●国際活動委員会からのお知らせ

〈米国〉

ミーンズ・プラス・ファンクションクレームは、個別の択一的構造を包含する

 米国連邦巡回控訴裁判において、ミーンズ・プラス・ファンクションクレームの構成要素が、クレームに規定された機能を実行するために、明細書に記載さ

れている個々の構造を包含すると読むことが妥当であるとされた(Ishida Co. v. Taylor, Fed. Cir., No. 99-1537, 7/20/00)。

 連邦巡回裁判所は、実施例のすべての包含する単一のクレーム構造を、地方裁判所が見つけるべきであるとの権利者(Taylor)の提案を拒絶した。発明の

すべての図示された実施例を包含する単一クレーム構造はあまりにも広義であり、当業者がクレームの機能の限界(limit)を知ることを妨げ、クレームの本来の機能を無効にしてしまう、と裁判所は述べている。このように判断し、Ishidaの実施はTaylorの特許を侵害していない、と判断した。

 Taylorは、食品の包装機に関する彼の特許(4,663,917号)をIshida等が侵害していると主張した。カリフォルニア州北部地区アメリカ地方裁判所の

Jeremy Fogei裁判官は、特許のクレーム1の一つの段落は、35U.S.C.S112第6段落のもとでミーンズ条項として判断すべきと解釈した。請求された機能を

stripping及びsealing」と確認した上で、裁判所はこの機能を実行するための構造の異なる二つの実施例に留意した。裁判所は、二つの実施例をカバーするための単一クレームを引き出すよりも、各実施例それぞれの構造が、当該機能のための手段であると判断した。地方裁判所は、Ishidaの装置はTaylor特許を侵害していないと認めた。そこで、Taylorは控訴し、地方裁判所は明細書に示された全実施例を包含する単一のクレーム構造を引き出すことを検討すべきだったと主張した。地方裁判所のアプローチは間違っていないと判断した連邦巡回裁判所のRandall Rader裁判官は、次の様に説明する。

 「図示された実施例をすべて包含する単一クレーム構造は、『カムトラック』のような基本的な構成要素を伴うあるいは伴わない両システムを記述するには、広義にしなければならない。そうすると、クレームの機能を無にするかもしれない。なぜなら、例えば、特許請求の範囲を回避すべく設計変更しようとする当業者は、単一クレームの解釈が『カムトラック』の含まれている実施例と含まれていない実施例の二つの実施例を包含しているかどうかを知る手立てがないからである。クレームはその限界を示さなくなってしまう。」

 連邦巡回裁判所は、請求された機能を達成するために、択一的構造が開示されている他の特許のミーンズ条項の構成要素の解釈について従来より取り組ん

でおり、Rader裁判官はSerrano vs Telular Corp., Ill F.3d 1578, 42 USPQ2d 1538(Fed. Cir. 1997)(54 PTCJ 10, 5/1/97)及びMicro Chem, Inc. vs Great Plaine Chem, Co., 194F.3d 1250, 52 USPQ2d 1258(Fed. Cir. 1999)(58 PTCJ 781, 10/14/99)を指摘している。Serranoは§112第6段落の正しい適用は、請求された機能を実行するため、クレームの構成要素は個々の及び択一の記述された構造を包含するものとして、一般的に読まなければならないと主張している。Serrano及びMicro Chemicalのどちらも、複数の実施例をカバーするため単一のクレームを明確にすることを地方裁判所に求めてはいない。

 連邦巡回裁判所は、地方裁判所が、クレームに規定された機能に対応した明細書のすべての構造を単一のクレームの解釈と一致させるように表現すること

をしなくても、それは間違いではないと結論付けている。Rader裁判官は更に、地方裁判所は§112第6段落に要求されている各実施例に「対応する構造」を

適切に認識していると述べている。つまり、ミーンズ条項に示される構成要素は地方裁判所により、明細書に記載の実施例1及び実施例2のすべての構造を

含むように適切に解釈されている。機能付き手段を表すフレーズを有するクレームを文言上侵害しているというためには、訴えられた装置が同一の機能を果

たすことが求められる、と控訴裁判所は考えている。これらの機能を実行しており、対応する構成との差異が実質的ではない場合に限り、訴えられた装置は

法律上§112第6段落だけに基づきクレーム構成要素を侵害していることになる、とRader裁判官は発言している。更に、Ishidaの装置は'917特許の装置と

同じ機能を実行しているが、'917特許発明は構成要素の所望の動作及びタイミングを達成するための純粋に機械的な手段を用いているのに対して、Ishidaの

装置は動作のいくつかをコンピューターにより制御している。結果的に、巡回裁判所は地方裁判所に同意している。Ishida装置の構造は明細書に開示された

構造に単に「なんの特徴もない実質的でない変更を」を付加したに過ぎないとは認めていない。Ishida装置はミーンズ条項に相当する構成を'917特許の構造

とは実質的に異なる方法で達成しているからである。

〈米国〉

商標の著名性は関連のない商品にまで影響を及ぼすことができると

連邦巡回控訴裁判所判決

(事件の概要)

