会長あいさつ・意見・声明

OPINION

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令和5年度 会長就任のご挨拶

将来の安定性を確保するための礎を築きます!

 

日本弁理士会会長 鈴木 一永 

 

 

令和5年度の会長就任に際して皆様にご挨拶申し上げます。

2020年当初より始まった新型コロナウイルス感染症が社会全体の問題となって既に3年目にはいり、日本国政府は、本年5月から新型コロナの位置づけを2類相当から5類に緩和するとともにその名称を「コロナ2019」と改める等して、コロナ前の状況に戻るための政策を進めています。

 このようなウィズコロナからアフターコロナへと進む時期の日本弁理士会会長として、将来の安定性を確保するための礎を築くため、以下のような事業計画を作成し、会員の皆様とともに実行していきたいと考えております。

 尚、具体的な施策については、紙面の関係で項目のみ掲載いたしました

 

第1 はじめに

平成14年に知的財産基本法が公布された後、平成26年の弁理士法改正を経ることにより、我々弁理士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないという職責を全うすること(弁理士法第3条)に加えて、知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、経済及び産業の発展に資することを使命とすることになり(同法第1条)、この改正に伴い、弁理士の指導、連絡及び監督に関する事務等を行うことを目的とする日本弁理士会の役割も拡大しています(同法第56条)。

一方、日本経済は、バブル崩壊以降の長期にわたり、ほとんど成長できていない状況が続いています。このような中、日本経済は、2020年当初から新型コロナウイルス感染症のパンデミックにさらされ、さらに2022年は32年ぶりとなる急激な円安等による物価の上昇が重なることにより、長きにわたり低迷しています。我が国の知的財産に目を向けると、商標登録出願の件数については増減を繰り返しているものの、特許出願については、中長期にわたって件数の減少に歯止めがかからない状態が続いています。

 そこで、中長期的な視点から、持続可能で安定した日本弁理士会組織を構築することにより弁理士業務をより強固にサポートしつつ、同時に弁理士の高度な人材を育成・強化することで、知的財産の出願件数を増加させるための素地を整えます。これにより産業界のプロダクト・イノベーション(革新的な新製品を開発して、差別化を図ること)を推進し、産業界による第4次産業革命下でのグローバル化・IT化を支えること等を通じて、日本経済及び産業の発展を図ることに寄与し、もって弁理士の使命を全うできるようにいたします。

 

第2 重点施策

 長期にわたる経済低迷、弁理士業務の減少・停滞に鑑み、中長期において持続可能で安定した日本弁理士会組織を構築し、中長期において持続可能で安定した弁理士業務を確保するための礎を築くため、その前提となる弁理士人材の育成・強化を図ります。

1.既存の施策

(1)特許庁等の関連団体との連携

コロナ禍等の諸事情により休止している各種団体等との関係を再構築し、弁理士の認知度向上にも力をいれます。

(2)知財創造教育の強化

大学、高専、高校、小中学校における知財創造教育を強化します。

(3)地域会事業の効果的な推進

本会と地域会との意見交換の機会を拡充するとともに、各地域会のより柔軟な運営を推進します。

(4)弁理士の認知度向上につながる広報戦略

特許庁その他の関係省庁及び関係団体等との連携、地域会における広報戦略の強化等、費用対効果を重視した広報戦略を検討します。

(5)組織内弁理士(企業内弁理士を含む)の活躍の場の模索

組織内弁理士の声を聴き、必要に応じて組織内弁理士が求める研修を実施する等、活躍の場を模索します。

 

2.新規の施策

(1)情報収集・分析

弁理士の業務に関する情報を日本弁理士会として収集、分析する仕組みをつくり、中長期にわたる業務の増加策等を検討するとともに、会務活動のスムーズな承継を継続して実現できるようにします。

(2)事業の棚卸し

日本弁理士会が実施する事業を定期的に見直す仕組みを導入する礎を築きます。

(3)委員会等の会務への参加促進

委員会等の会務への参加者を増やすため、会員が会務に積極的に参加できる環境をつくります。

(4)業務支援の仕組みづくり

電子フォーラムに蓄積されたコンテンツを利用しやすくする環境を整備する礎をつくります。

(5)弁理士法人への弁理士以外の者からの出資禁止規定

弁理士法人が弁理士以外の者から出資を受けることを禁止する旨の確認規定を例規に追加することを検討します。

 

