ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.51
半導体の高生産性を実現する「CLEAN TRACK LITHIUS Pro-i」
半導体は、コンピュータや携帯電話といった情報通信機器をはじめ、家電など身近な製品の多くに使用されています。現代社会は、半導体およびその製造技術におけるたゆまざる研究開発の恩恵を受けているのです。
半導体製造は、直径200mmのシリコンウェーハに対して生産コストを約30%削減できる300mmウェーハへの移行が進んでいます。高性能化を図る構成回路の微細化も加速しており、2006年に65nmプロセスの量産が本格化し、07年には45nmプロセスに移行しました。このため、写真と同様の技術でウェーハに回路を投影して焼きつけ、IC回路を形成する光学リソグラフィ技術も、従来の主流技術から液浸リソグラフィに向っています。
2007年に市場に投入された東京エレクトロン株式会社の CLEANTRACK LITHIUS ProおよびCLEAN TRACK LITHIUS Pro -iは、フォトリソグラフィプロセスにおいて感光剤の塗布と現像を行う装置で、32nmノード以細までをターゲットとした次世代300mmウエーハプロセスに対応する機能を備えています。また、この装置は、斬新なプロセスとモジュールを適用することで、最先端の液浸リソグラフィプロセスにも対応可能です。
開発に当たっては、同社のレジスト塗布現像装置で培った高い技術力をもとに、飛躍的な高生産性と高信頼性の実現を目指しました。装置面積の縮小化を図りつつ、処理能力を高めるという矛盾した課題を克服するのが困難でしたが、まず設置面積を従来比25%削減することに成功し、次いで、ウェーハを搬送するシステム開発によってスループットを30%高め、180枚/時間の高い生産性を実現しました。露光機を含めた装置性能の向上に加え、薬液コストの大幅削減などによって運用コストを低減した点でも革新的であるといえます。
技術専門商社として1963年に創業した同社は、その後、半導体製造装置の開発・製造に軸足を移しました。その当初、競合会社の多くは米国企業でした。競合企業が保有する米国特許を徹底的に分析し、開発・設計部門にフィードバックしてきた結果、半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置のトップメーカーに成長し、2007年の半導体製造装置メーカーの売上高ランキングでは、日本1位、世界2位の実績を誇っています。
日本および米国で積極的に特許出願してきたほか、近年では韓国、中国などで競合会社が急増しており、米国以外での知的財産権の取得も進めています。海外での知財権取得に注力し、知財戦略、技術戦略、製品戦略の三位一体の経営を実践する同社は、2008年度の特許戦略優良企業として経済産業大臣より表彰されました。