発明を独占できる特許
しかし技術内容の公開代償リスクも
日本を代表する自動車メーカーからも頼りにされているエンジン製作メーカーのO社。そこの梅島社長は、ハイブリッドエンジンで画期的な燃費を実現しました。
中小企業にとって独自技術は重要な企業資産だと考えた梅島社長は、このハイブリッドエンジンの製造方法の発明を出願、特許権を取得しました。そしてこのハイブリッドエンジンで飛躍的な売上げを期待していたところ、数年後に模倣エンジンが市場に出回ってきたのです。
なぜO社のハイブリッドエンジンの技術が漏れたのでしょうか。そこには、特許出願の仕組みが関係していたのです。梅島社長が相談した弁理士さんのアドバイスは、以下の通りです。
「技術の累積進歩により産業の発達を図ることを目的とする特許制度では排他独占的な権利(特許権)を付与する代償として、出願した1年半後には、出願内容が公開されます。つまり、1年半の間は秘密は守られますが、それ以降は誰もが見れるようになるということです。
模倣エンジンを開発・販売している会社は、梅島社長の会社の特許に関する公開情報をベースに自社のエンジン製法に適用したのだと思われます。
リバースエンジニアリングされやすい製品(物の発明)は特許権を取得するのがよいですが、方法の発明や製造方法の発明に関しては、ブラックボックス化が可能な技術であれば、特許出願して1年半後に公開されるリスクを負うよりも、自社内で秘匿化して厳密に情報管理した方が得策かもしれません。
そもそもエンジンの製造技術の場合、その侵害行為の発見・指摘が困難なケースも多いのです。そういう意味でも、技術を秘匿化(ノウハウ)するか、技術を公開して特許権を取得して自社技術を守るのかは会社の知財戦略上重要なのです」