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諸外国の最新特許情報  国際活動センター(2003年7月)

〈米国〉

CAFC判決:フェストを考慮した最高裁の差戻しは代りの方法論を排除しない

〈概要〉
 CAFCは、フェストの判決に照らして最高裁が再考のために事件を差戻し(remand)たことは、事件を決定するため代りの方法論が存在するような場合には、フェストの判決の適用を要求するものではないと判決した(2003年3月24日、Lockheed Martin Corp. v. Space Systems / Loral Inc. Fed. Cir., No. 00-1310, 3/24/03)。

 非均等侵害の簡易判決を2回目に肯定し、CAFCは、被疑の衛星操縦システムが、特許の決定的に重要なミーンズプラスファンクションの限定を満足する特徴を含まない故に、均等論のオール エレメント ルールを満足しないことを見出した。CAFCによると、審査経過禁反言以外の理由に基づく事件の処理は、事件がフェストの判決を考慮し再度考慮されたという意味において、最高裁の命令に文字通り従う。


手続きの経緯
 Lockheed Martin Corp. は、Space Systems / Loral Inc.(SSL)を、米国特許第4,084,772号「衛星を地球静止軌道に保つように操縦し、それにより地球上の送信器と一定の関係を維持することを可能にする装置及び方法」を侵害すると訴えた。

 カリフォルニア州北部の米国地方裁判所のSusan Illston裁判官は、SSLの簡易判決を行い、SSLのインテルサット7号(Intelsat VII)は、米国特許第4,084,772号を、文言及び均等論のいずれにおいても侵害しないと判決した。

  CAFCは、Fest判決(Fest Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 234 F.3d 558, 56 USPQ2d 1865(Fed. Cir. 2000)(61 PTCJ 104, 12/1/00))を引用し、審査経過禁反言が249 F.3d 1314, 58 USPQ2d 1671(Fed. Cir. 2001)(62 PTCJ 4, 5/4/01)の事件の問題における重要なクレーム限定[b]へ均等論を適用することを阻害することを理由に、(地裁判決を)肯定した。

 最高裁は、均等論を誤用したとしてCAFCのフェスト判決を覆した。535 U.S. 722, 62 USPQ2d 1705(2002)(64 PTCJ 98, 5/31/02)。最高裁は、後で、9件の特許事件の再調査を許した。9件は、このLockheed事件を含み、これらの事件においてフェストの判決を考慮した再考のために判決が破棄差戻しされた。122 S.Ct. 2322(2002)(64 PTCJ 135, 6/7/02)。

差戻しの影響
 Arthur J. Gajarsa裁判官は、最初に、CAFCは最高裁の定型的なフェスト判決の破棄差戻し命令が控訴裁判所へフェスト問題を扱うことを要求するものとも、又は何か他の理由で事件を決定することを排除することを要求するものとも考えないと述べた。Arthur J. Gajarsa裁判官は、以下のように詳述した。

 最高裁は、地方裁判所の簡易判決を許す命令を肯定したCAFCの従前の判決を破棄した故に、差戻された事件は、CAFCの判決前の先の控訴の段階と同じ状態にある。最高裁が意図した全ては、もしCAFCが審査経過禁反言を再度考慮するならば、CAFCはフェストの意見の理論の最高裁の解明を考慮すべきであるということであると、CAFCは考える。しかしながら、最高裁が差戻しによりCAFCにCAFCが前に従った理論の分析を制限することを要求することを意図したと信ずる理由はない。実際、審査経過禁反言以外の理由によるこの訴訟のCAFCの処分は、CAFCがフェストを考慮し事件を更に考慮し地方裁判所の判決が他の理由で肯定されるべきであると結論すべきであるという意味において最高裁の命令に文字通り従う。

下級審の分析
 米国特許第4,084,772号の第1クレームの限定[b]は、「衛星の軌道周波数で正弦波曲線を描いて軌道上で変化する所定の速度計画に従って(横ホイールを)回転させる手段」を記載した。

  地方裁判所は、クレームの構造に一致させ、SSLの衛星は、その反応ホイールが零まで速度を落として反転せず且つその速度が純粋に正弦波的でない計画により変化する故に、文言侵害しないと結論した。地方裁判所は、またSSLの衛星は、均等論の機能・方法・結果(function-way-result)の分析において侵害しないと決定した。

