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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.17
「タタミジョーズ」

商標登録第1019643号
登録実用新案第1699106号、同第1834033号、同第1502693〜5号

 日本で初めてティッシュペーパーが生産されたのは1953年のことだ。60年代の半ばに大手メーカーが生産販売を開始してから、ティッシュペーパーは次第に日本人の生活に定着していった。株式会社ネピアの前身である王子テイッシュ販売株式会社が、ティッシュペーパーの生産販売に参入したのは71年である。後発ながら品質の高さによって「ネピア」(登録商標第1019643号)のブランド名は広く知られる存在となり、今日まで多くの消費者に愛されている。

 競争の激しいティッシュペーパー業界の中で、「ネピア」を特に印象づけたのが「タタミジョーズ」というニックネームで呼ばれる、箱の仕組みだった。箱の両サイドに指を押し入れる切り込みを設け、使用後の箱をスムースに畳めるようにしたのである。箱の底には、図入りで上手な畳み方の説明を刷り込んだ。「タタミジョーズは消費者サービスのアイディアとして、箱の印刷会社と共同で考案したものです。箱の形のままでは捨てる時にがさばるので、平らに畳みやすいものにするとよいのではないか、という発想でした。」と、同社マーケティング本部の飯塚正之さんは箱改良の経緯を振り返る。

 ティッシュペーパーは求められる品質をすでにクリアした成熟商品である。ブランド名が定着しているにもかかわらず、消費者の商品選択が価格に大きく影響されることから、付加価値を出す一方でコストを押さえることも求められるという難しさがある。タタミジョーズが優れているのは、生産工程を変えることなく、新しいアイディアを盛り込める点だった。箱のサイドの切り込みは裁断の際に入れられるので、従来の設備で対応できた。

 タタミジョーズは87年2月に公告され、その後実用新案権登録(第1699106号)が成立した。97年にこの権利が消滅するやいなや、他メーカーが同様の切り込みを箱に入れたのは、このアイディアが消費者にアピールするものだったことを証明している。

 株式会社ネピアでは90年2月、箱を開きやすくするミシン目を入れた改良版タタミジョーズでも実用新案権登録(第1834033号)を取得した。つぶした箱は、ティッシュペーパーの取り出し口のビニールフィルムをはずせば、資源回収にも出しやすい。地球環境問題への対応においても、先駆的なアイディアだったといえよう。同社は、箱を底あげできる仕組み(登録実用新案第1502693〜5号)、5個パックによる販売、同じ枚数でも箱の高さを低くし容積を減らすといった技術的な面でも他社をリードして、ティッシュペーパーのトレンドを作ってきた。

 「いかに消費者の目を引き付けるか、より良い商品化を図り、その付加価値を認めてもらうために試行錯誤を続けてきました。実用新案によって、そうした工夫、努力の成果を守っています。」とマーケティング本部の飯塚さんは知的財産権の意義を語る。

(取材協力/株式会社ネピア)

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