会長あいさつ・意見・声明

OPINION

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令和3年度 会長就任のご挨拶

就任のご挨拶

 

時代の変化をチャンスに!

弁理士が活躍する未来社会の実現に向けて

会長 杉村 純子日本弁理士会会長 杉村純子

 

 

令和3年度の会長就任に際して、皆様にご挨拶申し上げます。

まずは、この度の新型コロナウイルス感染症という未曾有の災害において亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、 社会のため人命のためにこのコロナ禍においても日々奮闘くださっている方々に深く敬意と感謝を表したいと存じます。

国内でワクチン接種が開始されておりますが、コロナ終息までは長い道のりとなることが予想されます。このようなウィズコロナ時代の会長として、会員の皆様の健康安全を第一に、そして知的財産の側面から国内外の経済・産業を支援できるよう、全力で会務運営を行なっていきたいと考えております。

 

第1 はじめに

1.ウィズコロナ時代での新生活様式への急速な変化

今般の新型コロナウィルス感染症の蔓延は、我が国をはじめ世界全体の経済に多大な影響を与えており、各国政府等において、1年以上に亘り、感染拡大の抑制と経済の維持・回復という微妙なバランスの中で各種政策が展開されています。

その一方、このコロナ時代を生き抜く方策として「新生活様式(ニューノーマル)」が提唱され、多くの国民において、その実現を図る試みが行われています。

このような中、ウェブ会議システムなどのICT技術を最大限活用し、また、新たな行動パターンも取り入れ、ビジネスを含む社会生活全体に新たなムーブメントも多く発生しています。

2.知的財産を取り巻く環境変化

DX、AIやIoTなどの新たな技術に支えられた第4次産業革命の進展、我が国企業における自前主義からオープンクローズ戦略等への事業戦略の転換、さらに、自国第一主義などのナショナリズムの台頭やグローバル競争の激化など、知的財産を利用する経済産業の環境は大きく変化しています。

そのような中で、知的財産の活用度の指標となる特許、実用新案の出願件数は、中国や米国など他の先進諸国において増加傾向にある一方、我が国においては大きく落ち込む結果となっており、度重なる知的財産関連法規や運用の改正も、その効果はまだ十分に現れているとはいえません。

3.弁理士を取り巻く環境変化

弁理士を取り巻く環境は、知的財産の環境変化だけでなく、弁理士人口が約1万2千人の時代に突入する一方、ユーザー側による弁理士の選別が進み弁理士間の競争も一層激化しております。

弁理士の活躍の場は、特許事務所や企業以外にも大学や自治体などへと広がりつつあり、また、知的財産を活用した事業戦略への関与など、弁理士が社会に果たす役割も多様化しつつあります。

さらに、今般の新型コロナウィルス感染症の拡大による、弁理士業務への影響など、弁理士を取り巻く環境は、現在、大きな転換期を迎えているといえます。

 

第2 本年度の事業目標

厳しい環境下であるが故に、「時代の変化をチャンスに」するという熱い気持ちで、弁理士が活躍する未来社会の実現に向けて、本年度は以下の事業目標を重点的に展開していきます。

(1)ウィズコロナ、ポストコロナの社会ニーズにマッチしたユーザーにとって魅力ある知財制度の実現に向けての積極的な政策提言

AIやIoT等の新たな技術の進展による第4次産業革命やオープンイノベーション、また新型コロナウィルスのような新たな感染症に対応できる強靭な社会形成など、社会構造が急速に変化する中で、知財制度の利活用形態も変化しています。

今後の社会ニーズにマッチしたユーザーにとって魅力ある知財制度を実現し、弁理士が活躍できる土壌を構築するため、日本弁理士会が積極的にリーダシップを発揮し、政策提言をします。

(2)新型コロナウィルス感染症の影響を考慮した、弁理士が活動しやすい環境の整備

知財制度の担い手である「知財専門家」としての弁理士が、十二分に活躍できなければ、知財制度も円滑に機能しません。

新型コロナウィルス感染拡大の影響も考慮して、弁理士を取り巻く業務環境を改善し、弁理士が安心・安全に活躍できる環境の整備を推進します。

(3)知財制度・弁理士制度を支える日本弁理士会の組織・機能強化

知財制度や弁理士制度の維持・発展には、日本弁理士会の組織的なバックアップが必要不可欠です。

新型コロナウィルスに対応する新生活様式へ積極的に適合させるべく、既存の事業・予算や、日本弁理士会の地域会と本会との役割分担などを見直し、時代や環境の変化に対応させるとともに、地域に根ざした地域知財を活性化すべく会全体としての組織的・機能的強化を図ります。

(4)将来の弁理士制度を担う若手人材の積極的育成

知財制度を支える弁理士制度が、今後も永続的に発展・継続していくためには、弁理士制度を担う人材、特に若手人材の育成が重要です。

次世代を担う弁理士が多様な経験や、資質向上・リスキルアップが図れるように、種々の機会を構築し、提供します。

 

第3 事業目標を達成するための事業の再構築(基本的考え方)

現在のコロナ禍で各種の事業活動が停滞している時期を最大限活用して、事業全般に対する見直しや事業の再構築を行い、コロナ渦で活動可能な事業を積極的に実施するとともに、ポストコロナ時代にも通用する事業への転換・創出を図ります。

各事業を見直す上での基本的考え方は、以下のとおりです。

(1)費用対効果の評価と事業のスリム化

全ての事業が、会員からの会費収入を主たる財源として活動している以上、その事業の必要性や経費については、会員に対して説明する責任があります。貴重な財源を無駄にせず、事業の費用対効果を最大限にするためにも、本会の事業だけでなく地域会の事業においても、皆で知恵を絞り、より低コストで効果的な事業への転換や創出(事業のスリム化)を図ります。

(2)現場重視(地域会の活動環境の整備)

各地域会の事業は、日本弁理士会が行う活動の中でも、国民や一般事業者等に最も近い活動です。地域知財の活性化を実現するため、地域会が抱える問題を極力解消し、地域会の活動が活発化するよう、事業内容や予算の見直しを行います。

(3)事業管理者と事業実施者との分離の原則

効率的な事業活動を行う上で、「自分が企画し、自分が実施する」という形態は、以前の会員数の少ない日本弁理士会では、日常的な光景だったかも知れません。しかしながら、約1万2千人の会員を抱える組織においては、より多くの会員の参加が可能な事業の透明化が必要です。

このためにも、事業を運営管理する会員(マネジメント)と、講師・相談員等の事業を実施する会員(プレーヤー)とを原則分離し、事業の透明性を高めると共に、より多くの会員に事業活動への参加の機会を提供します。

(4)会員への成果還元を重視

弁理士制度においては、強制加入制度が採用され、日本弁理士会には会員への指導・連絡・監督が義務づけられています。日本弁理士会の責務は、これだけに留まらず、会員の資質向上を図り、弁理士業界全体の活性化を図る役割があると考えます。そのためには、各委員会等が得た知見は可能な限り会員に還元し、会員全体のスキルアップに寄与していきます。

 

第4 まとめ

事業の見直しや事業の再構築を進めて行く上で不可欠なのは、会員の皆様のご理解でございます。そのためには、広く情報を共有しながら、会員の皆様と一緒に知恵を絞り、答えを出すプロセスを重視したいと考えています。弁理士が活躍する未来社会の実現に向けて、一歩ずつ歩みを確実に進めるためにも、何卒、ご支援、ご協力をお願いいたします。