ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.37
北海道を代表する銘菓「白い恋人」
「白い恋人」は、北海道の代表的なおみやげとして日本全国はもとより、東南アジアでもその名を知られている。洋生菓子やチョコレートのメーカーである石屋製菓で「白い恋人」が生まれたのは、1976年のことだ。ホワイトチョコレートが注目され始めた頃で、さくさくしたクッキー(ラングドシャー)でホワイトチョコレートをはさむアイディアは、画期的なものだった。
このお菓子にふさわしい、雪や北海道を連想させるネーミングに、スタッフは頭を悩ませたという。北国、冬将軍、ツンドラ、ブリザードといった名前も提案されたそうだ。創業者であり先代の社長である石水幸安氏が、雪の降り始めた外から帰ってきてふと口にした「白い恋人たちが降ってきたよ」という一言が決め手となった。
『白い恋人たち』は1968年に開催されたグルノーブル冬季オリンピックの記録映画の邦題である。そのテーマソングもヒットしたことから、石水氏もこのタイトルを記憶していたのだろうという。
「白い恋人」は、それまでに例のないタイプのおしゃれなお菓子で、ロマンチックなネーミングも手伝って、瞬く間に人気商品となった。発売した1976年に500万枚が売れ、知名度が高くなるにつれて売上も伸び、2003年の年間販売数は2億枚に達している。またチョコレートドリンクなど「白い恋人」シリーズの商品も展開しており、石屋製菓の中心を成す商品群のひとつである。
1986年にはスイス・モンドセレクションのゴールドメダルを受賞するなど、品質の点でも高く評価されていることから、さまざまな類似商品が出ている。また「白い恋人」に似たネーミングも続々と登場した。現社長の石水勲氏は「あまりにもまぎらわしいネーミングは、使用をとりやめていただきました。登録商標が製品を守ってくれます」という。同社はすべての製品について商標を登録しており、「白い恋人」については台湾、香港などでも登録済みだ。北海道旅行の人気が高い東南アジアで、コピー商品を日本製として販売されるのを防ぐためである。
石屋製菓の製品は、北海道を誇りとし、北海道の旅情とともに楽しんでいただきたいとのことから、北海道限定販売である。ところが最近、「白い恋人」が香港などで売られていることがわかった。北海道で購入したものを、高い値段で売っているらしい。「上代で買われるのには文句のつけようがなくて」と、石水社長は対応に苦慮している。ヒット商品を巡る攻防は、終わりがないのだろうか。
(取材協力 石屋製菓)