ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.44
ロゴで認知度を高め、信用を築いた「タイムズ」
駐車場関連機器を扱っていたパーク24株式会社が、無人時間貸し駐車場の運用を開始したのは、1991年のこと。月極駐車場か有人の時間貸し駐車場しかなかった当時、24時間営業の駐車場は画期的なシステムだった。
さらに、「タイムズ」という名称を採用、加えて周知を図るためにロゴをつくることになった。24時間、時間貸しという特長が一目でわかるデザインにしたいと、さまざまな案が検討された。採用されたロゴには、駐車場を示すPの文字も、料金も入っていない。よく見ると、Tの横棒の下側は、車のボディラインを描いている。看板は個性的な平行四辺形にして、目立つ色を使った。
このロゴを入れた横180cm、縦71cmの大きな看板を設置するや、認知度は急速に高まった。同社は広告宣伝を一切していないが、ユーザーであるドライバーの認知度は90%を超えているという。
ドライバーの目印となるロゴは、看板と同じ平行四辺形に入ったデザインでも商標登録された。
「タイムズ」事業は、土地のオーナーに一定額の賃貸料を支払い、設備の設置、管理、運営は同社が行うものだ。土地オーナーの側には、経済的負担はない。「話がうますぎると、最初は信用してもらえませんでした」というのは、同社経営企画部広報担当の斉藤智之さん。ロゴを掲げたことで、ユーザーだけでなく、土地オーナーにも知られるようになり、信用に結びついたという。
「タイムズ」は全国に広がり、1995年に1万台を突破して以降、加速度的に拡大し、2006年9月末には6076件、約16万台に成長した。事業内容も、店舗が所
有する来客用駐車場の運営管理、大型駐車場ビルの開設など、幅広い展開をみせている。さらに、2006年には韓国、台湾にも出店した。
全国の駐車場需要は1100万台であるのに対し、現在ある駐車場は半分以下の500万台。渋滞解消、事故防止などのためにも、まだ駐車場を増やす必要がある。近年は、再開発事業でも駐車場設置は不可欠になっている。ここでも「タイムズ」のノウハウが求められ、同社は再開発エリアの駐車場サービスシステムの構築も手がけている。
「駐車場事業は参入障壁が低いだけに、ロゴで認知していただき、信用を築いてきた効果は大きい」と斉藤さんはいう。事業の拡大、成長に貢献した「タイムズ」の商標は、いまや時間貸し駐車場の代名詞といってもよい。社名よりよく知られているロゴは、同社社員の名刺にも入れられている。