 地方裁判所は、次に、被疑のSSLのホイールの機能及び結果が限定[b]によりクレームされたものと実質的に同じであるか否かについて事実上の争いがあると決定した。SSLの衛星の横ホイールは、軌道についてゼロを2度通過しないことに留意しながら、地方裁判所は、SSLのホイールの操作の方法が772号特許のクレームに本質的に似ていないと決定した故に、非侵害の簡易判決を与えた。

 CAFCは、限定[b]の機能を識別し、クレームされた機能を記述するために使用された用語の意味を解釈した。Gajarsa裁判官は、地方裁判所の結論であるクレームされたホイールの速度がゼロを通過せねばならないこと、及びそのホイールが「所定の速度計画に従って」回転しなければならないことに、欠点を見出さなかった。

オール・エレメント・ルールの下で排除される侵害
 Lockheed Martin Corp. は、SSLの衛星が横ホイールを正弦波曲線を描いて回転させるためのクレームされた限定[b]の手段の均等物を含むかどうかについて事実上の議論が存在するから、簡易判決は不適当であると主張した。

 CAFCは、同意しなかった。装置は、もし各要素が実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で遂行し実質的に同じ結果を達成するならば、均等論の下で侵害するであろうことをGajarsa裁判官は、認めた。しかしながら、CAFCは、最初に、均等論の範囲が限定[b]に適用されるとき、審査経過禁反言又はオールエレメントルールの記載によって狭くされたかどうかを最初に決定しなければならないとGajarsa裁判官は加えた。

 オール・エレメント・ルールの下では、例えクレームの単に1つの限定又はその均等物が被疑の装置に存在しないならば、均等物侵害がある筈がないとGajarsa裁判官は、説明した。このように裁判所が均等物の下での侵害の認定が特定のクレームの要素を完全に損なうと決定するならば、次に裁判所は均等論のもとで侵害はないと決定することができた。

 SSLの衛星のLホイールは、速度がゼロに減速され、停止し、反転されないから、正弦波曲線を描いて変化しない。更に、SSLの衛星に使用された速度計画は予め決定されていない。これらの限定は、限定[b]の適正な構成によって必要とされる。適正に解釈される機能を遂行する構成要素が存在しないから、均等論における侵害の認定は、限定[b]の限定を完全に損なうであろう。従って、限定[b]又はその均等物は、被疑の装置に明快に存在しない。
 Lockheed Martin Corp. の侵害の請求は誤りであるから、審査経過禁反言を検討する必要はないとCAFCは付加した。判決は確定した。

参考文献
 BNA International Inc., "Patent, Trademark & Copyright Journal", ’Supreme Court Remand in Light Of Festo Did Not Preclude Ruling on Alternate Theory’, Page 462-463, Volume 65, Number 1615, March 28, 2003
(本ダイジェストは、著作権者の許諾の下、原論文の要約を掲載するものです。)



〈米国〉

CAFC判決:開示の中に自己の特許を含ませることは、
それが先行技術であることを自認したことにはならない

〈概要〉
 CAFCは、特許出願人が、出願明細書の情報開示陳述書(IDS)において、自分自身の特許を包含したことが、その特許を先行技術であるとは認めたことにはならないと、2003年3月31日に判決した(Riverwood International Corp. v. R.A. Jones & Co., Fed. Cir., No. 021030, 3/31/03)。

 CAFCは、侵害裁判の原告の先行特許は、係争中の特許に対して先行技術に当たるという(地裁の)判決を取り消すとともに、(この先行技術により)自明であるとの無効の判断をも退けた。しかしながら、裁判所は、先行技術として依拠される先行特許の部分とクレームされた主題は、同一の発明者の業績であるかどうかを決定するために、本件を差戻し、発明者の訂正を要求した。CAFCは、「フライト バー」というクレームの用語についての地方裁判所の解釈を容認した。


包装方法と機械
 Riverwood International Corp. は、缶とビンを分類し、それらをボール箱に積込むために使われる包装方法と機械に向けられた複数の特許(5,666,789、5,692,361、5,241,806)を保有している。

 Riverwoodは、R.A. Jones & Co.を告訴し、Jonesの箱詰め機械は、'789、'361、'806特許のクレームを侵害していると主張した。Jonesは反訴し、主張されたクレームの無効を主張した。

 (地方裁判所での審理で)陪審員は、Jonesの機械は、'789特許のクレーム18と'361特許の主張されたすべてのクレームを侵害していることを発見した。しかしながら、陪審員は、また、'361と'789特許において、主張されたクレームのすべては、米国特許法103条の下、自明であるとして無効であるとした。陪審員は、さらに、'806特許の5つのクレームは、侵害されているが、自明であるゆえに無効であるとした。両当事者は控訴した。