 Recot Inc. は、商品スナックフードについて種々の「Frito-Lay」商標の連邦登録を所有し、$121億と評価される国内スナックフード産業の少なくとも

50%のマーケットシェアを占有する。M. C. Bectonは、アラバマ州バーミンガムのエリアにおいて「Fido-Lay」商標のもとで犬用自然食品を販売している。

 Bectonが連邦商標を出願したとき、Recotはその登録に異議を申し立てた。The Trademark Tria and Appeal Board(商標審判抗告部)は、Recotの異議申

し立てを却下し、両商標間には混同の可能性はないとの決定を下した。Recotは控訴した。

 商標の著名性は、混同の可能性を決定するとき、常に十分な評価が与えられなければならない、被告が関連のない商品について類似の商標を使用する場合においてすらそうであると、米国連邦巡回控訴裁判所は6月7日に判決した。

 同裁判所は、ドッグフードについての商標「Fido-Lay」の使用者に対して、人間用スナックフードについての商標「Frito-Lay」の所有者によって提起された登録異議事件についての抗告部による決定を破棄した。

 同裁判所は、その商標の著名性はその商標が一般に使用されている商品より以上には及ばないという決定を拒絶し、そして、消費者の心理における商品の

関連性を考慮しなかったがために、商品は本質的に類似しないとする認定を批判した。

(裁判所の判断)

商標Frito-Layの著名性について

 Recotは、抗告部がFrito-Lay商標の著名性に適切な評価を与えなかったと主張した。

 同裁判所は、商標の著名性はE. I. DuPont De Nemours & Co., 476 F.2d 1361,177USPQ 563(CCPA 1973)事件で示した各要因(Factors)のもとに混

同の可能性を評価する場合に重要な役割を果たすことを認めた。

 著名商標は、このように広い許容範囲の法的保護を享有していると、Raymond C. Clevenger判事は付言した。また、判事は、「Fido-Lay」商標で販

売される犬用の食品は「Frito-Lay」商標で販売される人間用スナックとは完全に関係ないものであるという抗告部の見解を認め、更に、抗告部は著名性の要因に識別性という重い評価を与える判例法を軽んじている、なぜならば、著名性は一般的に同一またはより近い関係にある商品またはサービスにのみ及ぶと判断したからであると、説明した。

 同裁判所は、Frito-Lay商標の著名性はその商標が一般に使用されている商品より以上には及ばないとする抗告部の規範に反対した。

 判事は、著名商標はより多くの保護が与えられるべきであり、なぜならば、著名商標はウイークマーク(Weak Mark)より公衆の心理により想起され連想

される可能性があると、強調し、商標の著名性は同様に消費者が関連のない商品を購入するとき混同する可能性に影響するだろうと、指摘した。

 同裁判所は、この商標の著名性は、商品の類似性を考慮する要因から独立して混同可能性分析を支配すると首尾一貫して述べたと付言された。また抗告部

自身の先例が正にこの規範を適用する決定を含んでいると指摘した。

 同裁判所は、また、「Fido-Lay」犬用食品が「Frito-Lay」人間用スナックと同一でないか、または密接に関連がなかったとした抗告部の認定を論難し、

Fido-Lay」の出所について消費者が混同するか否かを決定するときに、複数の大きな会社がペット用と人間用の両方の食品を販売している証拠について考

慮することを拒絶したことは誤りであったと、指摘している。

商標の類否について

 判事は、また、抗告部が商標の類否の分析において商標の意味のみを考慮してFrito-Lay商標を不適当に解体したことをRecotと同意した。全体としての

商標の類似または非類似は、外観(Appearance)、称呼(Sound)、観念Connotation)に関して考慮されると、同裁判所は強調した。

 しかしながら、同裁判所は、抗告部が、両商標が非類似であったと結論付けるとき、商標の一部分の観念(FritoとFido)のみを考慮し、両商標の外観または全体の称呼を考慮しなかったと、指摘した。

Good Faith(善意)について

 しかしながら、同裁判所は、BectonがGood Faith(善意)のもとにFido-Lay商標を採用したとする抗告部の認定を撤回するために拒絶した。

 抗告部の決定は破棄され、差し戻された。

〈米国〉

ICANNのドメインネーム処分は連邦裁判所に対して拘束力はない

 米国のドメインネームの帰属に関して、連邦裁判所はICANN(the Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)のUDRP(United Dispute

Resolution Policy)の結論によって左右されることはないと、判決した。

Weber-Stephen Products Co. v. Armitage Hardware and Building Supply Inc.)

