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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.33
「破れんゾウ」

特許公開番号 特開2003-206002、商標登録第4684067号

 近年、カラスの増加によるさまざまな被害が社会問題となっている。カラスは有害鳥獣として狩猟鳥に指定されているが、罠を見破るほど賢い鳥で、捕獲は難しい。都市のカラス対策で最も有効なのは、餌である生ごみを食べられないようにすることだ。

 プラスチック樹脂メーカーのミツギロンが開発したごみ袋「破れんゾウ」は、カラスが嫌う天然唐辛子濃縮液カプサイシンをラミコートした、強度に優れた製品である。一般のごみ袋は筒状にフイルムをつくりながら、熱着してカットするのに対し、「破れんゾウ」はポリエチレン樹脂の極薄フイルムをカットした延伸ヤーンを筒状に編み、カプサイシンをラミコート、底を縫製して袋にする。さらにカプサイシンが利用者の肌に触れないように、裏返してラミコート面を内側にする。

 カラスは嗅覚が鈍い反面、視覚と味覚は人間の3倍鋭いという。「破れんゾウ」は、カラスが懸命につついても小さな穴しか開けられない上に、カプサイシンで激辛の味付けが施されているため、中の生ごみを食べられない。

 その効果は、カラス博士として知られる宇都宮大学農学部・杉田昭栄教授の実験でも認められ、多くのマスコミで取りあげられた。カラス撃退の決定打として、対策に頭を悩ます自治体からの問い合わせも殺到したという。

 この製品は「動物忌避機能付きごみ袋」として特許が出願されている。カラスだけでなくネズミや猫の被害にも有効で、種籾などの保存用の袋として、農業関係者にも注目されている。またその技術とアイディアに着目した自治体から、在宅介護用ゴミ袋の開発の引き合いもあった。

 「破れんゾウ」の開発は「新しい技術というより、知恵です」と言う同社社長の森本重男氏は「物づくりは遊び心でやるほうが面白い。発明者はみんな、特許を申請した時は爆発的に売れるという夢も抱いています」と発明の醍醐味を語る。ミツギロンでは、樹脂加工のさまざまな技術を利用して、風呂清掃ブーツなどユニークなヒット商品を生みだしてきた。

 こうした開発・成果のほとんどについて、特許をはじめとする知的財産権を申請・取得している。「中小企業にとって、知的財産権は会社を守るために非常に重要なもの」と森本氏が知財を重視する背景には、製造コストの低い海外製品による価格破壊の脅威もある。複雑な製造工程で、一般のゴミ袋より単価の高い「破れんゾウ」は、知的財産権によって市場での優位性を確保している。

(取材協力 株式会社ミツギロン)

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