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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.49
Suica対応コインロッカー「AIT」

商標登録第4971442号、意匠登録第1219066号 ほか

 駅などに設置されているコインロッカーを、電子錠を利用した集中制御型に進化させたのが、株式会社アルファのAIT(アルファ インテリジェント ターミナルロッカー)である。現金でも利用できるが、最大のポイントは電子マネーEdy・Suica・PASMO・PiTaPaなどICカード型乗車券が決済だけでなく、鍵としても機能することだ。

 同社は1964年、日本で初めてコインロッカーを製造販売した。以来、メーターや表示部分は改良されたが、ロッカー一つずつにコインを入れ、附属の鍵で開閉する仕組みは変わっていない。他方では、マンション向けの宅配ボックスで、電子錠により操作部分を一カ所に集約するシステムを構築していた。

 ICカードが普及し、電子マネー化の方向が見え始めた2003年、宅配ボックスで得たノウハウでコインロッカーを一新する取り組みが始まった。不特定多数の利用者を対象とする製品だけに、いかにわかりやすく簡便な操作性を持たせるかに、一番苦心したという。

 試作機ができた2003年12月、Suicaとの連携の提案をさせて頂いた。JR各駅にはコインロッカーが設置されており、新しいロッカーの普及にはSuica対応が効果的との判断があった。2005年2月、Suicaの電子マネー化を大々的にアピールした上野駅で、Suica対応型AITもデビューを果たした。同時に複数の利用者が来た場合にどうなるか、使い方がすぐに理解されるか気がかりで、運用開始から1週間ほど、同社設計部次長の吉沢猛さんは上野駅でAITにつききりだったそうだ。

 運用開始から3ヵ月後、AITのSuica利用率は20%と、同時に設置された自動販売機などよりも高く、ロッカー稼働率も約80%とのデータが出て、強い手応えを得たという。その結果、同年6月に東京、品川、池袋各駅に相次いでAITが導入される運びとなった。

 新しさをアピールし、また洗練された雰囲気で利用率を高める目的でも、AITではデザイン性が重視されている。全体、部分の意匠登録に加え、操作部分の液晶表示を業界で初めて意匠登録をしている。「独自のアイディアを守るために知財は重要です。特にロッカーはエンドユーザーに直接アピールでき、企画から製造まで一環してコントロールできる製品なので、商標、意匠を大切にしています」と経営企画部法規課主管の黒澤達哉さんは語る。

 関西などのICカード型乗車券に対応する機種も順次投入し、AITは全国で設置台数を伸ばしている。

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