 原告Weber-Stephen が被告Armitage に対して、ICANNのUDRPの下で、被告のドメインネームの使用中止、または、ドメインネームの譲渡を求めるた

め、WIPOに対して訴えを起こし、UDRPのアクションが始まった翌日には、原告はネット上での著作権、商標権侵害についても訴えた。

 被告側は、UDRPの手続は裁判では拘束力がないと主張し、裁判所がそれを認めない限りUDRPのアクションに応じないと述べた。

 なお、周知のようにICANNは新しい準政府団体であり、'99年10月24日に是認されたポリシーは、ドメインネームに関する論争に対して、強制力のある

行政処分を下すことができるとされていた。

 裁判所はUDRPの決定が裁判に必ずしも拘束力をもつわけではないと指摘し、WIPO仲裁センターの決定は、裁判に対して有効なのではなく、ドメイン

名管理業者に対して有効であるとした。従って、裁判はUDRPの処分に左右されることはないと結論付けた。

 裁判所の判決はICANNのポリシーやルールによって左右されるものではなく、WIPOがいうように、裁判所がICANNの決定をどの程度考慮に入れるかは

裁判所自身が決めることができ、よって、米国裁判所は広い裁量権を持つと述べた。

 もしも一方の当事者がUDRPの決定に不服であるならば、その後適当な訴えをなすことができるとされた。

〈米国〉

下院の司法委員会は遺伝子の特許付与に関して、専門家の賛否意見を聞く

 下院議員の小委員会は7月13日、遺伝子がどのような形態で保護されるべきかについて、専門家の意見を聞いた。専門家証人は特許保護と科学的データ

にアクセスする公共の利益をどのようにバランスさせるかについて証言するとともに、USPTOによって推進されている遺伝子の発見の特許性を図る新ガイ

ドラインのメリットについて討論した。

(特許性の要因)

 遺伝子が特許性があるかどうかを決定するキーとなる争点は、発明が有用性があるかどうかである。生(Raw)の遺伝子情報は、有用性(Utility)がないので特許性を具備しない。

 USPTOは、遺伝子配列に関して6,000件の特許を発行した。初期の遺伝子特許のいくつかは、有用性が不充分であるとして批判を受けている。しかしこ

れらの特許の大部分は、大量の配列機械(Sequencing Machine)の使用以前に発行されたものであり、これらの特許は有用性を具備している。(Dickinson

Director of PTO)

(有用性に関する新しいガイドライン)

 USPTOは昨年、有用性に関する中間的な審査ガイドラインを、Federal Registerに発表した(64 Fed. Reg. 71440, 59PTCJ434, 1/7/00; 65Fed. Reg.

3425, 59PTCJ508, 1/28/00)。

 このガイドラインは以前発行された特許の不平を解消し、さらに遺伝子製品(Genomic Product)に対する、有用性の基準を最新のものにしている。この

ガイドラインは今後特許権者に、発明に関し具体的な(Specific)、実質的なSubstantial)、かつ確実な(Credible)有用性を明確に見極めることを求めている。この中間的なガイドラインは実質的な変更なく、この秋に完成する。このガイドラインには、遺伝子保護の賛否両サイドからの批判があったが、この批判内容から、私は、このガイドラインが両サイドの立場をうまくバランスしていると信じている。(Dickinson, Director of PTO)

(遺伝子特許に対するバーの引上げ)

 我々は特許出願人が、実世界の有用性(Real World Utility)を示すことを確実にすることにより、バーを引き上げた。新しいガイドラインが施行されると、何百という遺伝子特許出願は、UPPTOにおいて拒絶されるであろう。特に理論的な有用性のみを開示している特許出願は、拒絶されることになる。

Dickinson, Director of PTO)

 改定ガイドラインは、正しい方向の第一歩であるが充分ではない。新しいガイドラインのもとでは、遺伝子特性に関するコンピュータ比較、あるいは治療

にいかに使用でき、病気をいかに予防し、治療するかについて表面上の、かつ誤った情報に基いて遺伝子、または遺伝子部分に対して特許が発行されるかも

知れない。(Varmus, President and Chief Executive Officer of Memorial Slogan-Kettering Cancer Center)

以上