ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.35
「ワコールCW-X」
意匠登録第1021887号、商標登録第4640682号
ワコールのCW-Xは、スポーツ時のコンディションを整えるために開発された高機能ウェアのブランドである。1991年に最初のモデルを発売し、コンディショニングウェアという新しい商品ジャンルを確立した。米大リーグで活躍するイチロー選手をはじめとする、さまざまなジャンルのトップアスリートをユーザーとしていることでも知られる。 最初のアイテムの一つであるHZO-579は、このブランドの核を成すロングセラーとなっている。その特徴は、膝関節の動きをサポートすることに重点をおいた機能だ。開発のきっかけは、一人の女性社員がスキーで膝を痛め、テーピングの効果を知ったことだった。 関節の負担を軽減するテーピングには専門知識が必要なことから、誰でもテーピングの効果を得られるウェアをつくれないか、という発想のもと商品が生まれた。 テーピングは、粘着性のあるテープをポイントに貼り付ける。衣料でこの効果を出すためには、着用した際にテーピング効果を得るサポート部分にテープに相当する素材が確実にフィットし、適切な圧をかけ、動いても着崩れないことが条件となる。 商品の構成には、当然ながら、テーピング効果を出すラインのカッティング位置と適切な圧条件は何なのか、更にはストレッチ素材の縫製には苦労したという。ここで活かされたのが、ガードルのパターン設計技術と縫製技術だった。 |
ワコールにはこれら技術に加えて、身体に関するデータの蓄積もあった。1964年に設立した人間科学研究所には独自で計測収集した女性35000人(男性5000人程度)の身体データがあり、これを基に各部位の高さと周径をサイズごとに最適な寸法基準を確定し、機能の確保に役立てている。
「テーピング効果を確認するには試作品を着用した実験を行い、データを分析し、機能をデータで実証するというくり返しで開発は大変でした。」とワコール・ウエルネス事業部の小山由朗CW-Xチームマネージャーは語る。CW-Xは、下着メーカーだからこそ開発できた新しい機能を備えた商品ジャンルだったのである。
ワコールは技術とデータの蓄積を基に新たなる発想から生まれた製品を知的財産権で守るために、特許、意匠、商標を駆使している。発売当初からCW-Xは世界に通用する商材であるという認識を持ち、欧米をはじめとする各国で知的財産権を取得し、他社の追随を許さぬ体制も固めた。CW-Xブランドの売上は91年度下期の約3600万円に対し、04年度上期は約24億円に伸びている。
(取材協力 株式会社ワコール)