27年にはペコちゃんのボーイフレンドの「ポコちゃん」(幼児を表す古語の「ぽこ」にちなむ)もお目見えし、子供たちの人気を一層高めることになった。

 「ペコちゃん」、「ポコちゃん」は、数多い「販促キャラクター」の中でも知名度は抜群。総務部法務・商標担当の柳寺匡さんは「当社の取扱い商品で模倣品が出ることはほとんどありません」と話す。その陰には徹底した商標管理があり、同社の営業と直接関係のない分野での不正使用にも厳しく目を光らせている。また、社内向けにマニュアルを作って、イメージを損なうような使い方を戒めている。立体商標登録もそうした商標管理の一環だ。

 ただ、この人気者を玩具やTシャツなどの商品のキャラクターとして使いたいと希望する業者が多く、商談が相次ぎ舞い込む。しかし、使用許諾は一切していない。同社以外の商品に使われると、「不二家のペコちゃん」のイメージが損なわれるからだ。総務部広報担当の上田博子さんは「ペコちゃんはうちの箱入り娘。交通安全運動の際、貸し出したことがあるぐらいです」と語る。そんな姿勢が子供たちから変わらぬアイドルとして可愛がられる原因となっている。

(取材協力 株式会社不二家 代理人 加藤恒久弁理士)
注 「ペコちゃん」、「ポコちゃん」、「ミルキー」は株式会社不二家の登録商標です。

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