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特許権を取得したので安心。
そう思って海外進出したところが大失敗!

長年の苦心の末、今までにない発明や工夫ができると誇らしいものです。
そして所定の手続きに沿って特許権を取得できた時の喜びも、また格別です。
しかし、その安心感には大きな落とし穴があるのもまた事実なのです。

今までにない斬新な腕時計が大ヒット!
特許権も取得し、安心して海外へ進出したが

日本の中堅時計メーカーのK社は、売上規模はそれほど大きくはありませんでしたが、独特のムーブメント(動力機構部分)の腕時計を作ることで一部に熱狂的なファンをもつことで知られていました。

上田社長は腕時計のムーブメントに関しては人一倍こだわりがあり、またそのこだわりが自社製品の強さにつながっていることに満足感もありました。そして10年来の友人の紹介で、アジアエリアで幅広くビジネスを手がけているBさんに出会いました。Bさんは、上田社長にこう提案しました。

「社長の会社の腕時計は、私がよく知っている中国やマレーシアでも大人気です。しかも中国は日本の人口の10倍ですから、市場規模も比較にならないぐらい巨大です。また、日本の時計メーカーの委託生産を請け負っている会社もよく知っていますから、そういった会社に任せて現地生産すれば煩わしい手続きも一切不要になります」

人口減による日本市場の縮小傾向に懸念を抱いていた上田社長は、「市場規模が巨大な中国は、売上を一気に拡大する大きなチャンスであることは確かだ。マレーシアは若者人口も多く、これも大きな魅力であることは間違いない」と考え、現地生産による海外進出を決断しました。しかも委託生産ですから、自社工場の建設も不要です。

現地での腕時計の生産が軌道に乗ると、日本と同様、若者を中心にどんどん売上が拡大していきました。そんなある日、海外旅行で香港に行った社員からとんでもない報告を受けたのです。それは香港の路上の雑貨店で、K社の腕時計にウリ二つの時計が売られていたのです。上田社長がその時計のムーブメントを調べたところ、自社の特許を侵害している可能性が高かったため、すぐになじみの特許事務所の弁理士に法手続きの相談をしました。すると、こんな答えが返ってきたのです。

「社長、日本で取得した特許権の効力は、残念ながら日本国内に限られるのです。日本国内で製造されたものには特許権の効力が及びますが、海外での製造・販売行為については及びばません。海外での製造・販売については、その国で特許出願し、特許権を取得する必要があるのです。」

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