ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.24
「寿司職人 助人」
一見、普通のお櫃にしか見えない「寿司職人 助人」、実は握り寿司のシャリ玉をつくるロボットである。直径約45cm、高さ36cmで容量は2升。コンパクトな機械だが、最大1時間に1200個を「握る」能力を持つ。熟練した寿司職人でも1時間に握れるのは300個ほどだそうだ。 一定の重量、大きさのシャリ玉ができるだけでなく、その握り具合は10年の経験を積んだ寿司職人に匹敵するというから、まさに「助人」というにふさわしい。 握り具合の秘密は、独自の構造にある。寿司飯を、スクリューコンベアで下部から上部へ押上ながら圧縮し、そのコンベアの終端に設けた成形孔より断面が小判形の棒状に押し出し、これを所定の厚さで横方向に次々とカットしてシャリ玉を連続的に製造するものである。 この構造は型で成形するものとは全く違い、コンベアで移送される間に空気を抱き込んだやわらかな食感を実現している。 1個の重量は16gから30gまで調節でき、握りのやわらかさも10段階の設定ができる。また、握り寿司に最適の温度と湿度を保ち、分解洗浄も簡単、家庭用電源でも使えるなども、さまざまな工夫が盛り込まれており、寿司職人がすぐにでも使用できるすぐれ物だ。そして、なんといってもユニークなのは、お櫃型である点だ。 |
スズモ(鈴茂器工(株))は米飯加工ロボット、食品加工機械、自動包装機械などを手がけるメーカーで、特に寿司の製造機械では20年にわたる実績がある。のり巻、いなり寿司、握り寿司、手巻き寿司、軍艦巻きと、スズモの機械はあらゆるタイプの寿司の大量生産を可能にしてきた。
従来の製品の外観はいかにも機械で、場所もとるために、低価格で人気の回転寿司店でも、お客の目に触れる場所に設置することを避けてきた。ましてや、寿司職人がお客の注文に応じて握る「立ち寿司」では、機械への抵抗感は強い。しかし、その一方では、後継者や職人の確保が困難な状況もあった。寿司店のほうにも、店内に置いて違和感がなく、納得のいく握り寿司のできる機械へのニーズは高まっていた。そうした要望に応えたのが「寿司職人助人」だ。企画から、機械の小型化を実現し、デザインを決め、試作品をモニターに出し、改良を加えて発売するまでに、足かけ5年かかった。
「当社の長年にわたる技術的蓄積をすべて凝縮したものです。これまでの機械より1ランクも2ランクも上の寿司が握れます」と自信をもって勧めるのは、営業本部取締役の石坂英雄さん。1台126万円、リースならば1日840円という価格も魅力のようだ。1999年秋の発売以来、順調な売れ行きをみせ、立ち寿司店でも導入が進んでいるという。まだお客に機械への抵抗があるため、導入を公表するところは少ないが、隠れたヒットとなっている。
スズモの製品はすべて自社で開発されたものだ。それだけに、特許をはじめとする知的財産権によって、オリジナル製品を守る意識は高い。「寿司職人 助人」についても特許を取得し、また「寿司職人 助っ人」として登録商標も得ている。
(取材協力 鈴茂器工株式会社)