顧客への訴求力アップを狙い店舗を改装したが
中村社長が営むレストランは、以前より安価で美味しいと評判でした。しかし、店舗の外観が古ぼけていたことから、来るのは常連さんばかりで、新規の顧客が得づらいという問題がありました。そこで中村社長は一念発起し、新進気鋭の建築士に依頼、外観デザインや内装デザインに優れた魅力的な店舗に改装することにしました。
改装後、中村社長の店舗は、個性的な外観と個性的な内装を併せ持つ、魅力的な店舗に生まれ変わりました。以前より評判だった価格や味も相まって、たちまち顧客の数は増えていき、中村社長は2店舗目、3店舗目を出店することにしました。中村社長は、2店舗目以降の店も系列店であることが分かりやすいよう、全ての店舗で外観と内装デザインを統一しました。そして、3店舗目の出店からしばらくしたある日、ふと立ち寄った隣県で中村社長は、自身の店舗に酷似した外観デザインのレストランを発見してしまいます…
ここで、「デザインを保護する知的財産権」と言えば、意匠権です。
しかし、意匠権は「物品」のデザインを保護するものと定められていたため、物品に該当しない建築物(不動産)は保護対象外とされていました。このため、中村社長のケースにおいて、外観デザインを真似た相手を訴える場合、これまでは不正競争防止法や著作権法を用いるしかありませんでした。
しかし、2020年4月の改正意匠法の施行により、意匠権を用いて「建築物」や「施設の内部の設備及び装飾」を保護できるようになりました。このため、店舗の外観デザインや内装デザインについて前もって意匠権を取得しておくことにより、外観デザインや内装デザインの模倣を抑制することができ、結果として、外観デザインや内装デザインが醸成する顧客への訴求力を守ることができます。