先行技術の問題
 Jonesは、'806特許は、米国特許法102条(a)-(d)により先行する技術ではないけれども、'789と'361特許でのIDSにおける'806特許への言及は、自認により'806特許を先行技術に変えてしまうものであると議論した。

 一方、Riverwoodは、'789特許と'361特許の基礎となり、かつ、Jonesが自明の議論の根拠として供する、(缶を)二重に積み重ねるという実施例については、3人の名前の挙げられた発明者のうち、Zieglerのみが発明者であるという証拠を引用して、'806特許の開示の一部のみを先行技術であると議論した。

103条下での先行技術
 Jonesは、地方裁判所が、'789特許と'361特許の審査手続の間のRiverwoodの自認に基づいて、米国特許法103条の下、'806特許は、'789特許と'361特許に対して先行技術であると正確に判断したと議論した。

 CAFCはこれに同意しなかった。発明者自身の業績でないある主題を「先行技術」であると特定する審査手続中の出願人による申立は、当該主題が先行技術であることを自認したことになると、(CAFCの)Linn判事は認めた。

 ただし、CAFCは、文献が自認により先行技術になり得るという見解は、主題が発明者自身の業績であるときは、適用できないと判断した。

102(e)条下での先行技術
 Jonesは、さらに、'806特許は、米国特許法102(e)の下、先行技術であると再度議論したが、CAFCは説得されなかった。

 102(e)条は、もし、その発明が出願人による発明前に合衆国内で提出された他人による特許明細書に対して付与された特許に記載されていないならば、その人は、特許を与えられるということを規定しているとLinn判事は述べた。したがって、Linn判事は、同一の発明者に付与された出願は、102(e)条の下では、先行する技術とはなり得ないと説明した。

 しかしながら、これによりすぐに問題は終了するわけではない。なぜならば、係争中の特許は、同一の(複数人からなる)発明者には付与されなかったからである。

 Linn判事は、重要なことは、単に、リストされた発明者の相違ではなく、先行技術として寄与している引例の部分、および問題となっているクレームの主題が、共通の発明者の業績を表わしているかどうかであると、強調した。

 Riverwoodは、Jonesが'789特許と'361特許に対して先行技術となると考えた'806特許の主題の発明者はZieglerのみであるという証拠を提出した。したがって、Riverwoodは、'361特許は、誤ってLashyroとVulgamoreの名前を載せたのであり、地方裁判所に発明者の訂正を要求したものであると主張した。

 CAFCは、'806特許に開示された主題の部分を、誰が発明したのか決定しなかったことにより、地方裁判所は判断を誤ったと判示した。
CAFCは、それゆえに、'806特許は自認により先行技術であるとする地方裁判所の判断を退けた。

 CAFCは、無効の判断を退け、自明性の問題を差戻した。もし、Zieglerが、Jonesによる自明の議論に寄与する'806特許の部分の唯一の発明者であるならば、'806特許は'789特許に対して先行技術にはならないとLinn判事は結論を下した。さらにLinn判事は、もしZieglerが、'361特許の唯一の発明者であるならば、'806特許はそれらの特許に対して先行技術ではなく、地方裁判所はその特許の発明者の訂正を命令すべきであるとつけ加えた。

クレームの構成と侵害
 無効の判決を退け、CAFCは、地方裁判所による「フライト バー」という用語の解釈に目を向けた。
地方裁判所は、その用語は1つのコンベアもしくは同調して動く複数のコンベアにより駆動される複数の部品を含むと判断した。
しかしながら、Jonesは、フライト バーは単一の構造に限定されるべきであると主張した。

 CAFCは、地方裁判所のクレーム解釈を支持して、Jonesが議論するようにその用語を限定する理由は見出せないとした。
Linn判事はその用語は特許において首尾一貫してコンベア上で物品を交差し、グループを形成し、物品を動かす構造に言及するために使われていると注釈した。

 クレームの用語、明細書、審査手続の経緯において、フライト バーが単一の構造でなければならないことを示唆するものは何もないとLinn判事は議論した。

 裁判所は、'806特許は、自認による先行技術であるという判断を退け、無効であるという判決を退けたが、クレームの構成の解釈については認容し、本件を残る発明者の問題を決定するため差戻した。

