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国際活動委員会からのお知らせ(20033月)

〈米国〉

修正された21世紀戦略プラン

200323日、21世紀戦略プランの修正案が米国特許商標庁USPTOより公表されました(USPTOホームページhttp://www.USPTO.gov/web/offices/com/strat21/index.htmを参照)。修正されました21世紀戦略プランの概要は以下のとおりです。

審査請求制度に代わる運用プランによって審査請求制度を導入することによるメリットの実現を図ることとし、同制度の採用は見送る。

出願人に調査報告の作成を義務付けることに代え、私的調査機関との関係を緊密にする。

限定要求に影響を及ぼす特許法及びその規則の改正を検討し、第108回議会の終了までに新たな実務案を提案する。

提案されていた強制的な情報開示陳述書(IDS)の提出要求を取りやめ、現行の自発的なIDS制度を維持する。

米国に最初に出願された特許出願については18ヶ月公開時点までに第1回目のオフィスアクション及び先行特許調査報告を発行する。

提案されていた特許庁料金表を修正する。修正された料金表は、非常に多くのクレームやページを含む複雑な明細書に対する料金は特許庁における処理量に応じて増額する一方、一部に料金の返還を含むものである。詳細は以下の表を参照。

料金比較表

   

現行費用

2002年6月
の提案費用
2003年2月
の提案費用

特許出願

出願料

$750

$300

$300

 

調査料

   

$500

 

審査料

 

$1,250

$200

 

合計(出願時)

$750

$300

$1,000

PCT国内段階
の料金
USPTOがIPEA、ISAのいずれでもない場合

$1,060

$1,550

$1,000**

クレーム料金

独立クレームが3を超える場合

$84

$160/$320/
$640/+125%…

$200

 

クレーム数が20を超える場合

$18

クレーム数が5個増えるごとに、 $80/$160/$320/$640/+125%…

$50

応答期間

(例)2ヵ月延長

$410

$660

$450

特許審判

審判請求

$320

$520

$500

 

理由補充

$320

$1,730

$500

 

口頭審理の請求

$280

$460

$1,000

許可前の公開

 

$300

$300

$300

特許発行費用

再発行含む

$1,300

$1,660

$1,400

特許維持

第1段階

$890

$900

$900

 

第2段階

$2,050

$3,000

$2,300

 

第3段階

$3,150

$5,000

$3,800

全特許費用

出願/発行/維持

$8,140

$12,110

$9,400

 

出願/発行/公表/維持

$8,440

$12,410

$9,700

商標出願費用
(クラス別)

紙出願

$335

$375

$375

電子出願

  −

$325

$325

 

促進審査

  −

$275

$275

* :放棄の時期に応じて一部返還。

**:先行技術調査の作成機関に応じて一部返還。



〈米国〉

広い範囲を開示している先行技術はその範囲に重複する
狭い範囲をクレームしている発明に対して自明性の根拠となる

先行技術が問題となったクレームの範囲(数値範囲)を含む広い数値範囲を開示している場合、この先行技術は一応の自明性を推定しうる根拠となるとCAFCは判決した(In re Peterson, Fed. Cir., No. 02-1129, 1/8/03)。

CAFCは、自明性を理由に出願クレームを拒絶した特許審判及びインターフェアレンス部の判断を支持する一方、そのこと自体は先行技術よりも狭い範囲をクレームしている組成物が特許を受けることができないことを意味するものでないと述べた。また、裁判所は、発明が予期しない効果を発揮することやクレームされた発明が先行技術に開示されていないという証拠に基づいて当該発明が自明でないことを出願人は示す責任があることを明確にした。

超合金特許出願

Lance G. Petersonは、高温環境用工業ガスタービンエンジンの製造に使用されるニッケル系単結晶超合金に関する特許出願をした。この出願のクレーム5は、「約13%のレニウム」と「約14%のクロム」からなる組成物に関するものであった。特許庁審査官は、先行技術に開示された組成物の要素範囲とクレームされた組成物の要素範囲が重複していることを理由に、3つの先行特許(Shah, Wukusick and Bieber)からクレームは一応自明なものであるとして拒絶した。特許審判及びインターフェアレンス部は、「約14%のクロム」というクレーム範囲が「12%までのクロム」を使用するWukusickの開示に含まれるという審査官の判断に同意した。さらに、クレームされた合金が当業者の予期し得ないものと考えられることをPetersonが示していないと判断した。この判断に対し、出願人Petersonが控訴した。

