ライフサイクルの短い製品に有効な実用新案権
ところが、権利行使には重要なポイントが
アメリカの大学院で、最先端の機械工学を勉強したB社の鈴木社長。その技術を活用して、どのような強風でも折れない傘の開発に成功しました。
プロモーションもかけ、売上げも順調に上がっていた時、類似製品が販売されていることに気づきました。鈴木社長は類似製品を取り寄せ、この製品は自社の実用新案権に抵触すると考えたのです。
そこで顧問の弁理士さんに相談したところ、「実用新案権の行使をするためには、登録実用新案についての新規性、進歩性の評価を示す実用新案技術評価書を提示する必要があります」とのことでした。ところが、特許庁に実用新案技術評価書を請求したところ、評価結果は否定的であり、残念ながら警告を断念する結果になったのです。
このまま警告を行うと、逆に損害賠償の請求リスクがあることも判明しました。
そこでのアドバイスのポイントは、以下の通りです。
「実用新案登録出願は、方式要件と基礎的要件を満たしているか審査され、新規性、進歩性等の実体審査はされないので、短期間で登録されます。そのため、権利行使に際しては、事前に実用新案技術評価書を請求して、登録実用新案が新規性、進歩性を有しているかを確認して行うことになります。したがって、実用新案は、登録だけでは意味を持たず、肯定的な実用新案技術評価書を得られてこそ、使用できる権利になり得るということなのです。だからこそ、実用新案登録出願の際には、入念な先行技術調査と、実体審査を得てから登録される特許出願との得失を検討する必要があるのです」