参考文献
BNA International Inc., "Patent, Trademark & Copyright Journal", ’Including Own Patent in Disclosure Is Not Admission That It Is Prior Art’, Page 580-582, Volume 65, Number 1618, April 18, 2003
(本ダイジェストは、著作権者の許諾の下、原論文の要約を掲載するものです。)



米国

CAFC判決:‘Lilly Doctrine’ は、発明の所有を示すために具体的形式の記述を要求しない

〈概要〉
 連邦巡回控訴裁判所は2003年4月1日に裁判所による意見として、「Regents of the University of California v. Eli Lilly Inc. にて表明された記載要件(written description requirement)の遵守は、発明者が出願時に発明を所有していたことを当業者が明細書から判断できるなら、具体的形式の記述を要求していない」と判示した。


卵選別装置
 Diamond Automation Inc. は卵を選別するための高速機械を製造販売しており、その技術の種々の態様に関する特許を有している(5,569,444および4,505,373)。

 ‘444特許は一般に、卵を加工する「下準備」(卵の洗浄、欠陥のチェック、次いで重量測定)に関する。’373特許は、後処理工程(下準備工程からオーバーヘッド式コンベアーに卵を移送し、別の受入部材に落下させ、次いで梱包しまたは割る)に関する。

 Moba B.V. およびStaalkat B.V. は、Moba OmniaおよびStaalkat Selecta卵加工装置を製造するオランダの会社である。MobaおよびStaalkatの両装置は、Diamondの米国市場における唯一の競合会社であるFood Processing Systems Inc.(FPS)によって米国にて販売されている。FPSは、‘444および’373特許は無効であり、Moba Omnia およびStaalkat Selecta装置は特許を侵害するものでないとの確認判決を求め、Diamondを訴えた。

 陪審員は、特許は無効であり非侵害であると判断した。ペンシルベニア東部地区の米国地方裁判所の判事Bruce W. Kauffmannは、Diamondによる法律問題についての判決申立てを受け、特許の有効性に関してDiamond勝訴としたが、侵害問題に関してはFPS勝訴とした。DiamondはそのJMOL(法律問題としての判決)の申立てが否定された後、侵害判決に対して上訴し、そしてFPSは陪審員による特許有効の決定に対して交差上訴した。

有効性
 FPSは、控訴裁判所が判決したように’373特許のクレーム24が移動コンベアーから卵を持ち上げる工程を含むのなら、’373特許明細書はそのようなコンベアーのメカニズムを記載していないので、’373特許は無効となるべきであると主張した。

 連邦巡回控訴裁判所(以下「当裁判所」という)は米国特許法35 U.S.C. § 112の下では特許明細書は適切な記述を含まなければならないことを認識していた。

 しかし、当裁判所は、当裁判所判決例にある35 U.S.C. § 112の2つの適用例を踏まえ、それらを分析した。第1は、クレームに新規事項を追加することを禁じるのに記載要件を利用した関税特許控訴栽判所(CCPA)による適用例である(In re Rusching, 379 F.2d 990, 154 USPQ 118(CCPA 1967))。35 U.S.C. § 132は新規事項の追加を禁じているが、CCPAは35 U.S.C. § 112のもとで新規事項を監視すると決定した、と当裁判所は説明し、そして特許権者がクレームした事項を出願時において所有していることを確認するために当裁判所は35 U.S.C. § 112を従前から利用していると追記した。

 当裁判所による最近の適用例では、記載要件ドクトリンは、所有していなかったものを発明していたと出願人が事後に主張するのを防ぐことを目的とすると注記している(Amgen Inc. v. Hoescht Marion Roussel Inc., 314 F.2d 1313, 65 USPQ2d 1385(Fed. Cir. 2002(65 PTCJ 206, 1/10/03)。当裁判所はこれを受け、記載要件は、以後に追加されたクレームが優先権主張の基礎出願の出願日を享受できるか否かを判定するのに利用されると説示した。

 記載要件の第2の適用例は、優先権の問題は関係しない(Regents of the University of California v. Eli Lilly & Co., 119 F.3d 1559, 43 USPQ2d 1398(Fed. Cir. 1997)(63 PTCJ 483, 4/5/02)。LillyはDNA配列の正確な定義を明細書中に求められたが、このケースは後に、遺伝物質の機能的記載が必ずしも、法律問題としての記載要件を満足しないとは言えないことが支持され明確化された(Enzo Biochem Inc. v. Gen-Probe Inc., 296 F.3d 1316, 63 USPQ2d 1609(Fed. Cir. 2002)(63 PTCJ 483, 4/5/02)。

