会長あいさつ・意見・声明

OPINION

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種苗法等の改正案についての会長声明

日本弁理士会は、令和2年11月19日に衆議院で可決された「種苗法の一部を改正する法律案」について、参議院において十分に審議が尽くされた上で、早期に可決されることを望みます。


1.農林水産分野の競争力強化の必要性
 我が国の農産品の品質は、長年来培われてきた生産技術に裏打ちされた丹精込めた産品づくりと、開発者・育種家による飽くなき研究努力と投資による魅力ある新品種の開発を両輪として、向上の一途を辿っています。「シャインマスカット」「安代りんどう」「十勝川西長いも」等の農産品は、国内市場はもちろんのこと、諸外国においても高い評価を得ています。
 一方で、鋭意努力して開発した新品種を適切に保護する仕組みが、現状では必ずしも十分に機能していないため、我が国の農林水産分野の競争力が阻害されるという事態が生じているように思われます。開発者・育種家が長い年月と多額の投資を費やして開発した新品種は、貴重な知的財産です。これが不当に侵奪されることに対して、適正な対処を可能とする法整備がなされることを望みます。
 今般の改正案には、植物新品種の保護の実効性を担保するための条項が多々備えられております。とりわけ、輸出先国又は栽培地域を指定して品種登録された登録品種についての育成者権の効力に関する特例が明記されれば、税関における輸出差止が強化されます。本法律案が可決されることにより、我が国の農林水産分野における競争力が一層強化されると思料します。

2.知的財産法制としての整合性
 開発した新品種の競争力を維持するためには、複数の知的財産権を組み合わせて多面的な保護をはかることが重要です。植物新品種の法的保護は、種苗法のみにより実現されるものではなく、例えば当該植物が有する特徴となる遺伝子や作出方法等について特許で保護することも考えられます。
 しかし、現行の種苗法では、職務育成品種に関する規定が特許法における職務発明に関する規定(特許法第35条)と対応していない、特許法では導入されている通常実施権の対抗力(特許法第99条)に対応する規定がないなど、他の知的財産法制との整合性が取れていないばかりでなく、特許権と育成者権を組み合わせて植物新品種の保護を図ろうとする場合に、不便な点があります。
 今般の改正案には、これらの点についての制度整備など、特許法との整合をとる改正事項が含まれておりますので、ユーザーが複数の知的財産権を組み合わせて植物新品種の法的保護をはかる際の利便性が向上すると思料します。

3.結語
 本法律案が可決された暁には、我々弁理士も知的財産に関する専門家として、より一層の研鑽を重ね、農林水産業の発展に寄与していく所存です。


令和2年11月20日
日本弁理士会
会長 清水 善廣