ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.39
あらゆる毛髪の悩みを解決できる「ヘアコンタクト」
米国特許 6,446,634号 商標登録 第4716039号
従来のカツラとも、育毛・増毛法とも全く異なるヘアコンタクトは、2003年の発売当初から大きな反響をよび、生産が追いつかない状態が続いている。人工毛髪を植え付けた特殊なフィルムを、皮膚に張り付けるという発想が画期的であるだけでなく、機械生産を実現した点も、この業界の常識を破るものだった。
開発したプロピアの保知宏社長はカツラ・育毛業界に入って以来、消費者の側に立った商品がないと感じていた。かつて、眼鏡の不便さや不格好さをコンタクトレンズが変えたように、カツラに代わる商品をつくりたいという保知さんの夢はベルやエジソンといった大発明家たちが発明の原動力とした人々への「愛」であった。
開発に着手したのは1997年。まず製造機械の開発を既知の新科学開発研究所に依頼した。さらにフィルムと張り付けるための吸着剤は日東電工が、人工毛髪は帝人が引き受けることに決まった。ベンチャー企業であるプロピアの、ゼロから取り組む商品開発に大手企業や弁理士が参画したのは、保知さんの熱い「思い」に共感したからだ。薄毛で悩んでいる人だけでなく、病気や怪我で頭髪を失った人たちに、使い勝手のよい、安価な商品を提供したいという、強い思い。
しかし、開発は困難を極めた。直径0.08mmのポリエステル製人工毛髪を機械で植毛するためには、染色後の絡み合った状態をほぐして、ボビンに巻き付けなければならない。一方、透湿性を備えた多孔質の医療用フィルムを改良して、皮膚の角質層と同じ0.03mmまで薄くするのに成功したが、機械植毛で破けてしまう。針一本から特殊な技術で開発した製造装置は、フィルムと人工毛髪の開発と併行して、改良を重ねる必要があった。0.03mmのフイルムで試作品ができるまでに、4年の歳月を要したという。
さらに従来製品のユーザーの協力でテストを重ねて吸着剤、専用の剥離剤を完成させ、2年後、発売にこぎつけた。テレビCMを打った翌日から、電話がパンクするほどの問い合わせがあったそうだ。マスコミにも頻繁に取りあげられ、ユーザーのさまざまな要望に対応できるヘアコンタクトの特性が広く知られるようになった。これによって、異業種分野からも注文が来るほか、用途も広がっている。
「知的財産権は技術を守ると同時に、企業コンセプトを守るもの。知的財産権を得たお返しとして、社会貢献したい」と保知さんはいう。ヘアコンタクトは日々進化し、製品改良が続いている。現状の製品は、数十万円のカツラと同じサイズが1万5千円ほどで、約二週間使える。さらに量産体制を整えることで、低価格化を図るという。
(「ヘアコンタクト」は株式会社プロピアの登録商標です)