 米国特許法35 U.S.C. § 112における記載要件を遵守しているか否かのテストでは、発明者が原出願時に発明を所有していることを示す充分な情報が従前から要求されている、と当裁判所はまとめた。従って、裁判所は、本ケースでは発明者が出願時に発明を所有していることは明細書の記載から当業者が決定でき、よってLillyの記載要件ルールは具体的形式の記述を要求するものでないと付け加えた。

 このように、本判決では、’373特許は適切な記載要件を欠くことを理由に無効とはならないとした陪審員の結論を支持する実質的な証拠を認定した。

参考文献
BNA International Inc., "Patent, Trademark & Copyright Journal", ’‘Lilly Doctrine’ Does Not Require Disclosure Of Particular Mechanism to Show Possession’, Page 559-562, Volume 65, Number 1617, April 11, 2003
(本ダイジェストは、著作権者の許諾の下、原論文の要約を掲載するものです。)



米国

CAFC判決:方法クレームは、記載順に各ステップが実行されることを要しなかった

〈概要〉
  コンピュータのブートプロセスを制御する方法クレームの各ステップは、特定の順序で実行される必要はない、というCAFC判決が2003年2月12日になされた(Altiris Inc. v. Symantec Corp., Fed. Cir., No. 02-1137, 2/12/03)。

 各ステップが記載された順序に実行されることを方法クレームが暗示的に必要とする旨をCAFCは認めたが、クレームの用語及び明細書の記載のいずれによっても、直接的にも暗示的にもそのような狭い解釈はできなかった。CAFCは、地裁が非侵害のサマリージャッジメントを下した5つのクレーム限定要素の解釈に誤りがあったと判示し、地裁に差し戻して、正しいクレーム解釈に基づいて侵害の有無を決定することを求めた。


 Altiris Inc. は、USP 5,764,593号の特許権者である。この593特許は、コンピュータのブートプロセスをインターセプト及び制御する方法に関するものである。Altiris Inc. は、Symantec Corp. を特許権侵害としてユタ地裁に訴えた。地裁は、Symantec Corp. の行為は非侵害であるとの判決を下した。その後、両者が控訴した。

 控訴審では、Altiris Inc. は、地裁のクレーム解釈に関して6点程意見を述べた。そのなかの一つが、方法クレーム(クレーム1、8)におけるステップの順序に関するものである。この点に関して、地裁は、クレームが各ステップの特定の順序を規定していなかったとしても、クレーム1、8の ”setting” ステップは、”testing automatically” ステップの後であって、”booting normally” ステップの前に行わなければならない、と判断していた。Altiris Inc. は、まずこの点に反論した。Altiris Inc. は、クレームの通常の意味が特定の順序であることを課していないため、”setting” ステップは、他のステップの前、後、同時、又は間のどこで行われても良い旨を主張した。

 CAFCは、Altiris Inc. のこの主張に同意した。Paul Michel裁判長は、地裁が過去の判決であるInteractive Gift Express Inc. v. CompuServe Inc., 256 F.3d 1323, 59 USPQ2d 1401(Fed. Cir. 2000).に頼った点を誤りと指摘した。裁判長は、CAFCがInteractive Gift判決で、各ステップが記載順に実行されることを方法クレームが暗示的に必要であると述べた旨を認め、過去の判決を適用することは標準の手法であると述べた。しかしながら、同裁判長は、クレーム解釈において曖昧な基準を注意せずに適用することは、誤りのレシピになり得る、と付言した。

 CAFCは、まず、クレーム用語から判断すると、文法的にも論理的にも、”setting” ステップは他のステップとの関係で特定の順序に行わなければならないとする根拠は無いとした。次に、明細書の内容が検討された。”setting” ステップが ”testing” ステップの後で ”booting normally” ステップの前に行われるのは、唯一ある“好ましい”実施形態にのみ記載されていた。しかし、このようなステップの順序が重要であるとか、各ステップの他の順序を排除したりするとか、或いは、審査過程で他の順序を放棄する示唆の記載は無かった。

 従って、CAFCは、”setting” ステップが ”booting normally” ステップの前に行われることが必要という地裁のクレーム解釈が誤りであるという結論を下した。

参考文献
BNA International Inc., "Patent, Trademark & Copyright Journal", ’Method Claims Did Not Require Steps To Be Performed in Order Written’, Page 366-367, Volume 65, Number 1610, February 21, 2003
(本ダイジェストは、著作権者の許諾の下、原論文の要約を掲載するものです。)

 

以上


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