製品仕様は随時変わるもの
商品開発部と法務部の連携が非常に重要
下町にある中小企業のD社は、電動アシスト自転車の草分け的存在。『電動自転車といえば、D社』というブランドイメージも確立していました。その躍進のポイントは、電気アシスト自転車のパワーを支えるバッテリー技術。近年は子供のいる母親や高齢者のニーズも高まり、その売上は年々大きくなり、D社の4割を占めるまでになりました。
その躍進の理由はある物質の特性を活かした独自のバッテリーで、蓄電能力を大幅に向上させ、一回充電すれば長時間走れる電動アシスト自転車を実現したのです。
当然そのバッテリー技術に関しては、D社は特許権を取得し、法的に保護されていました。ところが、付随する画期的な給電技術について特許出願しておらず、競合他社がそこをセールスポイントにプロモーションをかけて売り出したのです。
当然、D社の社長は激怒しました。「どうなってるんだ!電動アシスト自転車の先駆者である我社にとって、バッテリー関連の技術は全て特許で押さえたはずだ」
社内でその原因を分析すると、製品の開発から販売開始までのプロセスで、仕様が頻繁に変更になり、その状況が特許出願する部署と情報共有されていなかったため、給電技術について特許出願されなかったことが判明しました。そのため、バッテリーの周辺技術である新しい給電技術は競合他社も実施可能になってしまったのです。
技術は、開発現場で次々に改良されていきます。それは新たな発明が次々に生まれていることを意味します。開発部門と法務部門が一体となって常に情報共有し、新たな発明を見落とすことなく適切に権利化を図っていくことが重要です。