●国際活動委員会からのお知らせ

 

〈英国〉

 

裁判所が意匠の事件では専門家の意見を必要としないとした

 

〔事件の概要〕 

 英国特許裁判(EnglishPatentsCourt)での侵害事件(ThermoslimitedvAladdinSalesandMarketingLimited)において、Thermosがその2カップ真空フラスコの意匠権をAladdinが侵害したと訴えたのに対し、Aladdinが侵害を否定し、かつ意匠権の無効、即ち、本意匠は新規性がないばかりか、機能的な要素(例えば、Iビーム型ハンドル)を含むと主張した。これに対しJacob判事はAladdinの侵害を認めた。

 その際、同判事はこの侵害及び無効の判断のための意匠の対比について、証人の意見は必要なく、専ら裁判所の判断で足りるとして、証人申請を退け、かつ意匠事件における専門家の意見の意義について意見を付している。

 

〔判事の意見の内容〕

 Jakob判事によれば、最高裁判所の旧規則の故に、これまで双方当事者の意向にもとづく専門家の意見が多く提出されてきたが、それは本件のような技術事項では有用性がない。最高裁判所の新規則によれば、専門家の必要性はもっと慎重に検討されるべきである。また、専門家を必要とする場合も、裁判所は何を専門家に求めるかを明示すべきである。大部分の意匠は消費者に向けられた物品であるから、通常の人を基準とするものであり、判事が証拠にもとづいて判断できるものである。但し、すべての専門家の意見が無用というわけではない。

 同判事は提出される証拠の量が多すぎても意味がないと注文を付けている。また、本件のような意匠の案件では、i)登録意匠、ii)侵害したとされる意匠、及びiii)従来意匠だけが重要であり、ほかの事項は二次的なものであるとして当事者間で同意してこれらだけにもとづいて判断を求めることを薦めている。