一応の自明性

Petersonは、「約14%のクロム」と「約13%のレニウム」を組み合わせて高強度の合金を得ることを先行技術が示唆していないので、発明は自明ではないと主張した。つまり、先行技術の開示範囲はクレームされた構成と重複するものであるが、Shahの広い開示範囲からレニウムとクロムのより狭い範囲を選択することは当業者にとって自明ではなかった、とPetersonは主張した。

しかし、CAFCの判断はPetersonの意見に同意するものでなかった。具体的に、Alan D. Lourie判事は、重複範囲が問題となる事件では、僅かな重複さえも一応の自明性を認める根拠となると説明している。また、クレーム範囲と先行技術の開示範囲が重複していないが極めて接近しており、そのために当業者が同一の特性を有するものと期待し得る場合でも自明性は成立すると述べている。

先行技術に開示された広い範囲の中から狭い範囲を選択することは、開示された範囲と単純に重なる範囲を特定しているのと同様に自明なことである。実際、この事件と同様に、クレームされた範囲が先行技術に完全に包含されている場合、その結論は単に重なっている場合よりも複雑である。既に一般に知られているものを改善しようとする科学者や熟練工が通常行うことは、すでに開示された範囲内で最適の組み合わせを探し出すことである。それゆえに、多少狭くクレームされた狭い範囲を包含する、広い範囲を開示する先行技術文献は、一応の自明性を認定するために十分な根拠となる。しかし、そのことは、より狭い範囲のクレーム構成が特許を受けることができない、ということではない。むしろ、範囲が重複しているとか包含されているという証拠が存在するということは、発明が自明でなかったことを示す責任を出願人に転換するものである。従って、Shahの範囲がPetersonの範囲を包含することを理由に、Shahに基づいてPetersonのクレームの一応の自明性を認定した審判部の判断に誤りはなかったものと判断する。

反証議論

一般に、出願人は、「クレームされた範囲が先行技術範囲と比較して予期しない効果を達成する」ことを立証することによって、一応の自明性を克服し得る(In re Geisler, 116 F.3d 1465, 1469, 43 USPQ2d 1362, 1365Fed. Cir. 1997 54 PTCJ 217, 7/17/97)。その基準は、先行技術に開示された広い範囲から狭い範囲を出願人が選択した場合に当てはまり、予期しない効果に関する出願人の主張はクレーム範囲とバランスのとれたものでなければならない、とLourie判事は述べている。

CAFCは、「約13%」の範囲のレニウムの添加が合金の強度において予期しない改善につながることを示す実質的証拠をPetersonが示していないという点で、PTOと意見が一致した。明細書が超合金組成物の複数の実施例及びそれらの強度(平均の破壊寿命測定値)を開示している点に裁判所は注目した。

開示されたデータは、レニウムが添加されたときに合金強度が向上することを示すものであるが、その添加率を約13%としたときに予期しない効果が生じることを立証するものでなく、2%のレニウムが添加されたときに応力破壊寿命に大きな改善がみられたことを示しているものであるとLourie判事は述べている。

しかし、クレームされた範囲の内の低い量のレニウムを添加しても予期しない効果は得られないという審判部の結論は実質的証拠によって支持されており、またクレームされた範囲の内の高い量のれレニウムを加えることによって予期しない効果を生じることを示すデータもなく、実際3%のレニウムを加えた合金の応力破壊寿命を報告するただ一つのデータだけが逆の結果を示唆するように見えると裁判所は述べた。

明細書中の例はレニウムの添加で合金強度が改善されたことを示しているが、クレームされた約13%の範囲全体で予期しない効果が発揮されることは証明されていない、とLourie判事は指摘した。また、同判事は、クレームされた範囲の下の方の値のレニウムの添加量では予期しない効果を生じなかったとする審判部の暗黙の結論を実質的的証拠が支持していることに注目した。さらに、出願人が予期しない効果を示したかどうかは、CAFCが審判部の意見に従う際の事実の問題であると述べた。

