会長あいさつ・意見・声明
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2019年度 会長就任のご挨拶
就任のご挨拶
夢と希望のある知財立国の実現!
会長 清水 善廣
第1 はじめに
第4次産業革命といわれ、AI、IoT、ビッグデータ等の言葉を日々頻繫に耳にするように、技術の加速度的進歩によって世の中が目に見える形で劇的に変化しています。
多くのイノベーションが生まれ、まさに弁理士が活躍すべき時です。この時流に乗り、積極的に外に繰り出し、外部との“絆”を深め弁理士のプレゼンスを高めるビッグチャンスが到来しています。
第2 重点施策
1.弁理士の活動基盤の強化を図ります。
2.中小企業支援の方策を提案します。
3.弁理士の国際業務を支援します。
4.地域知財の活性化を支援します。
5.日本弁理士会の組織改革を推進します。
6.事業の棚卸のルール化を検討します。
第3 具体的施策
1.弁理士の活動基盤の強化
(1)業務の掘り起こし
―連携を深める弁理士絆プロジェクトの実行―
弁理士絆プロジェクト
ア: 金融機関との絆
中小企業を支援するのに役立つ知財活用モデルを金融機関へ提案します。そのために、まず、全国の地銀・第二地銀・信用金庫・信用組合を対象にアンケートを実施し、知財に関するニーズを調査します。そして、ニーズのある金融機関を対象にセミナーを実施して、中小企業において着目すべき経営資源は知財であることを理解してもらいます。さらに、経営資源としての知財の重要性を金融機関から中小企業へ説いてもらうことで、中小企業の知財取得意欲の増進を図ります。
イ:他士業との絆
会員に、他士業と連携する機会を提供することを通じて、他士業からの紹介による知財業務の提供の機会及び他士業の力を借りることにより自らが顧客に提供する知財業務の品質を向上させる機会を提供します。
ウ:企業との絆
日本弁理士会が提供する企業支援のメニューを作成する際に役立つ情報(ニーズ)を効率的に収集すると共に、企業関連団体における知財活用マインドの向上を図ります。具体的には、日本知的財産協会の他、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会等の中小企業関連団体や、AI、バイオ等の先端技術分野に係る産業別団体等との間で意見交換会を企画・開催します。
エ:アカデミア等との絆
オープンイノベーション支援の一環として、技術等マッチングの場を提供します。具体的には、技術等のニーズとソリューションを持っている企業、大学、各種団体等に働きかけ、マッチングのための場を提供します。
オ:弁理士同士の絆
企業弁理士をはじめとする事務所外弁理士と事務所弁理士との連携を強化して、企業及び社会における知的財産のプレゼンスを向上させるための方策を検討します。
(2)事務所インフラの効率化
ア:間接業務の標準化
弁理士業務標準を一歩進めた業務支援ツールを提案します。例えば、クライアント面談時にタブレット端末で見積書を簡便に作成する、コンフリクトチェックを容易に実施する、その他会員のニーズに即したアプリケーションソフトウェアの開発を検討します。
イ:間接業務のシェアリング
日本弁理士協同組合との連携を図りながら、特許事務所の事務管理部門にかかるコストを削減することによる経営効率の改善を支援します。
ウ:現地代理人情報の共有
外国出願に際しての海外現地代理人選定に資する代理人情報を収集し、会員へ提供します。
2.中小企業支援
(1)知財経営コンサル事業 ~弁理士知財キャラバンVer. 2~
弁理士知財キャラバンで得られた知見を活かし、日本弁理士会が中小企業に提供することができる新たな弁理士派遣サービスを提供します。
(2)共同研究開発付随業務(技術移転等)の支援
中小企業等が関与する共同研究開発に付随する契約等に弁理士が関与できるように、研修メニューを充実させます。
(3)補助金コンサル業務の支援
知的財産権の取得や維持にかかる費用の補助を目的とする補助金等の情報をタイムリーに会員に提供できる仕組みを検討します。また、中小企業の係争に取り組む意欲を高めるため、国内知財訴訟費用保険が補助金の対象になるように企図します。
