新商品のアピールポイントを企画書に記載
すると取引先経由で他の会社に先に特許出願された
下町の中小企業の社長Aさんは、長年、子供用玩具の製造販売を営んできました。ある日従業員がユニークなアイディアを思いつき、従来の自社商品とは全く異なるコンセプトの商品を製造販売することにしました。
そこで、今まで懇意にしてきた広告代理店にも相談することにしました。すると、「社長、これはかなり売れると思います。是非、御社の大口取引先だけでなく、当社のクライアントも回って、プレゼンしましょう!」と提案されました。
社長のAさんは、「これは我社にとって、大きなチャンスだ。ここで新規の取引先を獲得すれば、大きな売上になるぞ」と意気込み、営業企画書に新商品の特長をできるだけ詳しく記載しました。そして、その企画書を持って、様々な会社を訪問し、広告代理店担当者と一緒に説明して回りました。「これは、斬新ですね!前向きに検討しましょう」と反応も上々で、Aさんは、多くの会社を訪問しながら確かな手応えを感じました。
するとある日、新聞の折り込みチラシに、会社回りでアピールした新商品とそっくりな商品が掲載されていたのです。すぐさま広告代理店の担当者にも連絡し、調査したところ、どうやら営業企画書がどこからか漏れ、その資料をヒントに他社が新商品を開発したようでした。しかも、その会社は特許出願や意匠登録出願を既に行っていることも判明したのです。
新製品を製造しようと既に原料や製造ラインの手配を終えていたAさんの会社は、特許等の取得手続きを後回しにしたためにそれまでの方針の転換をしなければならず、大きな損失を被ることになってしまいました。「自社で発明したのに、なぜこんなことに…」と早く弁理士に相談し、権利の取得手続をしてから営業に移行しなかったことを今でも後悔されているそうです。