結論として、裁判所は、Petersonが「約13%」レニウムの範囲内において一応の自明性を覆すだけの予期しない効果を実質的証拠が示していない、という審判部の決定を支持した。また、Petersonも先行技術がクレーム発明を開示していないという説明をもって一応の自明性に反論しておらず、先行技術はクレーム発明とは違ったことを開示しているのではないという審判部の認定を支持した。審判部はPetersonの「違ったものと開示している」という主張に明確に反論をしなかったが、ShahWukusickおよびBieberの引例が発明を示唆し、それらは一応の自明性の成立と認め得るものであり、そのために審判部はそれらの引例がPetersonの発明と違ったものを開示しているものでないと判断したのである、とLourie判事は述べた。

〈参考文献〉

BNA International Inc.

"Patent, Trademark & Copyright Journal"

‘Prior Art Range That Overlaps Narrow Claimed Range Establishes Obviousness’

Page 235-236, Volume 65, Number 1605, January 17, 2002

Full Text at http://pub.bna.com/ptcj/021129.htm



WIPO

WIPOの商標に関する常設委員会は商標法条約の一部改正を検討

ジュネーブ発

WIPOは昨年(2002年)1111日から15日にわたって開かれたSCT(商標に関する常設委員会)の会合において、WIPO1994年商標法条約(1996年に発効し、これまでに30ヶ国が批准している)における手続要件の修正の提案を考慮すべく討議を行った。

WIPOの事務局によって提出された修正案は、方式及び商標の保護のための手続をより一層調和させようとするものである。役員諸氏の説明によれば、SCTの会合で行われた討議は電子出願及び手続期限を懈怠した商標権者の権利の救済ないし回復の問題に集中したとのことである。

商標法条約は、商標登録出願及び商標権存続期間の更新について各国商標庁にとっての最大限の手続要件を定めている。

前記SCTの会合に参加した役員諸氏は、加盟諸国は商標登録願の電子出願の問題及び登録手続に関する各国間の意見の相違を克服することが出来なかったと述べている。先進諸国は電子出願制度の実現に積極的であるが、発展途上諸国は、各商標官庁は紙出願の受理を継続することを容認されるべきであると主張している。その結果、加盟諸国は、ハーモナイゼーションを一応棚上げにしておいて、電子出願だけの出願制度に移行するか、それとも紙出願の受理を継続するかどうかの決定を各国官庁に一任することになりそうであると役員諸氏は述べている。

また、権利の救済及び回復に関しては、役員諸氏は、WIPOの特許法条約の諸規定と同様な諸規定を設ける必要性についてWIPO加盟諸国は同意するものとみられる旨述べている。WIPO事務局によって提案された諸規定は、所定の期限を遵守できなかった場合、請求により提出期限の延長を認めると共に、期限の徒過の結果として失われた権利の回復をも期限徒過について十分な正当理由があることを条件として認めることを各国商標官庁に対し許容するものである。それらの規定は、特許分野とは異なり、権利の救済ないし回復の問題が緊急な問題ではなかったという理由で最初の条約の条文中には含まれていなかったものである。然し乍ら、多数の代表者、殊に産業界及び他の民間団体からの代表者はそれら権利の保護を与えることは重要であるとの見解を表明した、と役員諸氏は述べている。

SCTとしては商標ライセンスの問題をも討議しなければならない。WIPO加盟国は、去る20003月に、ライセンスの登録、ライセンスの登録の取り消し又は修正の申請が国内又は地方の官庁になされたとき、当該官庁が申請人に要求することのできる事項の最大限を列挙したリストを記載した共同勧告を採択した。この共同勧告は改定される商標法条約に盛り込むことが考慮されている。

 WIPO事務局は、参加者によってなされたコメントを考慮に入れてその提案を修正すると共に、その修正案を428日〜52日に予定されている次回のSCT会合に提出することになっている。

〈参考文献〉

BNA International Inc.

"World Intellectual Property Report"

‘Standing Committee Considers Changes to Trademark Law Treaty’

Page 26, Volume 17, Number 1, January 2003

以上


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