ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.42
水溶化技術によって用途を拡大した「コエンザイムQ10」
抗酸化作用、エネルギー産生の促進作用などが注目されているコエンザイムQ10(CoQ10)は、心疾患の医薬品原料として30年近い歴史がある。1957年にウシの心臓から発見されて以来、世界中の医薬品メーカーなどがその製造技術開発に取り組んだ中で、いち早く67年に量産化に成功したのが日清製粉の医薬部門(現・日清ファルマ)だった。その背景には、長年蓄積してきたビタミンB6などのビタミン研究と、ビタミンE、K1の製造技術がある。CoQ10はこれらのビタミンと構造が似ているそうだ。
74年からの供給を始めた。それが一息つくと、主にアメリカで健康食品分野での伸びが顕著になったことから、輸出を開始。さらに、同社は用途拡大を目的に水溶化検討の開発に着手した。脂溶性のCoQ10を水溶化できれば、さまざまな食品に使用が可能になる。
日本では2001年にCoQ10が食品分野に利用できるようになり、同社は原料供給だけでなく、サプリメントを製造、通信販売を始めた。この翌年に水溶化技術を確立、食品素材としての発売を開始した。食品分野でCoQ10はまったく無名で、しかも食品の場合は、薬事法の関係で健康効果を自らアピールできない。一挙にブレークした契機となったのは、その健康効果をクローズアップしたテレビ番組だった。
「水溶化技術の確立まで三年ほどかかりました。お客様には、用途が広がっただけでなく、吸収力も向上することが可能となり、いろいろな商品を提供できることが可能となるためメリットがあると思います。」と開発者である同社健康科学研究所の峯村剛さんは言う。
同社は04年からドラッグストアなどの店舗販売に進出し、水溶化CoQ10の特性を活かした顆粒状パウダー、ドリンク、ゼリーなどの自社製品を展開している。また、素材としてもヨーグルト、菓子類、調味料などの食品から、化粧品にも用途が拡大している。
食品分野に進出するに当たって、国内外のCoQ10に関する特許を調査したところ、食品特許は少なかったという。この結果から、同社はCoQ10のサプリメントなど健康食品に関して安定性・吸収性・効果改善技術のさまざまな特許を出願して、この技術による優位性を確保する万全の態勢を整えたという。水溶化CoQ10に関しては、親会社である株式会社日清製粉グループ本社にて「アクアQ10」の名称で商標も取得している。(第4828452号、第4880268号)
今後、知的財産権で守られた水溶化技術を強化して、世界におけるCoQ10のパイオニアとしての地位をさらに高めていく方針だ。