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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.29
「LOGOS(ロゴス)」

商標登録第1679350号

 大きなグッドウイル(業務上の信用を含む顧客吸引力)を獲得した商標は、社名をも変更させる。アウトドア用品の老舗ブランド「LOGOS(ロゴス)」は、このような商標の典型である。

 現在の「(株)ロゴスコーポレーション」は、1997年まで「大三商事(株)」という社名であった。そのことを知っているアウトドア愛好者はほとんどいない。

 大三商事(株)」は、1920年代に船舶用品の問屋として創業され、1950年代には、水産業従事者や建設業従事者が屋外作業で着用する業務用の合羽(カッパ)を製造販売する会社として知られるようになった。そして、いまだにその合羽を製造販売しているそうである。すなわち、文字通りの「アウトドア用品」を、50年も前から製造販売し続けている老舗である。

 商標「ロゴス」は、1985年頃から、合羽の技術を用いて開発したゴムボートに使用され始めた。当時は、商標「ロゴス」にあまり期待していなかったそうである。

 ところが、アウトドアブームに乗って、あれよあれよという間にグッドウイルを獲得し、社名まで「ロゴスコーポレーション」に変更せざるをえなくなってしまった。商標「ロゴス」が社名であると誤解されるほど浸透した後に社名を変更したため、社名変更に伴う費用がほとんどかからなかったそうである。

 商標は、商品に反復使用されることによってグッドウイルを獲得する。すなわち、その商標が付された商品が信頼に値する商品であった場合、顧客は満足して、再びその商標が付された商品を購買する。この繰り返しによってグッドウイルが商標に蓄積されていく。そして、社名まで変更させる大きな力をつけるのである。

 グッドウイルを蓄積するには、商標が商標法等によって保護される必要がある。もし、商標が保護されない場合、グッドウイルを獲得した商標を無断で使用する者が現れて商品が混同し、それまでに獲得したグッドウイルが消滅してしまう。

 一方、商標権者は、信頼に値する商品を提供し続けなければならない。もし、問題のある商品でも販売しようものなら、グッドウイルは一瞬のうちに消え去り、業務上の信用も地に落ちる。昨今、問題のある商品を販売することにより、有名ブランドのグッドウイルが消え去ることも多い。

 商標「ロゴス」が、社名を変更させるほどの大きなグッドウイルを獲得できた裏には、商標権による保護はもちろんのこと、信頼に値する商品を提供し続けた(株)ロゴスコーポレーション(大三商事(株))のたゆまぬ努力があったものと考えるべきである。

(取材協力 (株)ロゴスコーポレーション 大西正夫弁理士)

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