第3 具体的施策

1.「知財業務の活性化」のための施策

1-1 業務の増加のための施策

(1)商工会議所、金融機関、ベンチャーキャピタル(VC)等を通じて、中小企業、スタートアップ等との関係の再構築

(2)知財関連情報収集とその分析

(3)SDGsの拡がり、2025年大阪・関西万博の開催を契機とした知財支援・広報の推進

(4)弁理士紹介制度のさらなる拡充

(5)中小企業・スタートアップへの啓発

1-2 知財創造教育の強化による中長期的な業務増加

(1)大学における知財創造教育の強化

(2)小中学校における知財創造教育

(3)パテントコンテスト・デザインパテントコンテストの強化

1-3 弁理士の認知度向上による中長期的な業務増加のための広報戦略

(1)弁理士の認知度向上のための効果的な広報戦略の模索

(2)特許庁その他の関係省庁及び関係団体等との連携

(3)地域会における広報戦略

(4)組織内弁理士(企業内弁理士を含む)の地位向上を通じた弁理士の認知度向上

1-4 海外からの出願を日本に呼び込み、また日本から海外への出願を促すための施策

(1)海外からの日本出願を呼び込むための施策の情報収集・分析

(2)日本市場の魅力を発信する仕組みの構築

(3)日本情報の広報

(4)海外出願の広報

1-5 DXによる業務効率化の拡充

(1)勉強会の開催・情報提供体制の拡充

(2)日本弁理士会によるDXの取組

1-6 弁理士以外の者が実質的に弁理士法人の経営にタッチできないようにするための措置

2.「組織の強化」のための施策

2-1 事業の棚卸し制度の導入

2-2 地域会事業を効果的に推進するためのスキームの拡充

(1)地域会における意見交換の機会の拡充

(2)地域会活動のより柔軟な運営の推進

2-3 特許庁と日本弁理士会との連携の強化

(1)特許庁との会合による連携の強化

(2)審査官・審判官との共同研究の拡充

2-4 関係省庁及び関係団体との情報交換、連携強化

(1)発明協会等の関係機関との連携

(2)各自治体との支援協定締結の推進

(3)経済産業局等と地域会との協力体制の構築

2-5 情報収集・分析を実施する仕組みづくり

2-6 組織内弁理士(企業内弁理士を含む)の活躍フィールドの拡充

(1)組織内弁理士の声を聴く仕組みの整備

(2)組織内弁理士向けの研修の拡充

(3)組織内弁理士のセカンドキャリアの把握

3.「人材の育成・強化」のための施策

3-1 信頼されるプロフェッショナルとしての弁理士の育成

(1)ディスカッション型の研修の拡充

(2)業務を支援するための仕組みづくり

(3)ダイバーシティ推進、広告ガイドラインの周知徹底、マナー講習、ハラスメント対策等の広報及び研修の実施

3-2 知財立国を担う未来の弁理士人材の組織的育成

(1)大学院生、大学生、高専生に対する広報

(2)未就学児、小学生に対するキッザニアでの広報

(3)弁理士のプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の向上支援

(4)弁理士同士のコミュニケーション機会の確保

(5)弁理士未登録者の現状の把握

(6)福利厚生制度の充実等、弁理士の職務環境の整備

3-3 多様な人材が日本弁理士会の会務への参加を促進する環境づくり

(1)委員会活動等の広報

(2)多様な人材の委員会等での活動支援

(3)若手弁理士の委員会等での活動支援

 

以上に示した各種事業を進めて行くには、会員の皆様に各事業の必要性をご理解いただき、ともに各事業を実行していただくことが不可欠です。そのためには、広く情報を共有し、会員の皆様とともに考え、ともに実行していきたいと思います。我々弁理士が知的財産の側面から我が国の経済・産業の発展を支援することにより、社会の発展の一翼を担うことができるように、ともに前記各事業を進めていきたいと思いますのでご支援ご協力を宜しくお願いいたします。