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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.36
水産品として初めての登録商標「関さば 関あじ」

商標登録 第4696358号 第3256907号 第3256908号

 鮮魚のブランドとして広く知られる「関さば」「関あじ」は、豊後水道に面した大分県佐賀関町で一本釣りで獲られる。佐賀関沖は瀬戸内海と太平洋の接点になっており、潮流が速く、餌となる生物も豊富で、マダイやブリの回遊路にもあたる。この豊かな漁場で獲れる「関もの」は、以前から味のよさで定評があったが、全国的な知名度は低かった。

 ブランド化の第一歩は、1988年に佐賀関漁業協同組合(現・大分県漁業協同組合佐賀関支店)が買い取販売事業を始めたことだった。既存の仲卸4社に漁協が加わり、漁師から直接買い付けることで競争原理を働かせ、組合員の収入安定をはかるのが目的だった。買った魚は売らなければならない。一村一品運動を展開する大分県の後押しもあり、漁協は県、町と一体になって販促キャンペーンを県外で展開した。並行して「関さば」「関あじ」の特色を科学的に分析した結果、いずれも佐賀関沖だけに住む独立した群とみられ、漁場の地形などから年間を通じて脂肪量の変化が少ないなどがわかった。特に「関さば」は鮮度が落ちにくく、刺身がもっともおいしいという、ほかに例のないサバだ。

 漁協のキャンペーンはバブル期のグルメブームに乗り、マスコミでもしばしば取りあげられて「関さば」「関あじ」は高級ブランドとして認知されるようになった。同時に、偽物も登場する。店頭で見分けがつかないという声が聞かれ、中には「関さば」かどうか鑑定してほしいと、冷蔵宅配便が送られてきたこともあったそうだ。消費者の信用を得るためにマークをつけ、水産品として初めて、1996年に登録となった。

 「大分県発明協会で商標登録について教えてもらって、出願しました。初めてのことで、特許庁とのやりとりに手間どったのですが、登録できた後に特許庁の方がわざわざ見えて、漁業関係者の意識改革を促したと褒めていただきました」と漁協佐賀関支店長の岡本喜七郎さんは言う。

 ブランドを維持するためには、品質の確保が重要である。「関さば」「関あじ」の要件には一本釣り、活けじめなどがあり、身を傷めずに鮮度を保つために細心の注意が払われている。尾につける商標タグも、身を傷つけないように考案されたものだ。ブランドが確立したことで、サバの浜値は十倍に、以前から高値で取り引きされていたアジも倍になった。漁協では、このブランド力を活かして、注文販売にも力を入れている。

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