3.国際業務支援
(1)会員への国際関係情報の提供
ア:会員交流の場としての「サロン」の設置
弁理士会館1階を改修し、会員や、外国代理人が待ち時間等にクライアントと共に立ち寄り交流することができる、サロンのようなスペースの設置を検討します。
イ:英文ライティングの基礎研修
現行のグローバル人材育成研修とは別に、英文によるコレポンの実務能力を向上させるための研修を企画します。
ウ:英文契約書の作成研修
共同研究契約、共同開発契約、権利譲渡契約、物質移転契約等に係る契約書の作成方法について、研修を企画します。
(2)日本弁理士会の対外的プレゼンスを高める活動
ア:英文ホームページの充実
掲載情報を関係機関・委員会で精査し、英文原稿を作成します。ホームページの作成及び更新は外部会社に依頼し、国外に対してタイムリーに情報を発信できるようにします。
イ:国際会議へのブース出展の支援
日本弁理士会自身がブースを出展し、あるいは複数の事務所が共同でブースを出すこと等を支援し、弁理士の国際的な業務活動の支援の拡大を図ります。
ウ:アジアツアーの企画
馴染みの浅いアジアの国々に対する国際業務活動の機会を提供するため、大勢の会員に同行して頂いて現地事務所や現地企業を訪問する「アジアツアー」を企画します。
4.地域知財の活性化支援
(1)本会と地域会の役割分担の明確化
本会と地域会の担当役割を明確化し、地域会における事業を本会が効果的に支援できるように、現状の問題点を抽出します。
(2)巡回特許庁との連携
昨年度知財広め隊により行われた巡回特許庁とのコラボセミナーを継続します。
(3)地域会との連携強化
地域知財の活性化のため、各地域会と、当該地域会担当の副会長とが相互に意思疎通を図る機会を増やします。
5.日本弁理士会の組織改革
(1)会長室の機能強化
年度単位にとらわれず日本弁理士会が喫緊に解決すべき課題を抽出し、次年度の政策にその課題への対応策を入れることができるようにします。
(2)複数年任期の高度専門人材の登用
日本弁理士会の財務政策等について専門的な知識をもって検討できる人材を財務改善専門員として登用し、会長室に配置することを検討します。また、日本弁理士会の広報政策について専門的な知識をもって検討できる人材を広報専門員として登用することの是非を検討します。
(3)中長期課題への対応
日本弁理士会が短中期的な戦略に沿って活動できるようにするため、各機関に、その活動の中で見聞あるいは検討した事項からその機関の担当分野における中長期的な課題を随時提案するよう求めます。
6.事業の棚卸のルール化
日本弁理士会が実行する各事業について目的の設定を徹底します。また一定年数ごとに、目的に沿った成果が出ているか、成果が十分でない場合に目的に沿った改善がなされているか、等をチェックして、その結果が不十分な場合に事業を廃止する際のルールの作成を検討します。
第4 その他
1.弁理士制度120周年記念事業の企画・実行
2019年の弁理士制度120周年記念式典(2019年7月1日開催予定)及び記念事業への対応体制・企画内容の検討・整備、さらには対応資金の検討・準備等を具体的に進め、実りのある120周年事業を実行できるよう十分な準備を継続的に実行します。
2.東京オリンピック及びパラリンピックへの対応
2020年の東京オリンピック及びパラリンピックの開催に関連し、引き続き日本弁理士会が貢献できることを検討します。
3.知財普及活動の強化および弁理士知名度の向上
2018年度から実施している中長期的な広報戦略の策定に基づく広報活動を継続します。
4.弁理士法その他の法改正への対応
次期弁理士法改正に向けた検討を継続します。
5.弁理士法に基づく事務・事業への取組
弁理士制度の円滑な施行及び適切な会務運営の実現を図るため、弁理士登録に関する事務や実務修習等の研修事業をはじめ、弁理士法に基づいて日本弁理士会が実施する事務・事業にも継続して取り組んでいきます。
第5 むすび
以上のような施策を通し、夢と希望のある知財立国と弁理士業界を実現するために、皆様のご協力をお願い申し上げます。