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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.30
「ループタイ」

特許第2138543号、商標登録第2554675号

 最近、コンビニやスーパーでは、商品を平面展示ではなく、吊り下げ展示が主流である。消費者の心理として、商品が平面的に並べられているよりも、吊り下げられているほうが、商品が目の高さにあり、また手に取りやすいからだ。実際、販売効率は平面展示よりも吊り下げ展示のほうが約4倍だそうである。

 コマ巻のミシン糸も例外ではなく、大手繊維メーカではスーパーから吊り下げ展示を求められ立ち往生していた。そこで、包装資材に実績があり、種々の発明考案で新製品をものにしてきた石崎昭氏(石崎資材株式会社社長)に話が持ち込まれたのである。

 まず、考えられるのは、写真1にあるように、吊り下げ用のタグのついた袋に糸を入れることである。しかし、これでは両脇につのが出っ張り、不格好である。

 そこで、石崎氏は、スマートに見えるようつのを切っていった(写真2、3)。切っていくうちに袋の両脇が破れてコマがはみ出してしまった。破れたところで終わってしまうのが人情であるが、石崎氏は、破れても落ちないで止まっているのを見て、「これはおもしろいものができたぞ」と納得する。こうしてできたのが、写真4のループタイである。

 このループタイは、単一の幅のもので色々な大きさの商品に巻き付け、タグに商品名や製造者、説明文などを印刷して表示帯として使用できる。この特許に関しては、旧制度での異議申立てを受けて審査に長期間を要したが、公告されたままの権利範囲で登録された。現在では石崎資材株式会社の主力製品であり、特許権に護られて他社の参入を許さず、独占状態が続いている。また、「ループタイ」は登録商標でもある。袋を音読みすると「タイ」であり、石崎氏によると、「ループ状の袋」の意味を込めての命名だそうである。

(取材協力/石崎資材株式会社社長 石崎昭氏)

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