せっかく独自デザインで商品がヒットしても
意匠権の取得なしでは泣き寝入りしかないという現実
ファッションや家具など、その斬新なデザインがウリになる商品は世の中にたくさんあります。しかし独自に考案したデザインも、意匠権の取得なしでは経済価値は維持できません。今回は、家具や雑貨の企画販売を行う従業員50人前後の中小企業のお話です。
この企業では、部屋のインテリアとしても使える加湿器をある社員がデザインしました。そのデザインを気に入った社長は、家電の販売は初めてではあったものの製品化することに決め、ひとまず最小単位で生産をしてみて、ショッピングモールにも加盟している自社のオンラインショップでお試しで販売を開始することにしました。
しばらくその加湿器は、他のアイテムに埋もれていて注目されませんでした。ところが3ヶ月ほどたったある日モールの特集で注目アイテムとして紹介されたことから、一瞬で在庫がなくなるほどのヒット商品になったのです。そのためデザインの権利化などを考える暇もなく、会社全体が生産体制などの見直しに追われることになりました。
ようやくその加湿器の増産体制に目途がついたある日、社長がたまたま別のショッピングモールで加湿器のランキングをみたところ、自社の加湿器と同じようなデザインの製品がいくつもランキングに並んでいました。その中でも、材質とカラーリングが少し異なる以外ほぼ自社製品とソックリな製品が上位にランキングされていて、口コミをみるとこの会社の製品がオリジナルであると勘違いされているようです。
ちなみにその企業は海外の安い人件費を活用し、人気が出そうなものをターゲットに低価格で生産販売する戦略を取っていたのです。このような確信犯的なヒット商品の低価格版類似商法の被害にあわないようにするためには、意匠権の取得をきちんとしてその権利保護をしておくことが重要なのです。今回の場合も意匠権の取得をしておけば、他社に真似されることもなく、売上の損失を防ぐだけでなく自社製品のデザインを守ることも可能だったかも知れないのです。