商標権の侵害を確認なしに5000足のシューズを製造
大赤字の事態を招いてしまった!
新しい機能や性能を持つ商品を開発できた時、その機能がすぐイメージできるネーミングを誰しも考えたくなるものです。実際ネーミングを聞いただけで、その商品のメリットがすぐイメージでき、そのおかげで大ヒットした商品もたくさんあります。
今回の事例は、スポーツ用品を製造販売する某中小企業でのお話です。その企業の社長は、どんなに暑くても、どんなに汗をかいても、靴の中が蒸れないランニングシューズの開発に成功しました。そして、その商品名を「MUREZUN」に決定しました。
社長は「これは売れる!」と確信し、チラシを大量に刷り、商品名入りのシューズを5000足製造しました。そして、目玉商品として売り込みを開始しようとした時、テレビのニュースで商標ブローカーの特集を見たのです。
社長は急に不安になり、急遽知り合いの伝手で弁理士を紹介してもらい、商標調査を依頼しました。
すると25類「履物及び運動用特殊靴」を指定商品として「ムレズん」の登録があり、弁理士からは、「MUREZUN」の使用はその登録商標の商標権侵害に該当するため、商品名の変更を勧められる状況になってしまったのです。
商品名を変更するとなると、チラシや商品名入りで製造した5000足のシューズを廃棄する事態となり、大赤字になってしまいます。社長は、その「ムレズん」の登録商標を持っている会社を調べました。すると「ムレズん」は商標登録から3年経過しておらず(不使用取消審判の請求不可)、最近は実際に商品の販売を開始しているとのことでした。そのため交渉に応じる可能性が低いと予想され、社長はせっかく生産した5000足のランニングシューズとチラシを廃棄処理せざるを得なかったのです。
せっかく独創性の高い商品開発に成功し絶妙なネーミングをつけても、事前に商標権を侵害しないかのチェックをおろそかにすると、このような大きな損害を生むことがあるのです。場合によっては企業の経営を危うくすることもあるので、工場への発注前には是非商標権の侵害調査をして下さい。