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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.41
機能を重視して生まれた「ユニ・チャーム超立体マスク」

意匠登録 第0972250号 商標登録 第4692567号 ほか

 「ユニ・チャーム超立体マスク」は、マスクの概念を一変させた。従来のマスクが平面であるのに対し、立体構造になっているのが最大の特徴だ。これにより、顔にぴったりフィットするだけでなく、マスクと口の間に空間が生まれ、息苦しさがない。

 「ユニ・チャーム超立体マスク」が誕生した背景には、花粉症に苦しむ人たちが年々増えていたことがある。同社は、すでに医療向けに立体構造のマスクを製造していた。医療用マスクに求められる密閉性、快適性を実現する形に行き着くまでに、およそ千枚の試作品がつくられたそうだ。

 密閉性は花粉症対策にうってつけだが、形が消費者に受け入れられないのではないかという声が、社内にもあったという。しかし、花粉用マスクは機能を視すべきであるということで、市販に踏み切った。

 構造については医療用マスクの技術を転用し、カップ部分には花粉を通さない高密度の不織布を採用、耳かけ部分には長時間かけていても痛くならない素材を選んだ。

 2003年1月に発売した当初は、社員が通勤時につけて、立体的な形の浸透を図った。さらに花粉症に悩んできた雑誌編集者の目にとまるなど、マスコミで紹介されて機能も認知されるようになった。特に女性には、花粉のシャットアウト効果でくしゃみなどによる化粧崩れの心配がない、口紅がつかないなどの点で、広く支持された。

 同年10月には、ウィルスを通さない高いバリア性と、のどの保湿効果を持つ、かぜ用を発売した。花粉用はカップが一層であるのに対し、かぜ用は三層になっている。「用途が違えば、求められる機能も違います。花粉用とかぜ用をそれぞれに開発した点も、お客様の快適な生活をお手伝いするライフサポートインダストリーとしての当社のこだわりです」(同社広報室・服部聖子さん)。

 消費者の使い勝手のよさを重視して、それぞれ3サイズを用意し、05年には耳かけ部分の伸縮性をアップして使い心地のよさも改良している。発売後にはSARS、鳥インフルエンザなど新たな感染症が国際的な問題になり、マスクの予防効果が見直されたことで、売上は大きく伸びた。また05年は花粉の大量飛散で、マスク市場は前年度比70%アップの110億円を記録した。

 「ユニ・チャーム超立体マスク」は日経BPデザイン賞2003のプロダクト部門銀賞を受賞した。マスクに革命をもたらした製品だけに、類似品も次々に出ている。国内の競合品に対してだけでなく、輸入品についても不正競争防止法や水際措置により、この商品を守っている。

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